販売提携契約:提携の中身は売買・仲介・代理・取次のどれでしょうか?また、販売店・特約店・代理店・取次店・協力店の違いは何でしょうか?


面白そうなビジネスのオーナーに「特約店になって提携してくれないか」と、声をかけられました。特約店とは何でしょうか?

よく似た名前に「販売店」「代理店」「取次店」「協力店」というのも聞いたことがあります。

これらの違いは何でしょうか?!

また、売買・仲介(仲立ち)・代理・取次(問屋)などの違いも教えてください。

契約類型を押さえる必要性


「特約店」「販売店」「代理店」「取次店」「協力店」実はその呼び名は、それほど重要ではありません。

実際に、販売提携・販売協力する場合に、どういった契約かが重要です。

なぜ重要かと言うと売買、仲介、代理、取次で両当事者の権利と義務が異なるからです。

 

これまで見てきた契約書の中には、これらの区別が出来ておらず混在して、契約内容が曖昧になっているものも散見されます。契約書はトラブルを予防するための大切なものです。

例えば、製造会社の希望が①代理店に販売価格を指示したい(代理の特徴)し、②クレームは代理店の責任としたい(売買の特徴)だったとしても希望を両立させることはできません。売買なのか代理なのか不明な契約になってしまうので、不可能です。

例えば、代理店の希望として①商品売却は売上にしたい(売買の特徴)が、②責任は製造会社に負わせる(代理の特徴)を両立させることはできません。

 

こんな筈じゃなかったを無くすために、契約はキッチリと理解してから締結しましょう。

売買・仲介・代理・取次とは?


販売提携契約を結ぶ場合、その契約類型は、売買・仲介・代理・取次のいずれかです。

まず、大きく分けて売買と委任(仲介・代理・取次)に分かれます。

売買と委任どちらが良いというのではなく、自社と相手方のニーズにあった契約類型を選択することが重要です。

 

ここでは、登場人物を下表のとおりのルールで呼ぶことにします。

A:製造会社

│ 【ここの契約は何契約かが、本記事のテーマ】

B:販売を担当する会社

│ 売買契約

C:エンドユーザー

 

売買

(買取再販)

民法上の委任
仲立ち 代理 取次
 

販売店

卸売

問屋とんや【1】

仲立人

代理商

代理人

取次店

問屋といや【1】

法律 商法524~ 商法543~

商法27~

商法551~
概要 買い取って売却する 不特定多数の他人のため商行為の媒介をする(⇔媒介代理商)

①締結代理商:特定の他人を代理する。直接本人名Aで取引する(⇔取次)

②媒介代理商:特定の他人のため商行為の媒介(⇔仲立)

③①②の両方

不特定多数の他人を代理する。

自己名Bをもって他人Aの計算において取引(⇔締結代理商)

 
  • 不動産仲介
  • 保険代理店
  • 証券市場で顧客依頼で株式売買する証券会社
  • コンビニの集荷取次
Aのメリット
  • Bに売り切ることで以降一切関与しないで済む
  • Bの販売チャンネル・人材を活用可能。
  • いくらで売却するかBに指示できる。
  • Bの販売チャンネル・人材を活用可能。
  • いくらで売却するかBに指示できる。
  • Bの信用知識経験を活用できる
  • 匿名で商機を利用できる
  • 問屋から金融を受ける便宜
Bのメリット
  • 販売価格を自社Bで決定できる。
  • Bに在庫リスクなし
  • CからのクレームはAの責任
  • Bに在庫リスクなし
  • CからのクレームはAの責任
  • Bに在庫リスクなし
Cのメリット      

(代理と異なり)

代理権の範囲を調査不要

本人の資力信用調査不要

権利義務 Bに帰属 Aに帰属 Aに帰属

問屋Bに一旦帰属する(商552Ⅰ)が、委託者Aに移転することを要する(商552Ⅱ、民646Ⅱ)

在庫リスク Bが負う Aが負う Aが負う

Aが負う

アフターフォロー Bが行なう

Aが行なう

Bが行うことも

Aが行う

Bが行うことも

 

AがBC価格を決定 不可∵再販価格維持行為として独禁法2Ⅸで禁止 可能 可能 BはAからの指値順守義務(さしねじゅんしゅぎむ)を負う(商554)【3】
Bの利益 売却価格-仕入価格

Aからの

手数料・コミッション

Aからの

手数料・コミッション

Aからの

手数料・コミッション

【1】問屋(とんや)と問屋(といや)の違い

問屋を「とんや」と読むと、卸売商の俗称になる。ちなみに「卸売商は自己物の売買だから、法律上の問屋(といや)とは異なる」という判例がある(大判M44.5.25、大判T8.11.20)

問屋を「といや」と読むと、法律用語となり、取次契約を指す。

【2】特約店とは

上表にはありませんが「特約店」というものもあります。特約店とはAと特約を結んだBという程度の意味で、法律用語ではありません。

特約店は、Aと特約を結ぶことにより、特定の商品を独占販売できる、一定地域での販売を独占できる(テリトリー制)などのメリットをAから享受しますが、A以外の競合商品の取り扱いを制限されたり、Aから売り上げノルマを課されることもあります。

【3】公取委H29.6.16流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針―第1再販売価格維持行為―2再販売価格の拘束

次のような場合であって,事業者の直接の取引先事業者が単なる取次ぎとして機能しており,実質的にみて当該事業者が販売していると認められる場合には,当該事業者が当該取引先事業者に対して価格を指示しても,通常,違法とはならない。

[1] 委託販売の場合であって,受託者は,受託商品の保管,代金回収等についての善良な管理者としての注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど,当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合

(具体例)

[1] インターネットを用いた音楽配信業務において,コンテンツプロバイダーA社が,ポータルサイトを運営するプラットフォーム事業者B社との間で,A社が指示する価格で音楽配信することを定めた委託販売契約を締結することは,A社がB社に対し,A社の提供する楽曲のB社のサーバーへのアップロード及び代金徴収業務のみを委託するものであり,実質的にはA社が自らの保有する楽曲を利用者に直接提供するものと認められ,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。(平成16年度相談事例集「3 音楽配信サービスにおけるコンテンツプロバイダーによる価格の指定」)

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