決算期(事業年度)変更の手続


税理士や監査法人などの要請によって、決算期を変更しようとする会社は多い。

しかしながら、決算期変更手続について、具体的に記載した記事はなかなか見当たらない。このコラムは、決算期変更手続について、順次加筆していき充実したものにしていきたいと思います。

もくじ
  1. 決算期(事業年度)変更に関するルール  
  2. 総会開催スケジュールの設定
  3. 決算期変更の税務手続
  4. 決算期変更の登記手続
  5. 登記が不要の会社手続を誰に相談すれば良いの?

決算期変更に関するルール


営業年度は事業年度となった(用語の変更)

会社法の施行に伴い「営業」という用語は、「事業」という用語に変わりました。

これに伴い「営業年度」も「事業年度」となりました。

決算期は定款記載事項であるため株主総会特別決議が必要

定時株主総会である必要はありません。定時総会か臨時総会を招集し、次の定足数と決議要件を充たす必要があります。

決議機関

(決議の種類)

定足数(出席率) 決議要件

       

株主総会

(特別決議)

会309Ⅱ

【1】

      

議決権行使可能株主の議決権の過半数を有する株主出席

出席株主の議決権の2/3以上

定款で「議決権行使可能株主の議決権の1/3以上を有する株主の出席」と緩和可能

定款で加重のみ可

【1】有限会社の特別決議(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律14Ⅲ)

決議機関 定足数(出席率) 決議要件

特例有限会社

株主総会

(特別決議)

なし                

総株主の半数以上かつ総株主3/4以上

 

前段のみ加重可。

ひとつの決算期は1年以内

会社法だけを読むと、事業年度を変更する場合には、変更後最初の事業年度だけ1年半まで良さそうに見えます。

会社計算規則第59条(各事業年度に係る計算書類)第2項
  各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、1年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、1年6か月)を超えることができない。

ところが・・・

法人税法第13条(事業年度の意義)第1項
  この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるものをいい、法令又は定款等に会計期間の定めがない場合には、次項の規定により納税地の所轄税務署長に届け出た会計期間又は第三項の規定により納税地の所轄税務署長が指定した会計期間若しくは第四項に規定する期間をいう。ただし、これらの期間が一年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、その一年未満の期間)をいう。

株主総会決議でも、一事業年度は1年内にしておくべきです。

総会開催スケジュールの設定


事業年度変更のための「総会スケジュールの設定」は、実はなかなか面倒です。

具体例1)6月決算の会社が、7月決算に変更する場合

この会社が行なうべき総会は次のとおりです。

  • 決算期変更のための株主総会(定時総会でも、臨時総会でもOK)
  • 6月決算承認のための定時株主総会
  • 7月決算承認のための定時株主総会

また会社の定款には通常「定時総会は、事業年度終了後3か月以内に開催する」となっていますので、これに違反しないスケジュール設定が必要です。

具体例1の会社の場合、次のように総会スケジュールを設定すべきでしょう。

 

1.6月末までに事業年度変更のための臨時株主総会を開催します。

その際の議案は次のとおりにするのがオススメです。

議案(例) 事業年度に関する定款規定変更に関する件

下記のとおり事業年度に関する定款規定を変更したき・・・

定款旧第35条 当会社の事業年度は、毎年7月1日から翌年6月末日までの年1期とする。

定款新第35条 当会社の事業年度は、毎年8月1日から翌年7月末日までの年1期とする。

改正附則第1条 この定款は、令和3年7月1日から施行する。ただし、施行後最初の事業年度は、令和3年7月1日から同年7月末日までとする。

2.6月決算・7月決算承認のための定時総会を9月の同日に連続開催します。

6月決算承認のための定時総会を9月末までに、7月決算承認のための定時総会を10月末までに各開催するのが原則です。もっとも、1か月分の決算承認のために連続して定時総会を開催するのが煩瑣という場合には、6月決算・7月決算承認のための定時総会を9月【1】の同日に連続開催【2】すれば、大丈夫です。


【1】10月総会にすると、6月決算承認議案が貴社定款「事業年度終了後3か月以内に定時総会を開催する」に反します。

【2】1回の定時総会の中で、2期分の決算承認をしても良いのではないかとお考えかも知れませんが、通常の会社では定款に基準日の定め「事業年度末日の株主をもって当該事業年度に関する定時総会で権利行使できる株主とする」がありますので、形式上2期分の決算承認議案の審議において議決権を行使できる株主が異なることになります。よって、6月決算承認定時総会と7月決算承認定時総会は分けるべき(同日連続開催は可能)です。

3.定款原本を改訂し、会社本店で保管します。

この定款には、公証人の認証などは不要です。

〔決算期変更の定款記載例〕

第35条(事業年度) 

当会社の事業年度は、毎年8月1日から翌年7月末日までの年1期とする。

 

第41条(第8期事業年度) 

当会社の第8期事業年度は、令和4年5月1日から同年7月31日までの3か月間とする。なお、本条は令和4年7月31日の経過により自動的に削除されるものとする。

 

上記は、当社現行定款に相違ない。

令和 年 月 日

あなまちサムライサポート株式会社

代表取締役 佐 藤  大 輔 (法人実印)

税務


税務署への異動届出書の提出が必要です。

貴社でなさるか、顧問税理士にご依頼ください。

登記


事業年度は登記される事項ではありませんので、登記を行なう必要はありません。

登記が不要の会社手続は誰に相談すれば?


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