始期付負担付死因贈与契約


「始期付負担付死因贈与契約」は、実務家の間でも、あまり知られていない方法ですが、遺言などのデメリットを排除し、確実に遺産を後継者につなぐことが可能です。

もくじ
  1. 遺言などのデメリット
  2. 始期付負担付死因贈与契約とは
  3. 始期付負担付死因贈与契約のメリット
  4. 始期付負担付死因贈与契約のデメリット
  5. 始期付負担付死因贈与契約の流れ
  6. 標準的な所要時間
  7. 司法書士の報酬・費用
  8. 人気の関連ページ

遺言などの致命的なデメリット


遺言などには、遺言者側・もらう側の両方に様々なデメリットがございます。

  • 遺言は、遺言者が自由に撤回できます(もらう側のデメリット)
  • 死因贈与契約も、贈与者が撤回できます(もらう側のデメリット)
  • 遺言を受けることになっていても、処分されるかもしれません(もらう側のデメリット)
  • 死因贈与を受けることになっていても、処分されるかもしれません(もらう側のデメリット)
  • 生前贈与は、その財産が確定的にもらった方の物になってしまいます(遺言者側のデメリット)

    →老後の世話をしてくれると言うから、贈与したのに世話してくれない。

負担付死因贈与契約は、これらのデメリットを全て排除することができます。

始期付負担付死因贈与契約とは何か?


贈与契約に色々くっついていますので、バラして考えると理解しやすいです。

次のようにバラバラにすることができます。

「始期付」「負担付」「死因」「贈与契約」

贈与契約とは何か?

遺言も贈与も財産を人にあげることになりますが、二つの違いは次の通りです。

遺言(遺贈)は、遺言者のみで行なうことができる「単独行為」です。

「贈与契約」は、遺言者と受け取る方の2人で行なう「契約」ですので、受け取る方の「もらいます」という同意が必要です。

死因贈与契約とは何か?

贈与契約の一種類で、死亡を原因にして所有権が移る契約を言います。

始期付の「始期」とは何か?

始期は「死亡」を意味します。

死因贈与契約は、仮登記をすることができますが登記の際には「年月日贈与(始期○○の死亡)」と登記することになります。

負担付の「負担」とは何か?

財産を受け取る側に、財産を受け取るためには、負担を履行しなければなりません。

なぜ「負担」をつける必要があるのか?

遺言は撤回することができます。

死因贈与契約にも遺贈に関する規定が準用される(民法554)結果、撤回することができます(最高裁昭和47.5.25判決)。

民法第554条(死因贈与)
  贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

ところが貰う方に「負担」を求めていた場合には、貰う方の「負担」の履行が進んでいくことによって、渡す方は撤回できなくなります(民法553)。

従って、死因贈与契約を撤回することができなくなるよう「負担」をつける必要があるのです。

もっとも「負担付贈与において、受贈者が、その負担である義務の履行を怠るときは、民法541条、542条の規定を準用し、贈与者は贈与契約の解除をなしうるものと解すべき」とされていますので貰う方は解除されないように、キッチリと負担を履行すべきです(最高裁第二小法廷昭和53年 2月17日判決〔事件番号:昭52(オ)1126号、事件名:土地所有権持分移転登記等請求事件〕)。

始期付負担付死因贈与契約のメリット


約束の履行が確保できる(遺す方のメリット)

「老後の世話をするかわりに、自宅をあげるね」の履行を条件にするため、単なる贈与+口約束よりも、履行が確保されます。また、生前はご自身の財産のままです。


負担を履行している限り、撤回されない(もらう方のメリット)

財産を貰われる方が、負担の全部又は同程度の負担を行った場合、贈与の撤回は認められません。負担付贈与契約の法的性質から当然、撤回されることはありません【1】。


贈与する物を第三者に処分されることがない(もらう方のメリット)

負担付死因贈与契約締結によって、直ちに仮登記をすることが可能ですので、仮登記をしておけば、第三者に売却などされる可能性はございません。


死因贈与した方が、亡くなられた場合、貰う方が単独で手続できる(もらう方のメリット)

公正証書で死因贈与契約執行者を選任しておくことで、可能となります。


死後の相続紛争を予防する一定の効果がある。

負担付死因贈与の対象となった財産は、確定的に受贈者のものになります。そのため、事業用の重要不動産については、負担付死因贈与が最適です!



【1】最高裁昭和57年4月30日判決・遺言無効確認訴訟

負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、

・右契約締結の動機、

・負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、

・契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等

に照らし右契約の全部又は一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、民法1022条(遺言の撤回)、1023条(前の遺言と後の遺言などとの抵触した場合、前の遺言は撤回したとみなす)の各規定は準用されない。

始期付負担付死因贈与契約のデメリット


  • 総費用は高額になりがちです。死因贈与を原因とする所有権移転の登録免許税率(20/1000)が、相続(4/1000)よりも高率であるためです。
  • 負担付死因贈与する財産と、遺産の割合によっては、死後、遺留分減殺請求を受けることがあります(負担付死因贈与の設計段階で解消できるデメリットです)。
  • 預貯金を死因贈与契約の対象とすることは慎重に検討ください。預貯金については譲渡禁止特約があるため、死因贈与契約執行者からの解約が認められない可能性があるためです(東京地裁令和3年8月17日判決(令2年(ワ)7657号)など)。

負担付死因贈与には、以上のようなデメリットがございます。

しかし、それをはね除けるだけの、大きなメリットもございますので、是非検討対象としていただければと思います。

始期付負担付死因贈与契約の流れ


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原則としてお越しいただき、財産と、将来の相続人について、お話をうかがいます。

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財産の規模によりますが、概ね1週間から1か月でプランとお見積を提出します。

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どのプランを採用されるか、贈与される方と貰われる方の間でお話し合いをお願いします。

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標準的な所要時間


概ね2か月ほど

司法書士の報酬・費用


  当事務所の手数料 実費
負担付死因贈与契約公正証書作成・契約立会 110,000円(税込) 公証人費用(贈与される財産の額による)
仮登記申請(登記原因証明情報作成含む) 110,000円(税込) 登録免許税など(贈与される不動産評価額の10/1000)

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