役員が変節し、社長の方針にことごとく反対するようになった場合、社長としては、他の役員の意向も聴取しながら、「彼を役員に置いておくことに害」があるならば、解任することをも検討せざるを得ません。
しかし、役員を解任することにはリスクを伴います。本当に解任すべきか否か迷ったときに、ご参照ください。
もくじ | |
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役員を解任した場合、貴社が負うリスクとしては、次のようなものがあります。
本記事で詳しく解説します。
競業事業の禁止や秘密保持義務の遵守をうたった「合意書」を作成し署名押印させるべきですが、解任のドタドタの中で取得するのは困難です。
役員として採用した時点で「役員委任契約書」を作成しておくべきですが、これもない場合には、不正競争防止法などで対抗する必要があります。
役員を「解任」した場合、「解任」と登記されます。正当事由のある解任であれば、取引先や銀行も納得してくれるでしょう。
会社は「正当な理由なく」役員を解雇した場合、解雇した役員に対して損害賠償の義務を負います。
会社法339条(解任) | |
2.前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。 |
民法651条(委任の解除) | |
1.委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。 2.前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
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大阪高裁昭和56.1.30判決 | |
商法257条1項ただし書(本記事執筆者注。商法257条1項但書は、現行・会社法339条)にいう損害賠償責任は、取締役を正当な理由なく解任したことについて故意、過失を必要としない法定責任であり、その損害の範囲は、取締役を解任されなければ残存任期期間中と任期満了時に得べかりし利益(所得)の喪失による損害を指す(要約はWestlawJAPAN) |
これを表であらわすと、下表のようになります。
残存任期の役員報酬 | ○含まれる | |
役員退職慰労金 | 原則 | ×含まれない |
例外 |
①株主総会で役員退職慰労金支給決議がなされたとき→○ ②過去に支給実績があるとき→△ ③解任役員との契約があるとき→△ |
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慰謝料など | 原則 | ×含まれない |
例外 | 解任やその過程が不法行為になるとき→○ |
任期の定めを設けていない合同会社・有限会社の場合には、気にしなくても良い論点です。
任期満了を待つことができれば、
などのメリットがあります。
当該役員に解任をちらつかせる前に、集められる証拠は全て集めてしまいましょう。
警戒して証拠を隠してしまうこともあり得るからです。
使用人兼務役員であっても、「使用人(従業員)」の地位と「役員」の地位は別々のものです。
役員としての「解任」に正当事由があったとしても、従業員としての「解雇」の正当事由に当てはまるとは限らないからです。就業規則などを確認して従業員としても解雇できるものか検討します。
最悪、役員としては解任、従業員としては継続雇用ということもあり得ます。
解任じゃなく役員から自発的に辞任してもらえないか、当該役員に対して打診する。
収集した証拠の一部を見せることも効果的かもしれません。
事前に、辞任届を作成しておくことをオススメします。
また、後日言った言わないの水掛け論にならないよう会話の録音も必須です。
業務内容 | 司法書士の報酬 | 費用 |
解任に至るまでの手続などのご相談 | 22,000円/時間 | |
株主総会の手続など | こちらをご参照 | |
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