家族が入院し緊急出金の必要があるが銀行が応じない場合の対応


家族が病気や交通事故で入院したので、緊急で出金する必要があるが銀行が応じてくれない。

そんなご相談がありました。

少なからず同様の事例でお困りの方が多いのではないかと思います。

次のような方法がありますので、ご参照ください。

もくじ
  1. このコラムの大前提
  2. ご本人から暗証番号を聞き出す。 
  3. 年金の振込先を変更する。
  4. 実印・印鑑証明書つきの委任状を用意する。
  5. 公正証書による財産管理契約
  6. (ご本人に判断能力がないときには)成年後見開始申立+審判前の保全処分
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このコラムの大前提


前提1■ ご本人に判断能力があること

入院の原因がコロナであっても、交通事故であっても、これから提案する方法をとるために必要なのは判断能力です。つまり、意識はハッキリとしているけれども、手足が不自由で銀行にまで行けないという場合です。 

判断能力がない場合に、銀行預金を出金しようとすれば、成年後見制度【1】を利用するしかありません。

 

【1】任意後見契約を締結している場合には、任意後見を発効させるために任意後見監督人の選任が必要になります。

任意後見契約を締結していない場合には、法定後見開始申立てをする必要があります。

前提2■ 家族に立替えて支払う能力がないこと

家族が立て替えて支払える状態で、ご本人にも十分に立替金を返す財産があるならば、家族が立て替えるのが簡単でしょう。ご本人のために立て替えた費用の明細と領収書を保管しておけば、問題にはなりにくいでしょう。

それでもご家庭によっては、立て替える余裕がないことや、余裕があっても家族が反対することも多いでしょう。そんなご家族のための記事です。

本人から暗証番号を聞き出す。


事故・大病・手術の直後では思い出せないこともあるでしょう。

また、いくら家族とはいえ、暗証番号を教えるのに抵抗を感じる人が多いのも確かです。

そんなときには、○○のために○○円だけ必要だから出金させて欲しいと、キッチリと伝えて暗証番号を聞きましょう。

出金したお金は必ず指定した(された)用途のみに使い、明細と領収書を保管しましょう。

年金の振込先を変更する。


公共料金の引落口座と、年金が入金される口座とが異なり、公共料金の口座残高が少なくなっている場合には、年金の振込先を変更するのも一つの方法です。

本人の実印・印鑑証明書つきの委任状でもダメか銀行に確認する。


次のような形式の委任状を作成し、ご本人の実印を押印し、ご本人の印鑑証明書とともに銀行に提出します。

この時点で、銀行側の不正出金のリスクはかなり低減されるので、応じると思いますが、銀行次第です。窓口で断られても窮状を説明し、上席に確認してもらうようにしましょう。

令和○年○月○日
委任状
  (ご本人の住所)【1】
  (ご本人の氏名)                    (ご本人の実印)
私は、下記の者を代理人と定め、下記の権限を委任する。
第1.代理人の表示
住所:
氏名:依頼されたご家族の氏名
続柄:ご本人から見た代理人の続柄
第2.委任する権限
  1. ○○○○銀行・○○支店・口座番号○○の私名義の口座から金○○円を出金し受領する権限。
  2. ○○への支払を行う権限。
  3. その他、必要に応じて銀行に届出ている私の住所を現住所に変更届出する権限。【2】
  4. 前記各号に関連する一切の権限。

【1】印鑑証明書どおりに省略せず記入する。

【2】銀行は印鑑証明書上の住所と、銀行が管理している住所が異なる場合には、住所変更届出をしてからでないと出金には応じないと考えられます。住所変更届出には、住民票が必要です。

ご本人と財産管理契約を締結する。


公証人に公正証書で財産管理契約を締結してもらいます。

 

公証人費用は、契約書中に記載された財産管理報酬額によって次のとおり計算しますが、ご家族なので無報酬にすれば最低価格で作成してもらうことが可能です。

月額報酬×12か月×10年(期間は10年を限度として計算)×2(契約期間の報酬総額の2倍)

で目的価格を算出し、目的価格に対応する公証人報酬が決定されます。

(ご本人に判断能力がないときには)成年後見開始申立+審判前の保全処分


ここまでのコラムと異なり、ご本人に判断能力がないときには、成年後見開始申立をする以外方法はありません。

ご本人がご家族に色々なことを任せる(委任契約といいます。)には、ご本人に判断能力があることが必要ですが、判断能力がないとこの「委任契約」を結ぶことができないからです。

 

また、緊急性がある場合には、成年後見開始申立と同時に「審判前の保全処分」を申し立てることにより、一時的な「財産管理者」が選任されます(家事事件手続法126Ⅰ)。

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