会社の事業目的(の変更)ってどうすれば良いの?!


会社を設立するとき、新規事業を立ち上げるとき、とても大切なのが「事業目的」です。

たとえば・・・

  1. 会社は、事業目的に記載された事業目的の範囲内にある事業しか行うことは出来ません【1】。
  2. 事業目的外の事業を行なったときは、経営陣は、株主などから定款違反の行為であるとして、責任追及される可能性があります。
  3. 新規事業を行なう際には、すでにある事業目的の範囲内なのか、それとも追加が必要か検討する必要がございます。
  4. 事業の中には、行政の許認可を必要とするものがあります。許認可取得に適した目的を決める必要があります。
  5. 融資を受ける際には、銀行が融資対象事業が、貴社の事業目的の範囲内であるかチェックします。

ここでは、大切な「事業目的の定め方」について、ご説明します。 


【1】個人事業主(会社を設立していない事業者を個人事業主といいます。)であれば、どんな事業を行うことも自由です。

 

もくじ
  1. 入れておくと良い事業目的
  2. 入れるべきでない事業目的(言葉)
  3. 日本語を正しく使って、格好よくしましょう
  4. 目的変更登記のタイミング
  5. 司法書士の報酬・費用
  6. 人気の関連ページ

入れておくと良い事業目的


多すぎると、何をする会社なのか分からなくなり、融資などで問題になることがあります。

一方、少なすぎると将来の新規事業展開をする上でも問題となりえます。

中小企業であれば、10個前後が宜しいかと思います。

 

事業目的の決定は、簡単そうでとても難しいです。

ジャンル別にご紹介します。

物販

新品しか売らないという場合には、必要ありませんが、中古品を売る場合には警察で「古物商の許可」を取得する必要があります。その時に必要になりますので、次の目的を入れておきましょう。

  1. 古物営業法に基づく古物商

不動産・建築関連

  1. 不動産の売買、賃貸、仲介及び管理
  2. 建売業     
  3. 宅地造成工事  
  4. 建物解体工事
  5. 建築工事の請負、企画、設計及び監理
  6. 内装仕上工事  
  7. 大工工事業   
  8. 左官工事業
  9. タイル、れんが、ブロック工事業
  10. 造園土木工事、住宅外構工事及びエクステリア工事
  11. 建設工事業【1】
  12. 産業廃棄物収集運搬業【2】
  13. 損害保険代理業、自動車損害賠償保障法に基づく自動車損害賠償責任保険代理業及び生命保険の募集に関する業務【3】

【1】「建設工事業」は、建設関係では一番広い意味です。追加で許認可を取得することを想定して、主要な工事以外にも入れておくことをオススメしています。

 「建設工事」は「建築工事」よりも大きい概念です。

    建設工事 > 建築工事(建物を建てるの意味) + 土木工事(建築以外)

建設業の許可は全部で28種類あります。

都道府県の申請窓口によって、単に「建設業」と記載すれば28種類全ての許可が取れる場合と、具体的に許可を取得する目的を「建築工事業」「大工工事業」「左官工事業」「とび・土工工事業」などと記載しなければならない場合がございます。許可を取得される窓口や行政書士に確認ください。もちろん当グループで、行政書士をご紹介することも可能です。

【2】建設関係では、後日許可を取得することも多いためオススメしています。

【3】火災保険・地震保険ついでに自動車保険・生命保険なども入れるのが通常です。

自動車関連

  1. 自動車及び中古自動車の販売並びに輸出入
  2. 自動車の修理、鈑金、塗装及び加工
  3. 自動車部品及び自動車用品の製造、販売並びに輸出入
  4. レンタカー業
  5. レッカー車による自動車の移動業務
  6. 古物営業法による古物商【1】
  7. 損害保険代理業、自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業、生命保険の募集に関する業務及び締結の媒介に関する業務【2】

【1】中古自動車を扱う場合には、所轄警察署で「古物免許」を交付してもらう必要がありますので、この事業目的は必須です。

【2】自賠責や自動車保険を扱う場合には、必要になります。

資産管理・ホールディングス関連

【事業持株会社(=HD自身も事業を行う)の場合】

 当会社は、当会社自身が次の事業を営むことを事業目的とするとともに、次の事業を営む会社の株式または持分を所有することにより、当該会社の事業活動を支配及び管理することを事業目的とする。

  1. ・・・・
  2. ・・・・
  3. 上記に付帯関連する一切の事業

【純粋持株会社(=HD自身は事業しない)の場合】

 当会社は、次の事業を営む会社の株式または持分を所有することにより、当該会社の事業活動を支配及び管理することを目的とする。

  1. ・・・・
  2. ・・・・
  3. 上記に付帯関連する一切の事業
【持株会社であることを余り匂わせない場合】
  1. ・・・・
  2. ・・・・
  3. 経営のコンサルティング
  4. 有価証券の保有、運用、管理及び売買
  5. 商標権等知的財産権の賃貸及び管理
  6. 電子計算機による計算受託
  7. 店舗経営に必要な什器備品、電気製品、電気機器、通信機器、事務用機械器具、スポーツ用機器、冷暖房設備、照明設備機器、厨房設備機器、車両、運搬具、印刷機材、配送機器、家具及び室内装飾品等の各種物品の賃貸
  8. 上記に付帯関連する一切の事業

その他

  1. インターネットのホームページの企画、制作及び管理
  2. 飲食店経営(飲食店営業)

これらも多い事業目的です。

これら以外

司法書士にご相談ください。

貴社サービスに応じた「格好良い事業目的」をご提案させていただきます。

入れるべきでない事業目的(言葉)


×風営法に基づく・・・

客の隣に座って接客するスナックやクラブの場合、風営法の許可を取得する必要があります。ついつい事業目的に「風営法に基づく・・・」と入れてしまいがちですが、出来るだけ回避すべきです。

「風営法に基づく・・・」と事業目的に入れてしまうことで、金融機関に借入を渋られたり、会社自体がうさん臭く見られたりすることのデメリットがあるためです。

日本語を正しく使って、格好よく


「及び」「並びに」「又は」「若しくは」正確に使って、格好よくしましょう。

詳細は、こちらのページ(法律文書作成のルール)の接続詞の項目をご覧ください。

末尾に「業」と入れるなら、全部に入れて統一を!

目的変更登記のタイミング


新規事業を始めるにあたり必ずしも事業目的の変更を行う必要があるとは限りません。

今ある事業目的の範囲内であれば、何ら問題はありません。最後の事業目的に「前記各号に付帯関連する一切の事業」と入っていますよね。これが入っていれば、結構大丈夫です。

 

何といっても3万円も登録免許税だけでも掛かってしまいます。

本当に必要なのかは、司法書士に問い合わせましょう。

 

事業目的を変更するタイミングは、整理すると次のようなものになります。

ビシッと新規事業を一番上に入れて目立たせたいとき

「登録免許税3万円に司法書士報酬が必要?そんなもの大したことないでしょ。それよりも新規事業を始めるにあたりビシッと入れたい」という方は、是非ビシッと入れて、新規事業を目立たせましょう♪

 

融資銀行がどうしても入れてくれと言ってきたとき

融資銀行の依頼を断わるのは、あまり得策とは言えません。ここは言うことを聞いておきましょう。

ただし、後日いちゃもんを付けられないよう「こういう文言で入れるよ。いいね?」と言質をとっておきましょう。

 

他にも変更登記をするべき事項があるとき

他の登記と同時に申請することで、登録免許税が安くなることもあります。

 

商業登記では、課税根拠ごとに登録免許税の額が決定されます。

登録免許税の課税根拠が「目的の変更」と同じとき、つまり次のような登記を行なうときに「目的変更登記」を一緒に申請すれば3万円の経費削減ができます。

  1. 商号(会社の名称)の変更
  2. 公告する方法の変更
  3. 発行可能株式総数の変更
  4. 発行済株式の変更
  5. 株券を発行する旨の定めの変更
  6. 資本金の額の減少
  7. 株式譲渡制限に関する規定の変更
  8. 株式併合
  9. 単元株式の設置・変更・廃止
  10. 役員の責任免除規定の変更
  11. 監査役設置会社の定め設定・廃止
  12. 会計参与設置会社の定め変更
  13. 会計監査人設置会社の定め変更
  14. 支店廃止
  15. 支配人を置いた営業所の移転
  16. 支配人の氏名・住所の変更
  17. 株主名簿管理人の氏名住所変更
  18. 解散の事由の抹消
  19. 吸収分割会社の変更登記
  20. 新設分割会社の変更登記

以上、登録免許税法「別表第一」の24(一)ツ

その他

ある事業が「会社の事業目的」の範囲内か否かについては、次の二つとの局面で問題となりえます。

  • 会社と取引をする第三者との関係において〔外部関係〕
  • 会社(株主)とその役員との関係において〔内部関係〕

このあたりについては「加藤政也司法書士編集/Q&A商業登記と会社法/新日本法規/2022/106頁以下」にまとめられているので、ご興味がおありの方はご参照ください。

司法書士の報酬・費用


業務 司法書士の報酬 費用

目的変更の登記

登記に必要な議事録作成

41,030円(税込) 34,072円

【1】変更後の事業目的を追記した定款の作成費用は含まれておりません。WORDファイルをご提出いただければ追記いたします。

紛失した定款の再現や、定款見直しは、38,500円(税込)~で承ります。

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