解雇トラブル解決


従業員との関係が悪化したときには、ご注意ください。

安易に解雇をすると、さまざまな問題が生じる可能性があります。

現代では、インターネットで従業員の方も専門家の意見を見ることができ、納得できない解雇の場合には、損害賠償請求を受けることもあり得ます。

 

ここでは、経営陣の方に知っておいていただきたい最低限の知識を取りまとめました。

 

当グループでは、特に顧問先から多くの解雇したいとのご相談を受け、様々なアドバイスを提供させていただいております。

もちろん、顧問先が提訴されたときには、140万円までの金銭請求などであれば司法書士が即対応するほか、大きなトラブルの場合には、労務問題(企業側)対応に優れた弁護士さんをすぐにご紹介いたしますので、ご安心いただけます。

解雇するリスク・デメリット


解雇する側の主なデメリットは次のとおりです。

1.損害賠償請求されるリスク

解雇したい従業員がいたとしても、従業員にとって、雇用は生活の基礎ですから、法律によって手厚く保護されています。

不当な解雇だとして、「従業員である地位の確認」を請求され、裁判所がそれを認めると、「従業員である」と認定された期間、労務の提供を受けていなくとも、給与の支払いが生じることとなり、経済的な損失は大きなものとなってしまいます。

2.助成金支給資格や税金上のメリットの喪失

特に厚生労働省所管助成金や、税金上のメリットを喪失するリスクもあります。

助成金申請を担当された社労士や税理士にも問題がないか確認する必要があります。

3.即日解雇は、解雇予告手当金の支払い義務

「お前は首じゃ、今すぐ出ていけ」今時、こんな乱暴なことをする企業はないと思いますが、解雇予告手当金30日分の支払い義務が発生するほか、解雇された従業員の怒りも大きく、法的措置をとられるなどのリスクにもつながりかねません。

解雇の種類


普通解雇 整理解雇 懲戒解雇

整理解雇・懲戒解雇以外の解雇。

労働契約の継続が困難な事情があるとき限定

会社の経営悪化により、人員整理のための解雇。

 

極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに懲戒処分として行う解雇

 

⑴就業規則や労働協約に今回の解雇事由が記載されていること【1】

解雇又は解雇予告手当の支払(労基法20Ⅰ)

解雇制限に反しない

⑷解雇に正当な理由があって、解雇権濫用にあたらないこと

⑸就業規則や労働協約に記載された解雇手続の履行【2】

整理解雇4要件

⑴人員整理の必要性【3】

⑵解雇回避努力の履行【4】

⑶解雇者選定の合理性【5】

⑷手続の妥当性【6】

 

 

 

 

 

⑴罪刑法定主義【7】

⑵不遡及の原則【8】

⑶一事不再理の原則【9】

⑷平等取扱の原則【10】

⑸個人責任の原則【11】

⑹相当性の原則【12】

⑺適正手続【13】

 

 

 

【1】就業規則への記載(労働基準法89③)。就業規則の周知義務(労働基準法106Ⅰ)。

就業規則に解雇事由を列挙したときは、使用者は自ら解雇権の行使を就業規則所定の理由に限定したものである(東京高裁S53.6.20判決)。

労働契約書への記載(労働基準法15条、労働基準法施行規則5Ⅰ④)

【2】たとえば、次のような定めがあって履行していない場合、解雇は無効です。

解雇する場合には「労働者と事前協議する」

解雇する場合には「労働組合の合意を得なければならない」

解雇する場合には「労働組合と協議しなければならない」

【3】解雇後、新規採用していないなど

【4】経費削減、役員報酬減額、新規退職抑制、希望退職者募集、配置転換などの手続きを経た

【5】勤務成績(労働力評価)、勤続年数など(貢献度)、家計への打撃(生活配慮)など

【6】労働者に説明をしたことや、労働組合と協議を経たこと

【7】罪刑法定主義:就業規則や労働契約に懲戒解雇事由等を明確に定めており、労働者に周知されていること

【8】不遡及の原則:懲戒規定を設ける前の行為を処罰できない

【9】一事不再理(二重処罰禁止):同じ事由で二重に処分されない。

【10】平等取扱い原則:同じ懲戒事由のときに、同じ処分をしているか。一人だけ特別重い処分ではないか?すべての労働者を平等に扱っているか?

【11】個人責任の原則:連座制で、行為者以外の者を処分することは許されない。

【12】相当性の原則:懲戒解雇は、重すぎないか?

【13】適正手続:懲戒解雇は、労働者に対するペナルティであるため、弁明の機会を与える必要があります。

解雇予告又は解雇予告手当


原則

解雇を行うときには、従業員に対して、30日前まで【1】に解雇の予告をする必要があります。

予告を行わずに即日解雇するときには、最低30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。

30日に足りない場合は、30日に足りない日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。

 

これをまとめると、下表のとおりです。

解雇言い渡し日 解雇予告手当の支払額
解雇日当日 30日分
解雇日の1日~29日前 30日に足りなかった日数分

解雇日の30日以上前

支払い不要

【1】30日前の算定方法

Excelなどの表計算ソフトで、下表のようなものを再現すれば、計算間違いがなくて良いでしょう。

通知日 解雇日 必要な支払日数
2020/2/5 2/5 30日分(=通知日当日に解雇)
2020/2/5 2/6 29日分
2020/2/5 2/7 28日分
2020/2/5 2/8 27日分
2020/2/5 2/9 26日分
(中略) (中略) (中略)
2020/2/5 3/2 4日分
2020/2/5 3/3 3日分
2020/2/5 3/4 2日分
2020/2/5 3/5 1日分
2020/2/5 3/6 0日分(支払い不要)

例外1:契約期間などによる例外

試用期間中の者 解雇予告適用せず 14日を超えたとき☛解雇予告適用あり
4か月以内の季節労働者 解雇予告適用せず その契約期間を超えたとき☛解雇予告適用あり
契約期間2か月以内の者 解雇予告適用せず その契約期間を超えたとき☛解雇予告適用あり
日雇い労働者 解雇予告適用せず 1か月を超えたとき☛解雇予告適用あり

例外2:解雇予告除外認定を受けた場合の例外

従業員の責に帰すべき理由による解雇の場合+労基署署長の解雇予告除外認定 解雇予告適用せず
天災地変等により事業継続が不可能な場合+労基署署長の解雇予告除外認定 解雇予告適用せず

メールで通知したとき

解雇制限


次のような解雇は、法律上禁止され、解雇は無効です。

  1. 労災休業期間とその後30日間の解雇(労基法19)
  2. 産前産後休業期間とその後30日間(労基法19)
  3. 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法3)
  4. 性別を理由とする解雇(均等法6)
  5. 労働基準監督署へ申告したことを理由とする解雇(労基法104Ⅱ)
  6. 労働局へ紛争解決の援助を求めたことを理由とする解雇(均等法17Ⅱ)
  7. 女性の婚姻・妊娠・出産を理由とする解雇(均等法9)
  8. 労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことを理由とする解雇(労働組合法7)
  9. 育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由とする解雇(育児休業・介護休業法10)
  10. 介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由とする解雇(育児休業・介護休業法16)
  11. 派遣労働者が、違反事実を厚労大臣に申告をしたことを理由とする解雇(労働者派遣法49の3)
  12. 公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法3)

失業保険の受給


受給の要件(会社都合による退職の場合)

✔ 雇用保険加入期間が、退職前の1年間で6か月以上【1】【2】

✔ 働く意思や能力があるのに、就職できない【3】

受給の要件(自己都合による退職の場合)

✔ 雇用保険加入期間が、退職前の2年間で12か月以上【1】【2】

✔ 働く意思や能力があるのに、就職できない【3】

✔ 自己都合退職の場合には、3か月間は失業給付の基本手当を受給出来ない「給付制限期間」がもうけられています。

【1】1か月に11日以上働いていれば、1か月となります。

【2】今回退職した会社の在職期間だけでは要件を充たさなくても、その前の職が次の要件を充たす場合には、通算されます。

①前職の離職日から今回の就職までの空白期間が1年以内であること

②前職の離職の際、失業給付を受給していないこと

【3】病気・怪我・妊娠・出産・育児ですぐに就職できない場合などは受給出来ません。

有期雇用(期間の定めがある雇用契約)の場合


雇用契約期間中の解雇

雇用契約期間中の解雇は、期間の定めがない雇用契約の解雇よりも困難です。

あらかじめ使用者と労働者が合意して契約期間を定めたのですから仕方がありません(労働契約法17)。

契約期間満了による雇用契約の終了(雇止め)

一方、契約期間が満了した場合の雇用契約の取り扱いは次の通りです。

原則(「例外」のどれにも当てはまらないとき)

契約期間満了により自動的に雇用契約は終了する。
例外❶ 反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合で、雇止めに客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないとき 雇止めは認められず、従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されます(労働契約法第19条)。
例外❷ 反復更新の実態などから、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合で、雇止めに客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないとき
例外❸ 3回以上契約が更新されている場合 更新しない使用者は、30日前に労働者に対して予告が必要です(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準〔厚労省告示〕)。
例外❹ 1年を超えて継続勤務している場合

それでも解雇しなければならないとき


従業員を解雇するのがとても難しいことです。それでも、中小零細企業ではダメな従業員が一人でも居れば事業活動が困難になることもあり、解雇せざるを得ない場合も出てくるかもしれません。

その場合には、次のような措置をとるようにしてください。

あくまで解雇した後、解雇無効確認訴訟を提起されても勝つことができるように証拠を作りながら、シッカリと対応することが必要です。

就業規則を作成、届出、従業員への周知

就業規則がない会社の場合であっても、普通解雇は雇用契約書にあれば可能ですが・・・(民627)。 

CF懲戒解雇(懲戒処分は就業規則がないとできない。)

 

貴社の従業員数は何人でしょうか?!

10名を超えていれば就業規則を作成し労基署へ届出する義務があります。

また10名を超えていなくても、将来、懲戒処分(不良従業員の懲戒解雇、減俸処分など)を科すために就業規則を届出し、従業員へ周知しておく必要があります。 

次のような措置をとってください。

1.    従業員の成績不良や能力不足を記録

将来、解雇が必要となったときの証拠とするため、「いつ」「どこで」「どのような業務で」「どんな」「どの程度」のミスをし、「どの程度」会社に損害を与えたのか後日明確に分かるように細かく正確に記録することが大切です。 

 

2.    成績不良従業員に対する書面による注意勧告

書面によるのは、将来、解雇が必要となったときの証拠とするためです。

 

3.    教育指導・具体的な数値目標の設定

 

4.    改善のために会社から労働者に対する「体系的な教育や指導」の実施

 

5.    配置転換・減俸など解雇回避措置

減俸を行うためにも就業規則の制定、届出と従業員への周知が急務です。

ここまで会社がやっても、どうしても改善されないときには、次のような措置を講じていきます。

 

6.    退職勧告

 

7.    解雇

 

8.    パワハラ等の防止措置

また、解雇までの過程で、辞めて欲しいのに辞めてくれないとイライラしてパワハラに繋がらないように注意する必要があります。 

採用時における対策

1.  正社員ではない有期契約社員の採用を検討する。

 

2.  面接で見極める。

 

3.  試用期間で見極める。

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