会社分割


会社を二つに割って、一方を別の会社に承継させる会社分割は、組織再編によく利用されているほか、事業承継やM&Aの場面でも利用されます。

 

特に難しい部分を中心に、わかりやすく解説します。

もくじ
  1. 会社分割の種類
    1. 新設分割と吸収分割
    2. 分社型分割(物的分割)と分割型分割(人的分割)
    3. 結局、何パターン?!
  2. 会社・法人の種類ごとの会社分割の可否
  3. 新設分割の流れ
  4. 司法書士の報酬・費用
  5. 人気の関連ページ

会社分割の種類(用語)


新設分割と吸収分割

  意味 当事会社の呼び方

吸収分割

(会社法2㉙)

既存会社A社の一部事業を切り離して、

切り離された事業を別の既存会社B社が承継します。

吸収分割会社:A社のこと

(会758Ⅰ)

吸収分割承継会社:B社のこと

(会757)

新設分割

(会社法2㉚)

既存会社A社の一部事業を切り離して、

新しい会社B社を作ります。

新設分割会社:A社のこと

(会763Ⅴ)

新設分割設立会社:B社のこと

(会763Ⅰ)

分社型分割(物的分割)と分割型分割(人的分割)

会社法上は分社型分割(物的分割)に一本化されましたが、会社計算規則上(税務上)は物的分割と人的分割が併存したままです。

旧会社法での名称

現行会社計算規則での名称

意味 現行会社法

分社型分割(物的分割)

分割対価として承継会社株式を分割会社に割当てる。

承継会社は分割会社の子会社となる。

従来のまま

分割型分割(人的分割)

分割対価として承継会社株式を分割会社の株主に割当てる。

承継会社と分割会社は兄弟会社となる。

分割型分割(人的分割)は廃止され、次のとおり整理された。

分社型分割+剰余金の配当【1】【2】

【1】分割型分割(人的分割)は、会社法上は次のとおり整理された。

① 分社型分割:分社型分割で、承継会社の株式は、(対価として)分割会社に割当てられる。

② 剰余金の配当:分割会社に割当てられた承継会社の株式を、分割会社が分割と同時に分割会社の株主に剰余金の配当として交付する。

③ ①②の手続を経ることで、分割的分割(人的分割)と同じ、「分割対価として承継会社の株式を

分割会社の株主に割当てる」ことが可能となる。

【2】人的分割の場合には、承継会社、分割会社とも全債権者を債権者保護手続の対象としなければなりません。「承継会社の株式」が、物的分割の場合には分割会社の財産として残るのに対して、人的分割の場合には分割会社の財産として残らない(剰余金の配当として分割会社の株主の財産になる)からです。まとめると、下表のようになります。

旧会社法での名称

現行会社計算規則での名称

承継会社 分割会社

分社型分割(物的分割)

  • 全債権者が債権者保護手続の対象となる。
  • 分割後に分割会社に債務の履行を請求できなくなる債権者のみが債権者保護手続の対象となる。
分割型分割(人的分割)
  • 全債権者が債権者保護手続の対象となる。
  • 全債権者が債権者保護手続の対象となる。

 

結局4パターン

  新設分割 吸収分割
分社型分割(物的分割) ありうる  ありうる
分割型分割(人的分割) ありうる ありうる

会社・法人の種類ごとの会社分割の可否


  分割会社【1】 承継会社【2】 新設会社【3】
株式会社 〇会社法2㉙㉚
特例有限会社 ×【6】 ×【7】
合同会社 〇会社法2㉙㉚
合名会社 ×【4】
合資会社 ×【4】
技術研究組合 △【5】

【1】吸収分割または新設分割で、分割される会社のこと。

【2】吸収分割で、分割会社の事業部門を承継する会社のこと。

【3】新設分割で、分割会社の事業部門を引き継いで設立される会社のこと。

【4】無限責任社員の責任が承継されるかについて、複雑な権利関係が生じ得るため認められません。もっとも、合同会社に「種類の変更」(会638)した後、会社分割することは可能です。

【5】株式会社を設立する新設分割が可能(技術研究組合法118Ⅰ)

【6】会社法の施行に伴う関係法律等に関する法律37条。もっとも有限会社を株式会社に商号変更(整備法45)した後であれば、承継会社となることはできる。

【7】平成18年以降、新たに有限会社を設立することはできなくなりました。

新設分割の流れ


分割会社 新設会社 注意点

①キックオフミーティング 

 

新設分割計画のアウトライン確認

労働者の確認【1】

債権者の確認【2】

許認可の確認

②ミーティング

 

新設分割計画(会763)の確定

スケジュールの確定

③取締役会

 

新設分割計画の承認

株主総会の招集決定

④事前備置開始

 

新設分割計画書など

会社法803・会社法施行規則205

⑤官報公告申し込み

(定款所定公告申し込み)

 

ダブル公告の場合は、定款所定公告も申込み

⑥労働者・労組への通知  

会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律【1】

⑦官報公告が掲載

(定款所定公告が掲載)

   
⑧債権者への個別催告    

⑨株主総会招集通知

反対株主等への通知

   
⑩株主総会   新設分割計画の承認

⑪債権者保護手続の完了

  ⑦⑧から1か月後

⑫会社分割による変更登記申請

(債務免責登記申請〔会22Ⅱ〕)

設立登記申請

新設会社の誕生日になります。

手続⑩⑪から2週間以内

⑬分割に関する書面の備置き【3】

分割に関する書面の備え置き

【3】

 

【1】労働者の確認

会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)、同施行規則による手続も必要です。必要に応じて社会保険労務士に協力してもらいます。

【2】債権者保護手続、詐害的会社分割における債権者保護については、こちら「会社分割における債権者保護手続(とその省略)」をご参照ください。

【3】事後備置すべき書類と期間は次のとおりです。 

分割会社 新設分割設立会社
  • 備置期間:新設分割設立会社の成立の日から6か月間(会811Ⅱ)
  • 備置場所:本店のみ。支店不要(会811Ⅱ)
  • 備置期間:新設分割設立会社の成立の日から6か月間(会815Ⅲ)
  • 備置場所:本店のみ。支店不要(会815Ⅲ)
  1. 新設分割の効力発生日
  2. 分割会社株主による分割差止請求の経過
  3. 分割会社における反対株主の株式買取請求、新株予約権買取請求、債権者異議手続の経過
  4. 新設分割により新設分割設立会社が新設分割会社から承継した重要な権利義務に関する事項
  5. その他新設分割に関する重要な事項

(会811Ⅱ→会811Ⅰ①→施行規則209)

 

  1. 新設分割の効力発生日
  2. 分割会社株主による分割差止請求の経過
  3. 分割会社における反対株主の株式買取請求、新株予約権買取請求、債権者異議手続の経過
  4. 新設分割により新設分割設立会社が新設分割会社から承継した重要な権利義務に関する事項
  5. 新設分割に関する重要な事項

(会815Ⅲ②→会811Ⅰ①→施行規則209)

※ 施行規則212は、分割会社が合同会社のとき

司法書士の報酬・費用


    司法書士報酬 実費

会社登記 550,000円(税込)~

❶吸収分割契約書・貼用印紙:4万円/通

❷吸収分割承継会社の変更登記:増加資本金額の7/1000

(計算した税額が3万円未満なら3万円)

❸吸収分割会社の変更登記:3万円(ツ)

❹債権者保護手続費用:公告費用+個別催告費用

不動産登記 55,000円(税込)~ 固定資産税評価額の20/1000
その他

税理士・公認会計士・社会保険労務士・行政書士の費用が発生することがあります。これら専門家費用も含めた総合見積を作成します。

会社登記 550,000円(税込)~

❶新設分割計画書・貼用印紙:4万円/通

❷新設会社の定款・貼用印紙:不要【1】

❸新設分割設立会社の設立登記:資本金額の7/1000

(計算した税額が3万円未満なら3万円)

❹新設分割会社の変更登記:3万円(ツ)

❺債権者保護手続費用:公告費用+個別催告費用

不動産登記 55,000円(税込)~ 固定資産税評価額の20/1000
その他

税理士・公認会計士・社会保険労務士・行政書士の費用が発生することがあります。

これら専門家費用も含めた総合見積を作成します。

【1】株式会社及び相互会社の定款については、公証人の認証を要することとされており、公証人の認証を受けることがその効力発生の要件になっています。したがって、これらの会社等の定款であっても、公証人の認証を受けていないものは印紙税法上の定款には該当しません(課税される定款の範囲/国税庁HP/https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/24/01.htm/最終アクセス231211)。

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