退職金・退職慰労金・弔慰金


退職金と役員退職慰労金については、インターネット上の情報に混乱が見られます。

正しくは、次のとおりです。

もくじ
  1. 退職金・役員退職慰労金・弔慰金の違い
  2. 従業員兼務役員の場合の注意点

退職金・役員退職慰労金・弔慰金の違い


従業員にのみ支払われる金員を「退職金」といいます。

役員にのみ支払われる金員を「役員退職慰労金」といいます。

 

役員に対して支払われるもの 

従業員・社員に対して支払われるもの

退職金  

●就業規則や退職金規程に退職金の規定があれば、それに従って従業員の退職に際して、支給されるもの。

●消滅時効は、規定に定められた支給日から5年(労基115)

●受け取った側の税金

├生前退職の退職金:所得税の対象

└死亡による退職金:相続税の対象

役員退職慰労金

●役員の退任に際して、会社への貢献や功労について、会社が役員に支払うもの【1】

●役員が退職した際に受け取る金員を、「退職慰労金」「功労金」「特別功労金」と項目を分けたとしても、税法上は「退職慰労金」。合計額が過大であれば退職「役員報酬」として扱われる。

●役員退職慰労金規程の必要性【3】

●役員退職慰労金規程があっても、それだけでは確定せず、株主総会の承認が必要(会361)。

●議事録は税務調査の際、重要な証拠になる。

●消滅時効は、5年説(商事)・10年説(民167Ⅰ)がある。

●受け取った側の税金

├生前退職の退職慰労金:所得税の対象

└死亡による退職慰労金:相続税の対象

 
弔慰金

●死亡により退職した場合は、死亡退職慰労金の他に「弔慰金」を支給することができる。

●株主総会の承認が必要(会361)。

 

●受け取った側の税金:原則非課税。以下の額【4】を超えると退職金とみなされ相続税対象。

●会社側の税金:以下の額【4】の範囲内なら損金算入可能

●死亡により退職した場合は、死亡退職金の他に「弔慰金」を支給することができる。

 

●受け取った側の税金:原則非課税。以下の額【4】を超えると退職金とみなされ相続税対象。

●会社側の税金:以下の額【4】の範囲内なら損金算入可能

【1】適正な金額

前提として、退職慰労金には金額の制限がありませんが、損金算入できる金額が限られています。

一般的な退職慰労金の適正額(不相当でないとされる金額)の計算方法は、次のとおりです。

退職慰労金の適正額 = 最終月額給料 × 勤続年数 × 功績倍率【2】

【2】功績倍率の例

功績倍率は、自由に設定することができますが、損金算入できる金額を算出する場合、他の同業種・同レベルの規模の会社に合わせる必要があります。

代表取締役社長2~3.0

専務2.5

常務2.0

取締役1.5

【3】役員退職金規程の必要性

・税務上のリスクを回避できる。

・退職役員(死亡による退職のときは、その遺族)との支給額に関するトラブルを回避できる。

【4】弔慰金の適正額(相続税法基本通達3-20)

遺族からすると、下記金額の範囲内であれば弔慰金を死亡退職金とわけて受け取った方が節税につながります。

業務上の死亡だった場合 死亡した従業員の死亡当時の普通給与(賞与以外の給与)36か月分以内
業務外の死亡だった場合 死亡した従業員の普通給与6か月分以内

従業員兼務役員の場合の注意点


退職に際して受領した金員が

  1. 役員退職慰労金として会社法の適用を受けるか?
  2. 従業員退職金として労働基準法上の賃金とみなされるのか?

職務の実態に基づき考えて、役員報酬部分については、必要な株主総会承認決議を行ないます。

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