公正証書や書面など様式が決まっている契約の類型


契約は、口頭(口約束)でも成立するのが原則です。しかし、消費者保護などの理由で、公正証書で契約することが要求されることや、書面によることを要求されている契約があります。

まとめましたので、ご参照ください。

もくじ

1.公正証書作成が必要な契約

2.書面作成が必要な契約(公正証書までは要求されていない)

3.口頭でもよいとされている契約

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公正証書作成が必要な契約


公正証書以外の書面や口頭で契約しても、無効になる契約類型は次のとおりです。

任意後見契約

公証人にご本人の契約締結能力の有無を確認させるため公正証書での作成が要求されています(任意後見契約に関する法律3)。

事業資金貸付の保証契約を締結する場合の保証意思宣明

保証人の責任は大きく、これまでも度々問題になってきました。

事業に関係のない第三者が保証人になる場合には、「本当に大丈夫なのか」と公証人が意思確認を行う必要があります。(民465の6)

保証に関する法律、法改正の流れはコチラ(根保証契約【図解民法改正】2020.4.1以降締結契約)をご覧ください。

事業用定期借地権

事業用定期借地権者には、普通の借地権者であれば認められている権利の一部が認められていません。例えば、建物買取請求権や更新がありません。

よって、本当に事業用定期借地権であるのか(居住用の建物は建たないのか)を公証人に審査させるため公正証書での契約が要求されています(借地借家法23)。公証人は、建物の図面などの提出させて審査します。

書面作成が必要な契約


公正証書でなくてもよいが、書面の作成が要求されている契約などの類型です。

 

書面で締結する場合であっても、油断してはいけません。

契約書には絶対に漏らしてはいけない項目があります。

例えば、お金を貸したのに「年月日、あなたから金〇円受け取りました。」とだけ記載されている場合には、お金を貸した契約書とは言えません。

 

また、公証役場や法務局で確定日付を取得しておいた方がよい場合もあります。

遺言書

デジタル遺言やビデオ遺言などが話題になっていますが、これらの遺言は様式に違反しており、法律上の効果はありません。

遺言は書面で作成する必要があります(民967以下。船舶遭難者の遺言〔民979〕を除く。)。

保証契約(民446ⅡⅢ)

平成17(2005)年4月1日以降に締結された保証契約は、書面によらなければ効力を生じません(民446ⅡⅢ)

令和2(2020)年4月1日以降に締結された保証契約の場合には次の要件もあります。

・保証人が個人である場合、極度額の定めがなければ無効(民465条の2Ⅱ)。

・事業のための貸金を個人保証する場合(根保証に限らず)、公正証書による保証意思確認が必要。

・事業のための保証を個人に依頼する場合、主債務者は債務額などの情報提供を要する。

書面でする消費貸借

従来の消費貸借契約は貸借物の貸主から借主に交付することが契約の成立条件でしたが、実務上は契約だけ先行させ物の交付が後日に行われるケースが多かったため、令和2年4月1日施行改正民法で明文化されました(民587の2)

定期建物賃貸借契約(借地借家法38)

更新がない建物賃貸借契約です。

定期建物賃貸借契約であって、普通の賃貸借契約とは異なることが後日紛争にならないよう書面での契約が要求されています(借地借家法38) 。

定期借地権設定契約

更新がない建物所有目的の土地賃貸借契約です。

定期借地権設定契約であって、普通の賃貸借契約とは異なることが後日紛争にならないよう書面での契約が要求されています(借地借家法22) 。

建設業関連

工事の請負契約書:建設業許可が不要な小さな建設工事でも、契約書作成が必要です(建設業法19)

宅地建物取引業関係

  • 媒介契約書:宅地・建物の売買・交換の媒介の契約(仲介契約)を締結したときは、遅滞なく(宅建業法34の2)
  • 代理契約:宅地建物取引業者が宅地・建物の売買・交換の代理を依頼されたときは、遅滞なく(宅建業法34の3、34の2)
  • 重要事項説明書:宅地・建物の売買・交換・貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない(宅建業法35)。
  • 売買契約書・交換契約書:宅地・建物の売買・交換に関し、契約を締結したとき(宅建業法37Ⅰ)
  • 賃貸借契約書:宅地・建物の貸借に関し、契約が成立したとき(宅建業法37Ⅱ)
  • クーリングオフ権を告知する書面:消費者にクーリングオフ権があるにも関わらず、宅建業者が告知しない場合には、クーリングオフ権利は消滅しません。そのため、通常は売買契約書に記載されています(宅建業法37の2、宅建業法施行規則16の6)

貸金業関係

  • 契約締結前書面(貸金業法16の2)
  • 生命保険契約等に係る同意前の書面(貸金業法16の3)
  • 契約締結時の書面(いわゆる17条書面。貸金業法17)
  • 弁済を受けたときの受取書面(貸金業法18)
  • 強制執行認諾文言付き公正証書を取得する前に交付する書面(貸金業法20)

口頭でもよいとされている契約


ほとんど全ての契約を口頭でも成立させることができますが、口頭で契約した場合に問題となるのは揉めたときです。

  • 今は親しい間柄であっても、揉めると人は変わります。契約は口頭ではなく書面で締結しましょう。
  • 取引相手との関係性から書面で契約しずらい場合であれば、なおさら書面で締結しましょう。「書面で契約しましょう」「契約書を作りましょう」とさえ言えない相手方であれば、契約しないことも選択肢です。

契約を書面で作成するときに、司法書士などの専門家に依頼されると、取り決めるべき項目の記載漏れを防ぐことが可能です。

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