吸収分割における承継会社の資本金などの定め方


会社分割手続を実行するときに避けては通れない会社計算規則・・・

キーーッってなりますよね。

 

出来るだけ分かりやすく説明します。

分割対価の全部又は一部が承継会社株式であるときの【原則】


承継会社にとっては、現物出資による増資と同じ。

       

承継する財産が

プラスのとき

       

  • 承継会社の資本金・資本剰余金の増加額は、分割会社から承継した株主資本等変動額【1】の範囲内で吸収分割契約で決めた額。
  • 承継会社の利益剰余金は変動しない【2】。

(会社計算規則37Ⅱ本文)

承継する財産が

マイナスのとき

  • 対価自己株式の処分により生ずる差損の額を、まず「その他資本剰余金」を減少させ、次に「その他利益剰余金」を減少させる。
  • 資本金・資本準備金・利益準備金は変動しない。

(会社計算規則37Ⅱ但書)

【1】株主資本等変動額とは(会社計算規則37Ⅰ)

承継会社が増加可能な株主資本等の総額のことで、次のとおりとなる。

場合

株主資本等変動額

① 支配取得に該当する会社分割のとき 時価を基礎に算定
② 吸収型再編対象財産に時価を付すべきとき 時価 〃
③ 分割会社と承継会社が共通支配下関係にあるとき 帳簿価額 〃
④ ①~③以外のとき 帳簿価額 〃

【2】利益剰余金が変動しない理由

∵資本取引のときは、資本金・資本剰余金で処理すべきで、利益剰余金は営業活動によって生じた利益しか計上できないという会計処理をここでも確認したもの。

【例外その1】分割対価の全部が承継会社の株式であり、かつ、支配取得に該当しないとき


分割対価の全部を、承継会社の株式によるときには、あたかも分割会社の帳簿を二つに割って、一部を承継会社に承継させた形になる。

そこで

「分割会社の減少する資本金・資本剰余金・利益剰余金」をそのまま「承継会社の増加する資本金・資本剰余金・利益剰余金」とできる(会社計算規則38Ⅰ)。

 

※ 会社分割では利益剰余金を増やせないという原則(37Ⅱ本文)に関わらず、利益剰余金を増やせることを規定している。

 

但し、対価自己株式があるときにはその帳簿価格から減じて計算すべし(会社計算規則38Ⅰ但書)

【例外その2】分割対価がないとき


「分割会社の減少する『資本金・資本剰余金の合計』」をそのまま「承継会社の増加する『その他資本剰余金』」とできる(会社計算規則38Ⅱ)。

「分割会社の減少する『利益剰余金』」をそのまま「承継会社の増加する『その他利益剰余金』」とできる(会社計算規則38Ⅱ)。

【まとめ:吸収分割承継会社の資本金など】


目的に応じて、どの条文を使うか選択して使います。

目的 使う条文 分割対価 他の注意点
承継会社の資本金を増やしたくない 37ⅠⅡ 全部を承継会社株式 分割契約において、増加資本金をゼロと定める。
37ⅠⅡ 一部を承継会社株式 分割契約において、増加資本金をゼロと定める。 
38Ⅰ 全部を承継会社株式 分割会社の資本金を減額しなければならない。 
38Ⅱ なし 分割会社の資本金・資本剰余金を減らしても、承継会社の資本金は増えない。

承継会社の利益剰余金を増やしたい

38Ⅰ 全部を承継会社株式 分割会社の利益剰余金を減らした同額、承継会社の利益剰余金が増える。
× ×一部を承継会社株式 増えない。∵37Ⅱ本文により利益剰余金は変動しない。 
38Ⅱ なしとする。 分割会社の利益剰余金を減らした同額、承継会社の利益剰余金が増える。 

また

38Ⅲは、

吸収分割手続を行なっても、分割会社の資本金・資本準備金が減少しない原則を前提に、

38Ⅰ、38Ⅱの資本金を、承継会社に承継する場合には、分割会社において、会社分割手続の前提として、会社分割手続とは別途、資本金・資本剰余金・利益剰余金の減少手続を要するということを注意的に規定している。

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