不動産取引前に登記情報を閲覧したところ「事件中」と表示された司法書士の対応


司法書士を絶望させる「登記事件の処理中です。」の表示。

 

処理中である登記事件が完了しない限り、司法書士は不動産取引を実行できません。処理中である登記事件が、売主に対する仮差押・仮処分・差押え等である可能性を完全に否定できない限り、これらの登記が先行している不動産を売買することはできないからです。

 

こういう時こそ、プロの腕の見せ所です。いったん冷静になって次のとおりご対応ください。

(極短い記事ですが、テンパっている同職の皆さんのお役に立てれば幸いです。)

もくじ
  1. 考えられる理由と、対応(不動産登記が事件中)
  2. 考えられる理由と、対応(会社法人登記が事件中)

考えられる理由と、対応(不動産登記が事件中)


考えられる理由 対応方法
共同担保目録に記載された他の物件が事件処理中 共同担保目録を外して謄本請求する。
共有者多数の場合の、一人が事件処理中

どこの法務局でも良いので走って「一部事項証明書(共有者○○○○に関する部分)」を取得する。

法務局による事件処理中のロック解除忘れ

法務局に電話して「ひょっとしたらロックの解除をお忘れではないでしょうか?!」と(あくまで低姿勢で)お伺いを立てる。

上記以外で事件中

事件内容を全く教えてもらえない

法務局に電話又は出向いたうえで、事件中である理由を教えてもらう。

法務局に処理を急いでもらう(できれば直ちに校合してくれる)よう依頼する。

取引ができなければ、次のような紛争が発生する可能性があることをお伝えください。

  • 融資の利率が変動するかもしれません。
  • 引渡期限であれば買主が売主の違約解除をするかもしれません。
  • 買主が売主に損害賠償請求をするかもしれません。
  • 不測の事態が生じて、売主が死亡するかもしれません。

これらを回避するために、何としても校合を急いでください。

考えられる理由と、対応(会社法人登記が事件中)


取引当事者である売主及び買主が会社法人である場合には、商号・本店・代表者に変更がないかを事前に閲覧する必要もあります。

売主担当司法書士と買主担当司法書士が別であることも多い所謂「京都方式」では、会社登記情報を相互に交換することが業界の常識です。

また普段付き合いのない会社法人が取引当事者になる場合には、突然、会社法人登記を申請されることもありますので、登記情報ではなく、会社登記事項証明書を取得するようにします。

考えられる理由 対応方法
 

法人に何の登記を申請したのか確認します。

会社法人登記を申請した代理人司法書士の連絡先を教えてもらいます。

商号・本店・代表者以外の変更登記が申請中である場合(増資など)

会社法人登記の管轄法務局に走って「代表者事項証明書」又は「一部事項証明書(商号・本店・代表者に関する部分)」を取得できるか確認します。発行してもらえれば取引可能です。

商号・本店・代表者の変更登記が申請中である場合

会社法人登記を申請した代理人司法書士とともに会社法人登記を速やかに校合してくれるよう法務局に依頼します。

取引ができなければ、次のような紛争が発生する可能性があることをお伝えください。

  • 融資の利率が変動するかもしれません。
  • 引渡期限であれば買主が売主の違約解除をするかもしれません。
  • 買主が売主に損害賠償請求をするかもしれません。
  • 不測の事態が生じて、売主が死亡するかもしれません。

これらを回避するために、何としても校合を急いでください。