法人である医療機関の全種類を分類&解説


法人化された医療機関は種類が多すぎて、訳が分からない。

そんな同業司法書士の声を反映して、法人である医療機関の分類と解説を行いました。

ご参照ください。

もくじ
  1. 法人である医療機関の種類と解説
  2. 法人である医療機関の数
  3. 「医療一般社団法人」と「医療法人社団」との比較
  4. 「医療一般財団法人」は、解散事由に注意
  5. 人気の関連ページ

〔凡例〕このコラムでは、次のとおり略記します。

一般法人法:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)

医療一般社団法人:一般法人法を根拠法として「一般社団法人形式」で設立された医療機関。

医療一般財団法人:一般法人法を根拠法として「一般財団法人形式」で設立された医療機関。

法人である医療機関の種類と解説


法人である医療機関には、大きく分けて4種類あります。色づけしたところに記載された法人です。

以下、大分類→中分類→小分類の順で説明していきます。

大分類【1】 中分類【2】 小分類(法人の種類)【3】
 
医療法人社団

持分あり【4】

(経過措置型医療法人)

出資額限度法人【5】

 ▲▼ ○後戻り可能

普通の持分あり医療法人社団【4】

   ▼ ×後戻り不可  
持分なし【6】

基金拠出型医療法人社団/基金なし医療法人社団【7】

 ▲▼ ○後戻り可能

特定医療法人社団/社会医療法人社団【8】

   
医療法人財団

基金拠出型医療法人財団/基金なし医療法人財団

 ▲▼ ○後戻り可能

特定医療法人財団/社会医療法人財団

   
医療一般社団法人:一般法人法を根拠法として「一般社団法人形式」で設立された医療機関。
 
医療一般財団法人:一般法人法を根拠法として「一般財団法人形式」で設立された医療機関。

【1】大分類について

医療法は、医療行為を提供する法人は「医療法人社団」「医療法人財団」の2種類を想定していたようですが、一般法人法を根拠法として「『一般社団法人形式』で設立された医療機関」や「『一般財団法人』形式で設立された医療機関」も出てきました。ここでは便宜上それぞれ「医療一般社団法人」と「医療一般財団法人」といいます。

下の方で「医療一般社団法人」と「医療法人社団」の比較を行っていますので、ご参照ください。

【2】中分類について

「持分あり」の医療法人社団は、平成19年4月1日以降は設立できなくなりました(平成18年改正医療法)。「持分」とは、出資することによる持分であり、株式会社における株式みたいなものだと考えていただければ結構です。

「持分あり医療法人社団」は「持分なし医療法人社団」への移行をすることができます。逆に「持分なし医療法人社団」は「持分あり医療法人社団」へ移行することはできません。

【3】小分類について

  • 【4】(普通の)持分あり医療法人社団:社員たる医師が退社する場合に出資持分を払戻すときや、医療法人社団が解散した場合に出資者に残余財産を分配するときに、医療法人の財産額に応じて払戻しを行う医療法人社団。医療法人の財産が大きければ高額の払戻しや分配が期待できます。
  • 【5】(持分あり医療法人社団のうち)出資額限度法人:社員たる医師が退社する場合に出資持分を払戻すときや、医療法人社団が解散した場合に出資者に残余財産を分配するときに、医療法人の財産額に応じず、社員たる医師の出資額を限度として払戻しする旨を定款で定めている医療法人社団。
  • 【6】出資持分なし医療法人社団:社員たる医師が退社する場合や、医療法人社団が解散した場合も、社員たる医師に払い戻しや分配が全くない医療法人社団。
  • 【7】基金拠出型社団/財団:将来返金することを約束した「基金」制度を採用した医療法人社団・医療法人財団。
  • 【8-1】特定医療法人社団/財団:法人税の軽減を受けられる医療法人。要件を充たしたうえで国税庁の承認を受ける必要があります(租税特別措置法67の2)。
  • 【8-2】社会医療法人社団/財団:法人税や固都税が非課税になる医療法人。要件を充たしたうえで都道府県知事の認定を受ける必要があります(医療法42の2)。

平成19年3月31日以前について

下記厚労省の図が分かりやすいので引用しておきます(医療法人の基礎知識/厚労省PDF/最終アクセス220430)

なお、特別医療法人は、平成24年3月31日をもって経過措置期間が終了しました。

法人である医療機関の数


平成30年時点の種類ごとの数は、下表の()内に記載した数字です。

出典:種類別医療法人数の年次推移/厚労省HP/最終アクセス220430

医療一般社団法人及び医療一般財団法人の数は、厚労省の資料には出てきません。

大分類 中分類 小分類(法人の種類)
 

医療法人社団

(53,575)

持分あり

(39,716)

  • 普通の持分あり医療法人社団(39,430)
  • 出資額限度法人(286)

持分なし

(13,859)

  • 普通の持分なし医療法人社団(13,291)
  • 特定医療法人社団(311)
  • 社会医療法人社団(257)
   

医療法人財団

(369)

  • 普通の医療法人財団(288)
  • 特定医療法人財団(47)
  • 社会医療法人財団(34)
   
医療一般社団法人(不明)
 
医療一般財団法人(不明)

「医療一般社団法人」と「医療法人社団」の比較


「医療法に基づく医療法人」ではなく、「一般社団法人」の仕組みを使って医療法人を設立することも可能です。

「医療一般社団法人」と「医療法人社団」の比較を行っていますので、ご参照ください。

  医療一般社団法人 医療法人社団
設立

都道府県による認可は不要

公証人による定款認証

設立登記

○短時間で設立が可能

都道府県による認可

公証人による定款認証は不要

設立登記

×認可にすごく時間がかかる

診療所・病院開設

保健所による開設許可

保健所による開設許可

名称

一般社団法人○○

○○一般社団法人【1】

自由
純資産額の登記 登記事項ではない。 毎年1回の登記が必要
役員の最低人数

理事会非設置:理事1名

理事会設置:理事3名、監事1名

理事会が必要:理事3名、監事1名

【1】一般社団法人又は一般財団法人は、その種類に従い、その名称中に一般社団法人又は一般財団法人という文字を用いなければならない(一般法人法5)。

【2】医療法人の商号は比較的自由で、医療法人社団などと入れる必要もありません。

コラム「医療法人を設立する際、正式名称に「社団」「財団」は必要なのか?!」を参照ください。

「医療一般財団法人」は、解散事由に注意


医療一般財団法人は、一般法人法に基づく法人であるため「純資産額が少なくなると解散させられる」リスクと「みなし解散」リスクがあります。

以下に「医療法人財団」と「医療一般財団法人」の解散事由の比較表を掲載しておきますのでご注意ください。

「医療法人財団」の解散事由 「医療一般財団法人」の解散事由
(医療法) (一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)
  定款で定めた存続期間の満了(202Ⅰ①)
寄附行為をもつて定めた解散事由の発生(55Ⅲ①) 定款で定めた解散の事由の発生(202Ⅰ②)

目的たる業務の成功の不能(55Ⅲ②→55Ⅰ②)

基本財産の滅失その他の事由による一般財団法人の目的である事業の成功の不能(202Ⅰ③)

他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。次条第1項及び第56条の3において同じ。)

 

(55Ⅲ②→55Ⅰ④)

合併(合併により当該一般財団法人が消滅する場合に限る。)(202Ⅰ④)

破産手続開始の決定(55Ⅲ②→55Ⅰ⑥)

破産手続開始の決定(202Ⅰ⑤)
設立認可の取消し(55Ⅲ②→55Ⅰ⑦)  
  261条第1項又は第268条の規定による解散を命ずる裁判(202Ⅰ⑥)
 

一般財団法人は、前項各号に掲げる事由のほか、ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合においても、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散する。

202Ⅱ)

  新設合併により設立する一般財団法人は、前項に規定する場合のほか、第199条において準用する第223条第1項の貸借対照表及びその成立の日の属する事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合においても、当該事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散する。(202Ⅲ)
  みなし解散(203)

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