相続登記や遺言の際に欠かせない不動産の近隣地調査(名寄せ)


相続登記や遺言書作成のご依頼をいただいた場合には、近隣地の調査(名寄せ。「なよせ」と読みます。)を行ないます。

「近隣地調査(名寄せ)」を行なわずに実行すると、次のような不具合が発生したり、不具合是正のタイミングを逃すことがあります。

  1. 土地建物本体の登記はしたけれど、私道(複数人で共有する道路)の登記などが漏れていてすぐに売却できない。
  2. 大昔の登記ミスなどで、我が家の土地と、お隣の土地が入れ替わっていた
  3. すでに大きい道路の一部になっている土地の固定資産税・都市計画税を払い続けていた
  4. 相続土地上に他人名義の建物が残っている
  5. 漏れていた不動産について遺産分割協議を再度行なう必要が生じる

「近隣地調査(名寄せ)」はどうやって行なうのか、具体的に説明します。

もくじ
  1. 調査不足で「どんな不都合」が起こるのか?!
  2. 具体的な調査方法
  3. 人気の関連ページ

調査不足で「どんな不都合」が起こるのか?!


土地建物本体の登記は終わらせたが、私道・集会所・ごみステーションの登記を失念した

【ポイント】

  • 私道など固定資産税非課税の物件の場合には、固定資産税納税通知書や評価証明書に記載されないことがある。
  • 私道は無価値で相続税申告の対象でないため、税理士は調査しないのが通常。
  • 宅地であれば接道している筈なので、公道までの細い土地は持分道路である可能性がある。
  • 全体的に綺麗な分譲地の一部が小さく切られている場合、ごみステーション(共有名義)の可能性がある。

【見つけるためには】

  • 市役所に固定資産税評価証明書ではなく「名寄せ帳」を請求する。
  • 公図を確認し、相続物件の周囲の細い土地の登記情報を取得する。
  • 権利証に相続人が申告しなかった物件がないか確認する。
  • 登記情報は、共同担保目録付(抹消済みのものも必要)のものを請求し、目録に入っている不動産の登記情報を取得する。
  • 農家の場合には、農業委員会の農家台帳(農地基本台帳、農家基本台帳)を閲覧する。

大昔の登記ミスなどで、我が家の土地と、お隣の土地が入れ替わっていた

【ポイント】

  • 同時に分譲された土地の場合に、極まれに発生しているようです。
  • 不一致を是正しない場合のデメリット・リスクは次のとおりです。
    1. 不動産を売却、処分できません。
    2. 不動産を担保にお金を借りられません。
    3. 他人の負債のために差押えを受ける可能性があります。

【見つけるためには】

  • 必ず住宅地図を取得し、公図と見比べます。
  • 相続人に住宅地図を見てもらい、実際に所有している土地と住宅地図が一致しているか確認します。

【見つけた場合には】

入れ替わっている土地の名義人に協力を得る必要があります。

  1. 入れ替わっている土地同士の面積や形状(価値)が同じで、担保の状況も同じであれば、「真正な登記名義の回復登記」を行なえば足ります。
  2. 入れ替わっている土地同士の面積や形状(価値)が違ったり、一方の土地だけが担保(抵当)に入っている場合には、精算金の支払いや担保権者の協力も必要になります。

すでに大きい道路の一部になっている土地の固定資産税・都市計画税を払い続けていた

【ポイント】

支払う必要のなかった固定資産税・都市計画税を支払っている可能性があります。

【見つけるためには】

公図と住宅地図をジックリと見比べます。

【見つけた場合には】

市役所の固定資産税課にその旨を伝えて、過去の固定資産税・都市計画税の還付を請求します。

相続土地上に他人名義の建物が残っている

【ポイント】

  • 建物が建っていない筈なのに、登記簿上のみ残っている。
  • 他人名義の建物が残っていると、売却することができません。

【見つけるためには】

  • 相続人から申告された土地について、インターネット登記情報で「土地からの建物」検索を行ないます。
  • 土地上に建物があった場合には、「建物図面」を取得し、相続土地の上にあるものか否か確認します【1】。
  • 建物図面がない場合【1】や、建物図面でも分からない場合には、土地家屋調査士に確認するなどします。

【見つけた場合には】

建物名義人に連絡をとって、建物滅失登記を申請してもらいます。

土地家屋調査士に依頼すると全てやってくれます。


【1】全ての建物に建物図面がある訳ではありません。「建物図面」は、昭和35年4月1日施行の不動産登記法改正(現行不動産登記法14Ⅲ)により、同日以降に申請する建物表題に関する登記では添付が義務づけられました。実際には、経過措置の関係で概ね昭和40年以降の建物の場合には、建物図面があるようです。

具体的な調査方法


名寄せ帳

  • 不動産所在地の市役所や区役所の固定資産税課に「名寄帳」を請求する。
  • 私道など固定資産税「非課税」の物件の場合には、固定資産税納税通知書や評価証明書に記載されないことがある。
  • 「共有も含めた」名寄帳を取得すること。
  • 「名寄帳」に記載された全ての物件の登記情報を請求する。今回の被相続人名義ではなく、被相続人のご先祖名義になっていること(前回相続登記漏れ)もある。
  • 「旧姓」でも取得する。
  • 市役所窓口を急がせると漏れやすいので、あえて郵送で請求する。
  • 下記市町村では「名寄せしても、非課税の固定資産については、記載されない」との情報がございますのでご注意ください。

公図

  • 公図を確認し、相続物件周囲の細い土地の登記情報を取得する。持分道路である可能性がある。
  • 公図を確認し、相続物件周囲に不可解な切り方をした小さな土地がないか確認し、あれば登記情報を取得する。ごみステーションである可能性がある。

土地から建物検索

  • インターネット登記情報で「土地からの建物検索」を行なって、相続人が知らない建物が存在していないか確認する。

共同担保目録付の登記情報で確認する。

  • 登記情報は、共同担保目録付(抹消済みのものも必要)のものを請求し、目録に入っている不動産の登記情報を取得する。

権利証

  • 権利証の現物を確認し、相続人が申告しなかった物件がないか確認する。

住宅地図

  • 公図とよく見比べて、相続人が申告したとおりの場所に相続不動産があるか確認する。隣の方の土地と入れ替わっている可能性がある。

電力会社からの「通帳入金」や「電柱等の土地使用料お支払いのお知らせ」から

次のような書類が出てきたら、道路部分にも持分がある可能性を疑いましょう。

上は、関西電力から受け取った通知ですが、「電柱等所在地」には地番まで記載されている訳ではありませんので、更に調査する必要があります。

農家の場合には、農家台帳を確認する。

農業委員会が管理している農家台帳(農地基本台帳・農家基本台帳)には、農地に関する様々な権利関係が世帯ごとに登録されています。

閲覧申請をして確認することができます。

山林の場合には、林地台帳を確認する。

森林法第5条の規定による民有林の場合には、林地台帳があることもあります。

こちらにも森林の土地所有者の情報が登録されています。

市町村の農林水産関係の窓口により閲覧することができます。

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