電子契約によるリスクと改善策~電子契約法関連


最近たびたびニュースになることのある電子契約や電子署名。

司法書士は、登記申請、定款認証や見積書・領収書の発行などで日常的に電子署名を利用しています。

ここでは、電子契約の有効性とリスクについて、ご説明します。

 

※電子契約と同種のものに電子消費者契約がありますが、電子契約とは異なるものです。

電子消費者契約についてはコチラをご覧ください。

もくじ
  1. 電子契約とは?
  2. 電子契約のメリット
  3. 電子署名とは?
  4. 電子契約締結方法ごとのリスクと改善策
  5. 人気の関連ページ

電子契約とは?


電子契約とは、作成した契約書をプリントアウトすることなく、PDFファイル化し、それに当事者が電子署名をしたものをいいます。

電子契約のメリット


電子契約には、次のようなメリットがあります。

印紙が不要

無理なら契約書は複数ではなく、1通のみ作成する。

なお、電子「領収書」も、印紙が不要です。電子領収書は、クラウド会計との親和性も高いそうですので、ご利用をオススメします。司法書士の領収書も、紙又は電子領収書どちらでも発行することが可能です。

契約締結までの時間・手間を大幅に短縮

紙契約書と電子を比較します。

電子契約では、印刷、製本、印紙購入、経理処理、印紙貼付、書類送付書作成、切手購入、経理処理、宛名書、封入、発送、郵便局による配送、開封、ファイリング、保管などの時間を節約できます。

紙の契約書 電子契約書

契約内容の打ち合わせ完了

印刷・製本

印紙貼付(印紙購入・経理処理の時間も)

押印

発送

(書類送付書作成・切手購入・宛名書き・封入などの時間も)

郵便局による配送時間

相手方:受領、開封&内容チェック

相手方:押印

相手方:一部返送

受領&押印チェック

保管(ファイリング・保管庫へ)

契約内容の打ち合わせ完了

電子署名

メール添付

相手方:受信&内容チェック

相手方:電子署名

相手方:メール添付して返信

受領&電子署名チェック

保管

圧倒的に作業量・時間が節約できることが、お分かりいただけると思います。

保管場所が不要

後日の検索が容易

電子署名とは?


電子署名とは、認証局(法務局又は民間)が本人確認のうえ、発行した電子署名をPDFファイルになっている契約書に添付する形式のものです。さらに詳しくいうと、電子署名として、①本人しか知らない秘密鍵と、②本人のサインかどうかその有効性を検証するために公開される公開鍵が交付されます。 

2種類の電子署名

電子署名の方式としては、次の2種類があります。

  1. 契約当事者両方がサインする当事者署名方式
  2. 契約立会人(認証局)がサインする立会人署名方式

電子署名付与の流れ

電子署名を文書に付与する流れは、次のとおりです。

  1. 電子署名したいPDFファイルを開く。
  2. 署名する箇所を指定する。
  3. 秘密鍵を使用して電子署名をするプログラムにかける
  4. PDFに電子署名が付与されます。

電子署名の有効性確認

電子署名が付与されたPDFファイルを受け取った方は

  1. 公開鍵を使用して
  2. プログラムにかけることによって
  3. 署名が有効になされたものか検証することができます。

こう書くとややこしそうですが・・・

メールに添付されたPDFをクリックすれば本人確認済みの署名者が表示されます。

さらに「有効性を検証」などと表示されたボタンをクリックすると、有効か否か表示されます。

受領者側には何らのソフトを要しません。

よくある勘違い

電子署名は、法人が法務局に提出しているリアル実印を撮影やスキャンしたjpgデータなどをPDFファイルに添付するものではありませんので、ご注意ください。

電子署名を文書に行うためには、あらかじめ認証局に本人確認を済ませて電子署名の発行をしてもらう必要があります。

また電子署名が施された電子文書は印刷してしまうと、文書の真正が確認できません。データ上で確認するものだからです。

電子契約締結方法ごとのリスクと改善策


双方が電子署名した電子契約(当事者署名方式)

契約当事者双方が電子署名を登録している必要があります(当事者署名方式)。

契約立会人が電子署名する電子契約(立会人署名方式)

電子契約を締結するためには、契約当事者全員が電子署名をする必要があります。ところが電子署名を保有している個人・法人は多くありません。そこで、契約立会人が署名する方式が開発されました(立会人署名方式)。

令和2年9月4日付総務省・法務省・経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A (電子署名法第3条関係)」により、電子署名法3条の解釈が変更され、契約当事者双方が電子署名を行わず、電子契約サービス事業者のみが電子署名した電子文書の場合であっても、要件を充たしていれば、その電子文書は「真正に成立した」ものと推定されることとなりました。

電子署名及び認証業務に関する法律第3条

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

<リスク>

民間の認証局(立会人)も契約当事者の本人確認を行いますが、民間認証局の本人確認はメールアドレスなどに頼っており、なりすましも可能です。

新しく認められた立会人署名形式が裁判上も有効なものかは、今後の裁判例の蓄積によります。

<改善策>

運用や裁判例が安定するまでは、紙の文書で契約を取り交わすか、当事者署名形式によるべきです。

一方が電子署名したものを他方にメールし、他方がプリントアウトしたうえ署名押印する契約書

両当事者が電子署名された電子文書と、プリントアウトし押印したものの両方を保管する必要があります。また、電子署名された文書も印刷されると改ざんされるリスクが発生します。 

<リスク>

プリントアウトしたものが契約書の原本になりますので、印紙貼付する必要が生じます。

後日争いになったときには、電子署名した方が真意に基づき電子署名したことを証明する必要がありますので、電子署名した時点の電子文書も保管しておく必要が生じます。

<改善策>

かような中途半端なことをするよりは、契約立会人形式の電子文書を作成するか、紙の契約書を締結されるべきです。

一方が署名押印したものを他方にメールし、他方がそれに電子署名した契約書

<リスク>

署名押印された文書も、電子署名のためにPDF化される経緯で改ざんされるリスクが発生します。

署名押印された紙の文書も保管しておく必要が生じます。

<改善策>

かような中途半端なことをするよりは、契約立会人形式の電子文書を作成するか、紙の契約書を締結されるべきです。

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