会社が書類の提出を求められたときの対応


会社が事業活動をしていると、関係各所たとえば

  • 銀行
  • 取引先
  • 株主
  • 親族

などから、種々の書類を見せるように言われることがありますが、安易に見せることは、やめるべきです。

一方で、法的に見る権利があるにも関わらず、閲覧やコピーの請求を拒否した場合は、過料の対象となる(会976④)ので、注意が必要です。

もくじ
  1. 対応の原則
  2. 広く一般に公開されている情報
  3. 公開されていない情報
  4. 人気の関連ページ

対応の原則


1.すぐには提出しない。

2.提出義務があるのか検討する(専門家に相談する)。

3.提出したときの影響を検討する(専門家に相談する)。

4.どの部分を提出するのか検討する(専門家に相談する)。

広く一般に公開されている情報


次の情報は、広く一般に公開されています。

情報の種類 備考
登記事項

誰でも法務局で登記事項証明書を取得できます。

利害関係も何も関係ありません。 

上場会社の上位株主

株式保有割合が5%を超える株式取得者は「大量保有報告書」の提出義務があり(金商法27の23Ⅰ、27の28Ⅰ)、誰でも提出された報告書を閲覧できる。

金融庁HP・EDINET→タブ「書類検索」をクリック→「大量保有報告書」で検索

計算書類の一部

大会社:貸借対照表及び損益計算書を公告している【1】ので、誰でも閲覧できる。

上記以外:貸借対照表を公告している【1】ので、誰でも閲覧できる。【2】

電子公告をする会社:定時株主総会終結後5年間

(会440)

有価証券報告書 上場企業(金融商品取引所に上場されている有価証券発行会社)など(金商法24)

【1】公告の方法は、定款で定めた「会社が公告をする方法」で行われており、登記されているので、誰でも会社の登記事項証明書を取得すれば、「会社が公告をする方法」を知ることができる。

【2】公告をしなかった場合には、代表取締役は100万円以下の過料に処せられる(会976②)可能性があるにも関わらず、実際には、行っていない会社も多く存在する。

公開されていない情報


次の情報は、公開されていませんので、閲覧・謄写させるべきか社内で検討する必要があります。

情報の種類 法律に定められた閲覧する権利のある者
定款

会社設立前:発起人(会31Ⅱ)

会社設立後:株主・債権者(会31Ⅱ)、裁判所の許可を得た親会社社員(会31Ⅲ)【1】

株主名簿全体

・株主・会社債権者(会125Ⅱ)

・請求の理由を明らかにして

詳しくは、「株主名簿の提出を求められたときの対応」を参照。

株主名簿記載事項証明書

株主が自分自身の株式についてのみ請求できる(会122)

詳しくは、「株主名簿の提出を求められたときの対応」を参照。

株主総会議事録

株主・債権者(会318Ⅳ)

裁判所の許可を得た親会社社員(会318Ⅴ)【1】 

取締役会議事録 ① 監査役設置会社の株主:裁判所の許可を得た株主(会371)

② 委員会設置会社の株主:裁判所の許可を得た株主(会371)

③ 上記①②以外の会社の株主:権利行使に必要なときは、いつでも会社に請求可能

計算書類 株主・会社債権者(会442Ⅲ)
会計帳簿等

★営業秘密が含まれていることが多いので、請求権者を限定している。

・総株主(全議案につき議決権を有しない株主を除く)の議決権の3/100以上を有する株主(定款で下回る割合を定めたときはその割合)

・自己株式を除く発行済株式の3/100以上の数の株式を有する株主(定款で下回る割合を定めたときはその割合)

・請求の理由を明らかにして(会433Ⅰ)

・債権者は閲覧を請求することができない。

・詳しくは、「会計帳簿の閲覧を求められたときの対応」を参照。

業務執行に関する検査役選任請求

・不正行為、法令・定款違反の重大事実があると疑われるとき

・総株主(全議案につき議決権を有しない株主を除く)の議決権の3/100以上を有する株主(定款で下回る割合を定めたときはその割合)

・自己株式を除く発行済株式の3/100以上の数の株式を有する株主(定款で下回る割合を定めたときはその割合)

・裁判所に対し、会社の業務及び財産状況を調査するための検査役の選任の申し立てをすることができる(会358)。

【1】「親会社社員」とは

親会社の株主その他の社員をいう(会31Ⅲ括弧書き)。

会社法では、「社員」とは持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の株主のことを意味します。

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