支店登記(支店設置・支店移転・支店廃止)


※ 令和4年9月1日会社法の改正に伴い、記事を更新しました。

 

支店とは、ある範囲において会社の営業活動の中心となり、本店から離れ独自に営業活動を決定し、対外的取引をなしえる人的物的組織のこと(大隅・商法総則新版176頁)をいいます。

 

ただし、会社法上、厳密に定義されておらず、担当者の詰所、営業所、出張所のような拠点は支店登記を要しません。

では、支店を設置した際、支店登記が必要でしょうか?

設けたのが「営業所」であれば登記は不要ですが、「支店」なら登記が必要です(会社法911Ⅲ)。

 

実際には「地域金融機関から融資を受けるため、その金融機関の営業地域内に当社支店登記があることが必要」などの理由で支店設置のご依頼をいただく機会が多いです。

もくじ
  1. 支店登記に関する会社法改正(令和4年9月1日施行)
  2. 支店設置のメリット・デメリット
  3. 司法書士の報酬・費用
  4. 人気の関連ページ

支店登記に関する会社法改正(令和4年9月1日施行)


インターネットの普及と進化により、どんどん簡略化が進みました。

 

最初期(旧商法時代)

支店を設けた会社は、本店所在地を管轄する法務局において「支店」を登記していました。

また、支店所在地を管轄する法務局にも、本店所在地と同じ登記事項を登記していました。

 

企業が「ある会社」と取引を開始するにあたり与信調査の一環として、「ある会社」の登記簿を取得することがあります。支店においても登記しておかないと、「ある会社」の登記簿を取得するために「ある会社」の本店所在地を管轄する法務局まで行く必要があったためです。

現在では、全国の全ての法務局で、全国の全ての会社の登記簿(登記事項証明書)を取得することが可能となっています。

令和4年9月1日まで

支店で登記されている事項は、法改正で少なくなりました。

支店登記は、本店登記簿を探すためのインデックス程度の意味しかありません。

本店所在地法務局での登記事項 支店所在地法務局での登記事項
商号 〇(会社法930Ⅱ)
本店 〇(会社法930Ⅱ)
目的 ×

会社成立の年月日

〇(商業登記法48Ⅱ)

支店(全ての支店)

の所在地

〇(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内の支店のみ。会社法930Ⅱ)

支店(全ての支店)

の設置年月日

〇(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内の支店のみ。商登法48Ⅱ)
本店支配人 ×
支店支配人 ×

令和4年9月1日以降(現在)

支店を設置・移転・廃止した場合・・・

  1. 本店所在地を管轄する法務局では、これまで通りの登記が必要です。
  2. 支店所在地を管轄する法務局では、一切登記をする必要はなくなりました。

支店設置のメリット・デメリット


支店設置(支店登記)のメリット・デメリットは、次の通りです。

  メリット デメリット
営業上
  • 支店近くでも貴社が認知されるようになる(貴社支店近くで同業者が類似商号で開店した場合、不正競争として商号差止を求めやすくなる。)。
  • 地元企業しか受注できない公共工事を受注できるようになる。
  • 支店近くの信用金庫・信用組合などの地域金融機関から融資を受けることができる。
法務上
  • 支店に支配人を置くことができる。支配人も実印登録できるので、契約などを支店でも処理できる。結果、対外取引が迅速化される。
  • 管理規定を設けることで、本支店間の権限関係などが明確化できる。
  • 定款・株主総会議事録・計算書類などを支店にも置く必要が生じる。
  • 支店設置・移転・廃止、商号・本店の変更の場合、登記費用がかかる。
  • 支店でも労働保険や雇用保険の手続きが必要となる。
税務上  ー
  • 市役所や都道府県への税務上の届出が必要になる。
  • 支店ごと均等割の納税義務が生じる。
  • 所得割は按分計算して納付する。

司法書士の報酬・費用


業務内容 司法書士の報酬 実費
支店設置 45,100円(税込) 75,000円ほど
支店移転 34,100円(税込) 45,000円ほど
支店廃止 34,100円(税込) 45,000円ほど

 

報酬には、基本的な議事録作成報酬が含まれています。

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