離婚・死別による婚姻関係の終了が「配偶者親族との関係」や「氏」に与える影響


婚姻関係は、離婚または死別により消滅します。

  1. 婚姻関係が終了した場合、元配偶者の親族(姻族)との法律関係、氏はどう変動するのでしょうか?!
  2. また、後日、姻族との法律関係や、氏を変更しようとしたときは可能でしょうか?

まとめましたので、ご参照ください。

「離婚or死別」×「姻族関係or氏」の関係一覧表


    姻族関係(配偶者の親族との関係) 婚姻によって氏を変えた配偶者の氏

離婚
  • 当然に終了する(民728Ⅰ)。
  • 当然に婚姻前の氏に復する(民767Ⅰ)。
  • 離婚日から3か月以内に届け出ることにより婚氏続称できる(民767Ⅱ)。
  • 婚姻による改氏をした者が、祭祀承継した後、離婚したときは、新たな祭祀承継者を決めなければならない(民769Ⅰ)。
死別
  • 継続する。
  • 生存配偶者が「姻族関係終了の意思表示」をすると消滅する(民728Ⅱ)。
  • 何もしなければ婚氏のまま
  • いつでも婚姻前の氏に復することができる(民751Ⅰ)。
  • 「姻族関係終了の意思表示」をするときは、新たな祭祀承継者を決めなければならない(民751Ⅱ→769)。
  • 「復氏」をするときは、新たな祭祀承継者を決めなければならない(民751Ⅱ→769)。

離婚の場合:姻族関係が当然終了し、氏も原則戻る。

死別の場合:姻族関係は終了せず、氏もそのまま。

これら法律の規定は、人情にも叶っていると思います。

 

もっとも・・・

祭祀承継者を決定しなければならない。

ことを、忘れないよう注意が必要です。

婚氏続称の届出


離婚しても結婚していたときの姓(氏)を名乗り続けたいときの届出(戸籍法77条の2)

届出先

ご本人の本籍地又は所在地を管轄する市区町村役場で行います(戸籍法25)。

提出期限

離婚の日から3か月以内(民法767)。

効果

  • 婚姻によって氏を改めた者が、離婚によつて、婚姻前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する(戸籍法19Ⅰ)。
  • 民法第767条第2項の規定によつて離婚の際に称していた氏を称する旨の届出があつた場合において、その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編製されていないとき、又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る者が他にあるときは、その届出をした者について新戸籍を編製する(戸籍法19Ⅲ)。
  • 同じ戸籍にいる子どもには、復氏届の効力は及ばず、子の氏の変更許可申立を裁判所に申立てする必要があります。

復氏(ふくし)の届出


戸籍法95条

届出先

ご本人の本籍地又は所在地を管轄する市区町村役場で行います(戸籍法25)。

提出期限

期限はありません。

配偶者と死別した配偶者は、いつでも復氏届を提出できます。

効果

  • 婚姻によって氏を改めた者は、婚姻前の氏に戻ります。ただし、婚姻(または養子縁組)によって氏を改めた者の実方の氏が、その後、戸籍法107条1項(やむを得ない事由+家裁の許可による氏の変更)の規定によって変更されているときに、生存配偶者が復氏を望む場合、復氏すべき氏は、変更前の氏となるか変更後の氏となるかが問題となります。戸籍先例は、変更後の氏になるとしています(昭和23・1・13民事甲17号通達記)。
  • 復氏した配偶者は、死別した配偶者との戸籍から抜けて、婚姻又は縁組前の戸籍に入ります。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製します(戸籍法19Ⅱ→同19Ⅰ)。
  • 同じ戸籍にいる子どもには、復氏届の効力は及ばず、子の氏の変更許可申立を裁判所に申立てする必要があります。
  • 配偶者の相続人という地位に変更ありません(相続権などに影響ありません。)。
  • 配偶者の親族(姻族)との法律関係に変更ありません。

デメリット

  • 「復氏」をするときは、新たな祭祀承継者を決めなければなりません(民751Ⅱ→769)。
  • 「氏」が変わることにより、財産(不動産、預貯金・証券などの金融資産)の名義変更手続が必要になります。
  • 「表札」も替える必要があります。
  • (必要に応じて)ご友人などに「氏」の変更を連絡します。

姻族関係終了の届出


戸籍法96条

届出先

ご本人の本籍地又は所在地を管轄する市区町村役場で行います(戸籍法25)。

提出期限

期限はありません。

配偶者と死別した配偶者は、いつでも復氏届を提出できます。

効果

  • 生存配偶者の戸籍に「姻族関係終了」と記載されます。
  • 生存配偶者は、死亡した配偶者の血族との姻族関係が終了します。
  • 生存配偶者は、死亡した配偶者に関する相続権を失いません。
  • 姻族に対する扶養義務はなくなります。
  • 直系姻族の間では、姻族関係が終了した後であっても婚姻はできません(民法735)。

姻族関係終了と復氏との関係


  • 「姻族関係」と「氏」とは直接関係がありません。
  • 姻族関係だけを終了させ、氏はそのままでも問題ありません。
  • 復氏だけして、姻族関係だけをそのままでも問題ありません。
  • 姻族関係終了と復氏の両方を行うことも可能で、2個の手続を完了した場合に、死別は、はじめて離婚とほとんど同様な結果となります。