特別代理人選任申立(未成年者がいる場合の遺産分割協議)


相続人の中に未成年者がいる場合には「特別代理人」を家庭裁判所に選任してもらい、その方が未成年者を代理して遺産分割協議を行なうこともあります。

もくじ
  1. なぜ特別代理人が必要になるのか?
  2. 特別代理人を選任する以外の方法は?
  3. 「特別代理人選任から名義変更まで」の流れ
  4.  選任申立書に添付する「遺産分割協議(案)」では未成年者の法定相続分の確保は必要か?!
  5. 特別代理人の仕事内容
  6. 特別代理人は誰になってもらえば良いの?!
  7. 司法書士の報酬・費用
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なぜ特別代理人が必要になるのか?


未成年者が契約などをする場合には、親権者であるご両親が(未成年者のために)未成年者に代わって契約を結びます。

 

ところが、お父様かお母様が、未成年者を遺して亡くなられた場合には、残された片親も未成年者もともに遺産分割協議に参加する当事者となり、残された片親と未成年者の利益が対立します。例えば、片親がある財産を相続すると、子はその財産を失うという関係にあるからです。

 

そんなときに、親権者にかわって代理権を行使するのが「特別代理人」です。

では、未成年者がいる場合には、特別代理人選任しかないのかと問われますと、それ以外の方法もあります。 

特別代理人を選任する以外の方法は?


相続人の中に未成年者がいるとき遺産分割協議を行なう場合には、次の方法から選択します。

  1. 残された片親が相続放棄し、未成年の子を代理して遺産分割協議を行なう(未成年の子が複数いる場合には、この方法を使えません。)。
  2. 遺産分割協議をせず、法定相続分で相続する(不動産の場合には使える方法ですが、預貯金など財産の種類によっては使えない方法です。)。
  3. 未成年の子のために特別代理人の選任を申し立て、特別代理人が遺産分割協議に参加する。
  4. 未成年の子の成人を待つ【1】。

必ずしも特別代理人選任が必要とは限らないと、ご理解ください。

ここでは「3」の特別代理人を選任して遺産分割協議する方法についてご説明します。

【1】未成年者が20歳になるのを待つだけではなく、令和4年4月1日「成年年齢を18歳に引き下げる」民法の一部改正が行なわれ(施行され)、次のとおりに変更されます。

  1. 平成14(2002)年4月2日~平成15(2003)年4月1日生は、令和4年4月1日に19歳で成年
  2. 平成15(2003)年4月2日~平成16(2004)年4月1日生は、令和4年4月1日に18歳で成年
  3. 平成16(2004)年4月2日以降生まれは、18歳の誕生日に成年

(2018/06/30成立民法の一部を改正する法律)

「特別代理人選任から名義変更まで」の流れ


遺産一覧の作成

司法書士が遺産一覧を作成します。

特別代理人候補者へ就任を打診

通常は未成年者の祖父や祖母に依頼することが多いです。

候補者がいない場合には、司法書士が就任することも可能です。就任報酬は16.5万円(税込)です。

(相続税試算)

相続税が課税される可能性がある場合には、税理士に入ってもらい節税も考えた遺産分割協議案を作成します。

二次相続で、多額の相続税が課税される可能性がある場合(残された配偶者が資産家である場合など)も、税理士に入ってもらうことがあります。

遺産分割協議(案)の作成

未成年者の法定相続分を確保する必要があるかは、裁判所(裁判官)によって違いがあるようです。

詳しくは「選任申立書に添付する『遺産分割協議(案)』では未成年者の法定相続分の確保は必要か?!」をご参照ください。

遺産分割のための特別代理人選任申し立て

相続人間で協議した内容の遺産分割協議書(案)を添付して申し立てます。

申立書記載の候補者が選任されるとは限りません。

未成年の子の住所を管轄する家庭裁判所が管轄します。

家庭裁判所から特別代理人への書面による照会

特別代理人に就任するつもりがあるか否か、遺産分割協議書(案)の内容を知っているか否か、遺産分割協議書(案)で未成年者の利益が保護されているか等が照会されます。

(家庭裁判所から特別代理人への書面による照会)

未成年者であっても15歳以上などの場合には、家庭裁判所から未成年者に対して照会状が届くこともあります。

家庭裁判所による選任

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書を作成しますので、特別代理人も実印を押印し、印鑑証明書を添付します。

この時点で特別代理人のお仕事は完了です。

家庭裁判所への報告なども必要ありません。

各財産の名義変更

選任申立書に添付する「遺産分割協議(案)」では未成年者の法定相続分の確保は必要か?!


  • 関西の家庭裁判所では、未成年者の法定相続分の確保は、必ずしも必要ではありません。例えば、親と未成年者の場合には、親が一切の面倒をみているという事情があるからです。
  • 関東、中部やその他の家庭裁判所(東京・横浜・名古屋・鳥取)では、未成年者の法定相続分を確保するよう裁判所からの指示があることもあるようです。

グループ司法書士の私見

特別代理人の権限は、遺産分割協議の成立により消滅し、その後で親権を行使するのは片親になります。したがって、遺産分割協議で未成年者の法定相続分を確保しても特段の支障はないと考えます。

もっとも未成年者の法定相続分を確保することによって、相続税額が著しく高額になるなどの弊害がある場合には、裁判所に「上申書」でその旨を説明し、子の法定相続分を下回る協議を成立させる必要があるかもしれません。

特別代理人の仕事内容


特別代理人は、遺産分割協議を成立させるためだけのスポットの代理人です。

成年後見人、不在者財産管理人や相続財産管理人の仕事はすごく大変だと言われますが、特別代理人は財産を管理するわけではありませんので、これらよりもずっと楽です。

 

したがって、未成年者のお祖父様やお祖母様でもご負担なくできますので、ご協力をお願いいたします。

特別代理人は誰になってもらえば良いの?!


特別代理人の職務は、それほど大変ではありませんので、未成年者のお祖父様、お祖母様を特別代理人の候補者とすることが多いです。

候補者が必ずしも選任されるとは限りませんが、これまで候補者として申立書に記載したお祖父様やお祖母様とは別の方が選任されたことはありません。

司法書士の報酬・費用


手続 司法書士の報酬 実費
特別代理人選任申立

子一人ごとに

110,000円(税込)~

子一人ごとに

印紙800円

切手2,000円

(特別代理人候補者がいない場合)

15~100万円【1】

(戸籍収集)

11,000円(税込)~

3,000円~

(相続関係図作成)

33,000円(税込)~

0円

(遺産目録作成)

33,000円(税込)~

 
遺産分割協議書作成

22,000円(税込)~

 
司法書士が特別代理人候補者となり、実際に選任された場合

子一人ごとに

165,000円(税込)【2】

 

【1】裁判所予納金は、不在者財産管理人や特別代理人などの報酬にあてるため、裁判所に予め納めていただく費用です。予定されている業務量に応じて、裁判所が決定します。遺産分割協議をする場合で30万円ほど、遺産分割協議と不動産売却もする場合には100万円ほど。

親族が特別代理人候補者となっている場合、予納金は通常不要です。

【2】一応定額としておりますが、財産が多くて複数の遺産分割協議書への押印が必要な場合などにはご相談させてください。

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