上告・上告受理申立・特別上告・再審


司法書士にとって最高裁は遠い存在だと思われがちですが、顧問先に弁護士を紹介した事件が最高裁に係属しようとすることもあり得ます。そんなときには、顧問先や弁護士とともに知恵を絞る必要もあります。

最低限必要な知識を整理しました。

もくじ
  1. 上告と上告受理申立の違い
  2. 特別上告
  3. 再審  
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上告と上告受理申立の違い


上告 上告受理申立

申立の

理由【1】

  1. 判決に憲法の解釈の誤り
  2. 憲法違反【2】
  3. 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。【3】
  4. 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
  5. 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
  6. 専属管轄に関する規定に違反したこと【4】
  7. 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと【5】。
  8. 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
  9. 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。

(民事訴訟法312)

  1. 最高裁判所判例違反
  2. 法令解釈に関する重要事項【2・6】

(民訴318)

提出先
  • 上告状:原裁判所(民訴314)
  • 上告理由書:原裁判所(民訴315)
  • 上告受理申立書:原裁判所
  • 上告受理申立理由書:原裁判所

(民訴318Ⅴ→314、315)

期間
  • 上告状:判決書又は調書判決(254Ⅱ)の送達を受けた日から2週間内(民訴313→285)
  • 上告理由書:裁判所からの上告提起通知書の送達を受けたときから50日(民訴規則194)
  • 上告受理申立書:判決書又は調書判決(254Ⅱ)の送達を受けた日から2週間内(民訴313→285)
  • 上告受理申立理由書:裁判所からの上告受理申立通知書の送達を受けたときから50日(民訴規則199Ⅱ→194)
フィルター
  1. 上告が不適法でその不備を補正できない場合、原裁判所が上告を却下しなければならない(民訴316Ⅰ①)。
  2. 上告理由書の不提出又は理由記載が方式違反の場合、原裁判所が上告を却下しなければならない(民訴316Ⅰ②)。
  3. 原裁判所が上告審に事件を送ったときでも、上告審はさらに調査して「1」「2」の事由あるときは上告を却下できる(民訴317Ⅰ)
  4. 最高裁は、上告理由が明らかに憲法違反及び上告理由に該当しないときは上告を棄却できる(民訴317Ⅱ)
  1. 上告受理申立が不適法でその不備を補正できない場合、原裁判所が上告を却下しなければならない(民訴318Ⅴ→316Ⅰ①)。
  2. 上告受理申立理由書の不提出又は理由記載が方式違反の場合、原裁判所が上告を却下しなければならない(民訴318Ⅴ→316Ⅰ②)。
  3. ×
  4. 最高裁は、上告受理申立理由中に重要でないと認めるものがあるとき、これを廃除できる(民訴318Ⅲ)
上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる。

【1】上告と上告受理申立は、最高裁へのアクセス手段として、制度的に区分され、相互の融通を認めない。

「上告の提起」と「上告受理の申立て」は、いずれか片方の申立てをすることもできますし、両方の申立てをすることもできます。両方の申立てをする場合には、1通の書面に記載することもできますが、そのときは、書面の表題を「上告状兼上告受理申立書」としてください(以上、最高裁HP)。

【2】高裁にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反も上告理由とできる(民訴312Ⅲ)。

【3】口頭弁論に関与していない裁判官が判決を下したとき(民訴249「直接主義」違反)。

裁判官が交替後に弁論更新なしに判決がなされた場合には適用なし。

【4】民訴法第6条(特許権等に関する訴え等の管轄)第1項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。

【5】これらの事由については、当事者又は法定代理人のの規定による追認(民訴法第34条第2項〔第59条において準用する場合を含む。〕があったときは、上告理由とならない(民訴312Ⅱ本文)。

【6】「法令の解釈に関する重要事項」とは、その法令の解釈が当該事件を超えて一般的に広く影響する問題に関連し、しかも、最高裁判所がその法令の解釈を示すことが、法令解釈の統一のために必要であることを意味する。

CF.経験則違反:上告受理申立理由となる。

【7】比較

控訴理由書の提出先:控訴裁判所(民訴規則182)

抗告理由書の提出先:原裁判所(民訴規則207)1週間以内。

特別上告


高等裁判所が上告審としてした終局判決に

  1. 憲法解釈の誤り
  2. 憲法違反

があるときに限り、最高裁判所に更に上告できます(民訴327Ⅰ)。

 

特別上告には、上告に関する規定が準用されます(民訴327Ⅱ)。

再審


再審の訴えができる理由は、限定列挙であり、いずれも三審制を保障できなかったと評価されるものである。

  1. 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
  2. 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
  3. 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
  4. 判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。
  5. 刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
  6. 判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。
  7. 証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。
  8. 判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。
  9. 判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。
  10. 不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。

(民事訴訟法318)

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