会社の合併(手続の流れを中心に)


主に兄弟会社間・親子会社間で行われる合併手続き。

このコラムでは、主に、合併手続きの流れについて司法書士ほか実務家の利用にも耐えられる内容で執筆しました。

もくじ
  1. M&Aにおける合併の位置づけ
  2. 吸収合併の流れ
  3. 標準的な所要時間
  4. 司法書士の報酬・費用
  5. 人気の関連ページ

M&Aにおける合併の位置づけ


合併は、主に兄弟会社間・親子会社間で行われます。

 

全く関係のない会社がいきなり合併することは、なかなかありません。合併は、人間の相続と同様に、権利も義務もすべてを引き継ぐという会社法手続きだからです。

全く関係のない会社同士がM&Aする場合には、ほとんどが株式譲渡によって行います。

 

M&Aスキームの比較などについては、次のコラムをご参照ください。

吸収合併の流れ


合併内容の協議

この段階から司法書士に関与を求めるのがベストです。

当グループにご依頼いただいた場合には「ご要望のお問合せ」を使用することで漏れなく協議を進めることが可能です。

スケジュール作成

合併の内容が概ね決まった場合には、スケジュールを作成して、共有します。

合併は、スケジュールの管理が最も大切な事項の一つです。

<<存続会社>>

取締役会の招集・開催

合併契約を締結することの承認を得ます。

株主総会の招集を決定します。

<<消滅会社>>

取締役会の招集・開催

合併契約を締結することの承認を得ます。

株主総会の招集を決定します。


合併契約の締結

合併するためには、合併契約を締結しなければならない(会748)。

株式会社を存続会社とする合併契約書の記載事項は次のとおり(会749ⅠⅡ)。

  1. 吸収合併存続会社・消滅会社の商号及び住所
  2. 消滅会社の株主に対して消滅会社株式の代わりに・・・
    1. 存続会社株式を交付するとき:株式数(又は算定方法)、存続会社の資本金・準備金の額に関する事項(なお、資本金・準備金の額として計上すべき額については会445Ⅴ→会社法施行規則116⑨→会社計算規則35.36)コラム「吸収合併における存続会社の資本金などの定め方」もご参照。
    2. 存続会社社債(新株予約権付社債を除く。)を交付するとき:社債の種類、種類ごとの各社債の合計金額(又は算定方法)
    3. 存続会社新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するとき:新株予約権の内容・数(又は算定方法)
    4. 存続会社の株式・社債・新株予約権以外を交付するとき:当該財産の内容・数(若しくは額又はこれらの計算方法)
  3. 前号1~4に該当するときには、割当に関する事項
  4. 消滅会社が新株予約権を発行しているときに、消滅会社の新株予約権者に対して交付する存続会社の新株予約権又は金銭に関する事項
  5. 前号に該当するときには、新株予約権又は金銭の割当に関する事項
  6. 吸収合併の効力発生日
  7. 吸収合併消滅会社が種類株式発行会社であるときに・・・
    1. ある種類株式の株主に対して金銭等の割当をしないこととするときは、その旨と理由
    2. 株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨と異なる取扱い理由

株主平等原則があるので「金銭等の割当に関して定めるときは、消滅会社の株主の有する株式数に応じて金銭等を交付することを内容にしなければならない(会749Ⅲ)」。

ただし①消滅会社が有する自己株式、②存続会社が有する消滅会社株式、③消滅会社が種類株式発行会社である場合に種類ごとに異なる取扱いをするときの当該種類株式については例外的な扱いが可能(会749Ⅲ括弧書き)。

官報公告申込

官報の申込から掲載までには、意外と時間が掛かります。

異議申述期間が確保できず、合併の効力発生日を延期することの無いよう早めに申し込みましょう。

官報公告内容について【1】

株主通知併用型公告を採用すべき場合については【2】

<<存続会社>>

事前開示書類の備置開始

存続会社は・・・

  1. 【いつから】次のいずれか早い日から
    1. 合併承認総会の2週間前の日
    2. 株主に対する通知の日
    3. 債権者保護手続による公告の日
    4. 債権者保護手続による通知の日
  2. 【いつまで】合併の効力発生から6か月後まで
  3. 【何を】
    1. 吸収合併契約書
    2. 合併対価を交付するとき会749Ⅰ②③の事項について、その相当性
    3. 合併対価を交付しないとき、その相当性
    4. 消滅会社が新株予約権を発行しているときは会749Ⅰ④⑤の事項の相当性
    5. 存続会社・消滅会社の計算書類
    6. 吸収合併が効力を生じる日以降における存続会社の債務履行の見込に関する事項
    7. 備置開始後から合併効力発生日までの間に上記に変更が生じたときは、変更後の当該事項
  4. 【どこに】会社の本店に

備え置いて、株主・債権者に閲覧などさせる必要があります(会社法794、会社法施行規則191)。

 

株主に対する通知/総会招集通知

効力発生日の20日前までに(会787ⅢⅣ)

合併に関する株主総会承認決議

効力発生日の前日までに吸収合併契約などの承認を受ける必要があります(会795)。

株主総会特別決議による承認(会309Ⅱ⑫)

承認を要しない場合(会796)。

反対株主の株式買取請求

会797、798

×新株予約権の買取請求

存続会社の新株予約権者には新株予約権買取請求権は発生しません。

債権者の異議(保護)手続

官報掲載日には、債権者への個別催告書も送付するよう準備しておきます(会799)

<<消滅会社>>

事前開示書類の備置開始

消滅会社は・・・

  1. 【いつから】次のいずれか早い日から
    1. 合併承認総会の2週間前の日
    2. 株主に対する通知の日
    3. 新株予約権者に対する通知の日
    4. 債権者保護手続による公告の日
    5. 債権者保護手続による通知の日
  2. 【いつまで】合併の効力発生から6か月後まで
  3. 【何を】
    1. 吸収合併契約書
    2. 合併対価の相当性
    3. 合併対価について参考となる事項
    4. 存続会社・消滅会社の計算書類
    5. 吸収合併が効力を生じる日以降における存続会社の債務履行の見込に関する事項
    6. 備置開始後から合併効力発生日までの間に上記に変更が生じたときは、変更後の当該事項
  4. 【どこに】会社の本店に

備え置いて、株主・債権者に閲覧などさせる必要があります(会社法782、会社法施行規則182)。 

合併効力発生後「消滅会社の事前開示書面」は、存続会社が承継して開示を継続します(会社法施行規則200⑤)。 

株主に対する通知/総会招集通知

効力発生日の20日前までに(会785ⅢⅣ)

合併に関する株主総会承認決議

効力発生日の前日までに吸収合併契約などの承認を受ける必要があります(会783)。

株主総会特別決議による承認(会309Ⅱ⑫)

承認を要しない場合(会784)。

反対株主の株式買取請求

会785、786

新株予約権の買取請求

会787、788

 

債権者の異議(保護)手続

官報掲載日には、債権者への個別催告書も送付するよう準備しておきます(会789)


合併の効力発生日

合併の効力発生日は1日付にするのが通常です。∵法人が事業年度の中途において合併により解散した場合には「その事業年度の開始の日から合併の日の前日までの期間」を一の事業年度とみなすこととされています(法人税法14条2項)ので、消滅会社を月末付で締めたい場合には、合併期日は1日付にする必要があります。

合併期日は、合併の効力発生日のことで、登記申請日とは異なります。もっとも出来るだけ合併期日に登記申請できるよう、土日祝日はお避けください。

事後開示書類の備置開始

存続会社は・・・

  1. 【いつから】合併の効力発生日後遅滞なく
  2. 【いつまで】合併の効力発生から6か月後まで
  3. 【何を】次の事項を記載した書面を
    1. 合併が効力を生じた日
    2. 消滅会社における吸収合併をやめることの請求(会784の2)を受けた場合の手続経過
    3. 消滅会社における反対株主の買取請求(会785)を受けた場合の手続経過
    4. 消滅会社における新株予約権の買取請求(会797)を受けた場合の手続経過
    5. 消滅会社における債権者保護手続き(会789)の経過
    6. 存続会社における吸収合併をやめることの請求(会796の2)を受けた場合の手続経過
    7. 存続会社における反対株主の買取請求(会797)を受けた場合の手続経過
    8. 存続会社における債権者保護手続き(会799)の経過
    9. 存続会社が消滅会社から承継した重要な権利義務に関する事項
    10. 消滅会社の事前備置書類(会782)
    11. 吸収合併による変更登記及び解散登記(会921)をした日
    12. 吸収合併に関する重要な事項
  4. 【どこに】会社の本店に

備え置いて、株主・債権者に閲覧などさせる必要があります(会社法801、会社法施行規則200)。

なお、

消滅会社の「事後開示書面」は、合併と同時に法人が消滅するため規定されていません。

登記申請

合併の効力発生日以降に次の登記を申請します。

  • 存続会社について合併による変更登記、消滅会社について解散登記
  • (被合併会社名義の不動産がある場合には)不動産登記を申請します。

事後開示書類の備置終了

合併の効力発生日から6か月後経過すれば、備置期間は終了します(会社法801、会社法施行規則200)。


【1】兵庫県官報販売所HPは官報文例が多数掲載されており参考になる(合併公告申込書/株式会社兵庫県官報販売所/最終アクセス220326)。

  • 基本的には合併当事会社の連名で掲載している。クライアントの費用負担軽減のためである。
  • 同サイトの緑色文字部分は、任意的記載事項であり基本的には記載しない。クライアントの費用負担軽減と必要最小限の記載の方がミスのリスクが減るからである。

【2】株主等通知併用型の公告を行うべき場合とは、株主への個別通知(会785Ⅲ、797Ⅲ)を公告で代用できる(785Ⅳ、797Ⅳ)場合、すなわち次の2つの場合である。

  1. 存続会社・消滅会社が公開会社である場合
  2. 存続会社・消滅会社が株主総会決議で吸収合併契約等の承認を受けた(簡易合併・略式合併でない)場合

簡易合併や略式合併を行うか、株主総会の承認により合併を行うかが未定の場合には、株主等通知併用型公告を行っておくべきであろう。

また、株主への個別通知は、株主総会招集通知と同時に発送しても問題はない。

標準的な所要時間


事案によりますが、3か月程度いただければ幸いです。

司法書士の報酬・費用


業務の種類 司法書士手数料 実費
  • 合併契約書
  • 官報公告
  • 個別催告
  • 合併による変更登記
  • 合併による解散登記 

341,000円(税込)~

【1.2】

350,000円

【1.2.3】

【1】会社登記のみの費用です。

  1. 合併で消滅する会社/会社分割で分割される会社/譲渡する会社が不動産・自動車などの権利を保有している場合、不動産登記などが必要になり、この費用は表には含まれておりません。ご注意ください。
  2. 譲渡側の権利義務関係を法的にチェックする(いわゆる「法務デューデリ」)費用は含まれておりません。法務デューデリもご希望の場合には、別途見積を作成いたします(作業量・難易度により決定いたします)。

【2】会社が合併するときには、官報公告が義務づけられています。さらに知れたる債権者がいる場合には、個別の通知(催告)が必要です。その場合に加算される費用は次のとおりです。

 

  1. 個別催告書原案作成・発送代行の報酬として11,000円+債権者数×1,100円(税込)
  2. 実費として債権者数×特定記録郵便費用242円

【3】会社登記のための登録免許税・官報公告費用を含みます。

一方が有限会社である場合には決算公告義務がありませんので、もう少し実費は安くなります。

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