相続によって引き継ぐ財産・引き継がない財産


相続によって「引き継ぐ」財産と「引き継がない」財産を一般の方が区別することは意外と難しいものです。

基本的に全て相続されると考えていただいて結構ですが、例外もあります。

もくじ
  1. 引き継ぐ財産と、引き継がない財産
  2. よく迷う財産
  3. 当グループの相続財産一覧作成サービス
  4. 人気の関連ページ  

引き継ぐ財産と、引き継がない財産


下表をご参照くださり、具体的には司法書士にご相談ください。

 相続によって引き継ぐ財産・借金 引き継がない財産・借金
物権(所有権・占有権・抵当権など)  
債務(借金)  
債権(他人・他社へ請求できる権利)  
  生命侵害の場合の精神的損害に対する慰謝料請求権【1】  
  生命侵害の場合の財産的損害に対する慰謝料請求権  
  契約上の地位(取消権・解除権など)  
  賃借権【2】 ×公共住宅の使用権
  使用貸人の地位 ×使用借人の地位【9】
 

商行為の委任者の地位【3】

×委任者の地位(民653)

×受任者の地位(民653)

  寄託者・受寄者の地位(民665で民653を準用せず)
  本人が無権代理人を相続した場合の無権代理人としての債務(最高裁S48.7.3判決)

×代理権授与者の地位(民111)

×代理権を与えられた者の地位(民111)

   

×定期贈与の贈与者の地位(民552)

×定期贈与の受贈者の地位(民552)

   

×終身定期金の債権者の地位(民689~)

×終身定期金の債務者の地位(民689~)

 

信託の委託者の地位

信託の受益者の地位

×信託の受託者の地位
    ×雇用契約の被雇用者の地位
  組合解散後に組合員が死亡した場合の残余財産分配請求権(最高裁S33.2.13判決) ×組合の組合員の地位(民679①)
  株式会社の株主の地位(株式)

×合名・合資・合同会社の社員の地位(会607)

【4】

保証関係  
  保証契約で、保証責任の限度額・保証期間の定めがあるときの保証人の地位 ×根保証契約【5】の根保証人の地位(最高裁S37.11.9判決)
  身元保証契約に基づき既に発生した損害賠償債務 ×身元保証契約【6】の身元保証人の地位(大審院S2.7.4判決)
  賃貸借契約から発生する賃料債務を保証する保証人の地位(大審院S9.1.30判決)【7】  
     
親族・相続関係  
  被相続人が生存中請求した財産分与請求権  
  被相続人が生存中に請求していた扶養料

×扶養請求権

×扶養義務

  特別縁故者が生存中に請求していた財産分与請求権  
  遺留分減殺請求権【8】  
  相続を承認・放棄する権利【8】  
       

【1】生命侵害の場合の精神的損害に対する慰謝料請求権は、他人に対する請求権ですので債権の一種です。交通事故などで人が亡くなると加害者に対して損害の賠償を請求することができます。一口に損害賠償の請求と言っても色々な項目で請求することができます。死亡事故の場合には「葬儀費」「逸失利益」「死亡させられたことによる慰謝料」です(詳しくはこちら「交通事故解決」をご参照ください)

そこで問題が発生します。ご本人が請求の意思を表明できないままに死亡した場合に「死亡させられたことによる慰謝料」は発生し、相続人に承継されるのかという問題です。

最高裁昭和42.11.1判決は次のとおり判示しました。

不法行為による慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。

【2】内縁の妻と賃借権(最高裁S42.2.21判決)

家屋賃借人の内縁の妻は、賃借人が死亡した場合には、相続人の賃借権を援用して賃貸人に対し当該家屋に居住する権利を主張することができるが、相続人とともに共同賃借人となるものではない。

内縁の妻は、前記のとおり、家屋賃借人の死亡後本件家屋の賃借人となったのではないので、昭和〇年〇月〇日から本件賃貸借の終了した昭和〇年〇月〇日までの間の賃料の支払債務を負わない。

【3】「商行為の委任による代理権」は本人の死亡により消滅しない(商法506)

=商行為の委任者の地位は相続される

【4】持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる(会社法608)ので、実際に相続によって承継するのか否かを判断するためには、持分会社の定款を確認する必要があります。

【5】一定の継続的取引関係から将来発生する全ての債務を保証する契約

根保証契約の詳細については、こちらの記事「根保証(2020.3.31以前)」「根保証(2020.4.1以降)」をご参照ください。

【6】従業員が使用者に与えるかもしれない損害を保証する契約

【7】賃貸借契約の保証人が死亡した場合、保証人の相続人は、相続開始後発生した保証債務についても、当然に保証債務を負担する。

cf.賃貸借契約の賃借人が死亡した場合、保証人は賃借人の相続人が賃貸借関係を相続した後に生じた相続人の債務についても保証債務を負担する(大審院S12.6.15判決)

【8】身分権の一種だが、帰属上の一身専属権ではない。

【9】建物所有目的の土地使用借権については争いがあります。

よく迷う財産


被相続人が会社の株式を保有していた場合

財産の種類 相続財産に該当するか否か
会社の株式 相続財産です。
その会社が保有している不動産などの財産 相続財産ではありません。
その会社の取締役の地位【1】 相続財産ではありません。

【1】その会社が「株式会社」「有限会社」である場合には、取締役の地位は相続の対象ではありません。しかし、その会社が「合同会社」「合名会社」「合資会社」の場合には、社員の地位は相続の対象となります。

このあたりは、担当している司法書士にご確認ください。

生命保険金

このあたりも、大変ややこしいです。こちらの記事「生命保険の相続手続・税金・遺言執行」をご参照ください。

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