株主総会の運営(招集通知発送時期、書面通知の要否、議案記載の要否、添付書類)


株主総会に関して必要な事務は膨大です。計算書類作成に始まり、監査役・取締役会への提出、株主総会招集、当日の運営、議事録作成と保管までの流れを分かりやすくフローチャートにしました。

また、会社や議題ごとに異なる①招集通知の要否、②招集通知発送時期、③書面通知の要否、④議案記載の要否、⑤添付書類などについても理解しやすいようにまとめています。

 

物言う株主の時代、株主総会を適法・適切に運営する必要があり、これらを間違えると最悪、株主総会決議取消の訴えの対象となりえます。一方、株主総会は段取りが8割です。準備さえしっかりしておけば、大抵なんとかすることができます。

もくじ
  1. 株主総会の流れと注意点
  2. 当グループの強み
  3. 所要時間
  4. 司法書士の報酬・費用
  5. Q&Aよくあるお問い合わせ
  6. 人気の関連ページ

株主総会の流れと注意点


一般的な定時株主総会の流れは、次のとおりです。

事業年度末日(決算日)=計算書類・事業報告など作成

計算書類、事業報告、これらの附属明細書を作成します(会社法435)

計算書類とその附属明細書は、税理士が作成してくれますが、通常は確定申告期限(決算から2か月以内)に間に合うよう作成なさいます。キッチリ法律どおりに手続を進める場合には決算から1か月程度で完成するようご依頼ください。

監査役に計算書類・事業報告などを提出

監査役設置会社では、監査役に計算書類・事業報告・これらの附属明細書を提出し、監査を受けなければなりません(会社法436Ⅰ)

会計監査人設置会社では、会計監査人にも計算書類を提出し、監査を受けます(会社法436Ⅱ)

監査役は、取締役に対して監査報告内容を通知

計算書類に対する監査について(会社計算規則124)

次に掲げる日のいずれか遅い日までに通知必要【通知期限】

イ 当該計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日

ロ 当該計算書類の附属明細書を受領した日から1週間を経過した日

ハ 特定取締役及び特定監査役が合意により定めた日があるときは、その日

 

事業報告に対する監査について(会社法施行規則132)

次に掲げる日のいずれか遅い日までに通知必要【通知期限】

一 事業報告を受領した日から4週間を経過した日

二 事業報告の附属明細書を受領した日から1週間を経過した日

三 特定取締役及び特定監査役の間で合意した日

取締役会における計算書類などの承認、株主総会招集の決定

  • 監査役の監査を受けた計算書類・事業報告・附属明細書の承認を行います(会社法436Ⅲ)。
  • 株主総会で審議すべき事項(議題・議案)を決定します。
  • 株主総会の招集(日時・場所・方法など)を決定します。

この取締役会(取締役会非設置会社においては取締役決定)なしに招集された株主総会の効力については、二つの重要な最高裁判例があります。

  • 取締役会の決議を経ることなく、代表取締役によって招集された株主総会は、総会決議取消事由となる(最高裁第一小法廷昭和46年3月18日判決(昭44(オ)89号株主総会決議無効確認請求事件))
  • 取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によって招集された株主総会は、無効(最高裁第一小法廷昭和45年8月20日判決(昭44(オ)276号株主総会決議不存在確認請求事件))。

株主総会招集通知の印刷用データ精査・校了

招集通知の精査につきましては、当グループにお任せください。

株主総会招集通知の印刷

株主総会招集通知の封入

株主総会招集通知の発送

招集手続が法令・定款に違反し、または著しく不公正な場合、決議取消訴訟の対象となります。

司法書士が、適法な招集通知を作成いたします。

発送の代行や、後日適法性の立証に使える発送結果報告書作成もお請けします。

招集通知の要否

原則 招集通知が必要
例外 株主全員の同意があるとき(会300)
例外の例外 株主総会に欠席する株主に対して、書面による議決権行使または電磁的方法による議決権行使を認めるとき→招集通知が必要

招集通知を発送する時期のまとめ(会社法299Ⅰ)

  非公開会社 公開会社
取締役会非設置会社 取締役会設置会社
書面やメールでの議決権行使を認めた場合 株主総会の日の2週間前まで 株主総会の日の2週間前まで
書面やメールでの議決権行使を認めない場合 株主総会の日の1週間前まで。定款で更に短縮可能。 株主総会の日の1週間前まで

招集通知を書面で送付する必要性のまとめ(会社法299Ⅱ)

  非公開会社 公開会社
取締役会非設置会社 取締役会設置会社
書面やメールでの議決権行使を認めた場合 書面で招集通知必要 書面で招集通知必要 書面で招集通知必要
書面やメールでの議決権行使を認めない場合 電話や口頭でも可能

「議案の概要」記載の要否(会社法298Ⅰ➄、会社法施行規則63⑦)

全ての会社において、総会で下記議題を決議するときは「議案の概要」を記載する必要があります。
  1. 役員等の選任
  2. 役員等の報酬等
  3. 全部取得条項付種類株式の取得
  4. 株式の併合
  5. 会社法第199条第3項又は第200条第2項に規定する場合における募集株式を引き受ける者の募集
  6. 会社法第238条第3項各号又は第239条第2項各号に掲げる場合における募集新株予約権を引き受ける者の募集
  7. 事業譲渡等
  8. 定款の変更
  9. 合併
  10. 吸収分割
  11. 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
  12. 新設分割
  13. 株式交換
  14. 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
  15. 株式移転
  16. 株式交付

その他注意すべき事項まとめ

取締役会設置会社   定時総会招集通知には事業報告・計算書類(・監査報告又は会計監査報告)の添付必要(会社437)

書面やメールでの議決権行使を認めた場合

(会社301.302)

招集通知には、次の書類も添付を要する。

  • 議決権行使の参考書類
  • 議決権行使書面

議決権を有する株主が1000人以上いる株主総会(会社298Ⅱ→書面による議決権行使採用義務)

委任状集め

株主から、定足数や議決権を満たすのに必要な数の委任状を集めていきます。

株主総会予行演習

当グループ司法書士が、意地悪な株主役をつとめます。

もちろん、当日、議長をフォローする事務局も本番さながらに司法書士がつとめます。

議事進行をスムーズに行なうための「総会シナリオ」、株主からの質疑に的確に応答するための「想定問答集」もお渡しいたしますので、大丈夫です。

(取締役会設置会社)議決権不統一行使の通知期限(総会3日前)

取締役会設置会社で議決権を不統一行使する者は、総会日の3日前までに、その旨および不統一行使の理由を通知しなければなりません(会313Ⅱ)

会社は、株主が他人のために株式を有する者でないときは、不統一行使を拒むことができます(会313Ⅲ)。他人のために株式を有する者とは、信託の受託者、機関投資家のために株式を保有している信託銀行、株式の共有者(会106)です。

株主総会(当日:受付事務)

受付事務を司法書士が担当し、委任状を提出した株主が出席していないかなどをチェックします。

株主総会(当日:総会事務局)

当日の議長による株主総会のススメ方については、別記事でご紹介予定です。

司法書士が総会事務局として、議長の後ろに控え、株主様のご質問に対する想定問答集の対応ページをご指摘するなど、議長と役員の皆様をしっかりフォローします。

株主総会など議事録作成・調印

登記申請

株主総会で承認された議案について、登記が必要な場合、総会から2週間以内で申請します。

ご報告

司法書士が、株主総会招集を決定した取締役会議事録、株主総会招集通知発送結果報告書、株主総会議事録、登記事項証明書をお引渡しして、ご報告いたします。

当グループの強み


総会立会い経験20年以上の実績

総会への立会いは実績が全て。実績があれば、予想外のことを株主から質問されて総会当日に慌てる可能性も低くなります。



招集通知の起案、発送代行

招集手続の瑕疵を撲滅するため、司法書士が招集通知の起案、発送代行を行ないます。発送報告書も作成し、お渡ししますので、万一、決議取消訴訟などが提起されても法令・定款に沿った招集通知だったと簡単に立証できます。



総会シナリオの作り込み

総会をスムーズに進行させる総会シナリオも完璧。

これまでの実績に基づき作成したフォーマットに、貴社独自の論点を盛り込み完璧に作り込みます。



貴社のためにカスタマイズする想定問答集

株主様からの質問に対して、回答するためには必須の想定問答集も、貴社のお話しをジックリうかがって作り込みます。



株主様からの想定外の質問・動議にも事務局としてシッカリ対応

万一、シナリオ・想定問答集で対応出来ないときにも、事務局として議長席の後ろに控える司法書士がその場で模範解答を作成し、議長にお渡しします。



株主総会運営のご用命は、是非あなたのまちの司法書士事務所グループにお任せください。

私たちが、株主総会も、その後もお役に立ちます。

標準的な所要時間


官報公告など特別な手続を要する場合以外は、概ね次のとおりです。

業務内容 所要時間
初回の打合わせ~登記完了 2か月程度

特急料金加算(5割増し)をいただくことで、納期を短縮できる場合もございます。

司法書士の報酬・費用


顧問契約を締結いただいている場合、割引きがございます。

業務の種類

司法書士の報酬【1】

実費

招集通知原案作成

招集通知発送代行

発送報告書

33,000円(税込)/議案

+株主数×1,100円(税込)

株主数×特定記録郵便費用
株主総会シナリオ作成 55,000円(税込)~  
株主総会想定問答集作成 55,000円(税込)~  
株主総会予行演習 55,000円(税込)~  
株主総会受付事務 11,000円(税込)~  
株主総会立会い(総会事務局担当) 110,000円(税込)~  
株主総会議事録作成 11,000円(税込)~ 【2】
取締役会議事録作成 11,000円(税込)~  
登記申請 コチラをご覧ください。  
日当【3】 11,000円(税込)~  

【1】司法書士報酬は、議案の種類・数、株主の数により加算いたします。

【2】株主から提訴を受ける可能性が高い場合や、録音反訳を要するような長時間にわたる株主総会の場合には、反訳会社に反訳文を外注しますので、実費をご負担ください。

【3】上記業務を事務所外で行なう場合で、移動時間が片道1時間を超える場合

Q&A よくあるお問い合わせ

株主総会について


Q.きっちり法律にのっとって株主総会を開催していないリスクについて教えてください。

次のとおりです。法律・定款にのっとった株主総会をキッチリ開催することが大切です。

特に、敵対的な株主がいる場合には、当事務所グループでは、招集通知の発送代行や、株主総会への立会いを通じてこれらのリスクを軽減します。

(平成29年11月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)

 

法律・定款違反の内容 リスク 当グループのリスク対策サービス
招集手続が法律・定款違反・著しく不公正 株主総会決議取消の訴え(会社831)の対象となりうる 招集通知の発送代行
決議方法が法律・定款違反・著しく不公正

株主総会シナリオ・想定問答集作成

株主総会立会い

決議内容が定款違反
利害関係人の議決権行使により、著しく不当な決議がされた
決議内容が法律違反 株主総会決議無効確認の訴え(会830)の対象
株主総会を開催していない 株主総会決議不存在確認の訴え(会830)の対象

Q.株主総会招集通知の発送時期、期間計算の方法について教えてください。

次のとおりです。(平成31年4月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)

会社の形態 招集通知を発する時期
公開会社(当然に取締役会設置会社(会327)) 株主総会の日の2週間前までに【1】

書面投票ま

たは電子投

票の制度を

不採用

取締役会設置会社 株主総会の日の1週間前までに【1】

非取締役会設置会

株主総会の日の1週間前までに

(定款で上記の期間短縮可能)

書面投票または電子投票の制度

を採用

株主総会の日の2週間前までに

(表は、「新版商業登記申請MEMO・新日本法規・青山修著」より)

※ 発送日と株主総会の日を参入せず、間にきっちりと7日・14日空ける。

 例) 発送日(4/1)←←14日→→株主総会日(4/16)

※ 到達を要さず。

※ 上記期間内に休日・祝日が含まれていても、関係ない模様(民法142条は無関係模様。)。

【1】取締役会設置会社の場合、株主総会の日の8週間前の日が経過した後発送する。それ以前に招集通知を発送し、その後、株主提案がなされると、再度招集通知を発送しなければならないため(会社法303)。


Q.議題と議案の違いを教えてください。

議題は話し合うタイトル、議案は承認してもらいたい内容です。「取締役選任の件」が議題で、「取締役として佐藤大輔を選任したい」は議案です。

(平成29年11月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)


Q.株主総会における動議や株主提案権について教えてください。

動議には二種類あります。修正動議(実質的動議)と、手続的動議です。

修正動議は、既に提出されている「議題」と同一性のある範囲内で提出がなされるもので、原案との同一性の範囲を超えては提出が認められません。 株主提案権にも二種類あります。議題提案権と議案提案権です。

そして、動議のうちの実質的動議(修正動議)と株主提案権のうちの議案提案権は、同じです。図にすると次のようになります。

また、株主提案権の実行性を担保するために「議案の要領通知請求権」も用意されています。株主が提案する議案を他の株主にも通知するよう会社に請求する権利です。

(平成29年11月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)

 

種類と名称   動議

実質的動議

修正動議

手続的動議

株主提案権

 
議題提出権

議案提出権

根拠規定 会社法303 会社法304

総会調査者選任請求(会社法316)、総会の延期続行(会317)など

内容

「議題」そのものを株主がイニシアティブをもって提出できる権利

既に提出されている「議案」と同一性のある範囲内で提出できる権利

法律の規定等によって「議題」を提出できる権利

行使権者 公開会社

100分の1又は300個以上の議決権

+6か月以上保有

一株持っていれば行使できる 一株持っていれば行使できる
非公開会社 取締役会あり 100分の1又は300個以上の議決権
取締役会なし 一株持っていれば行使できる
行使方法 取締役会あり 株主総会日の8週間前までに 一株持っていれば行使できる 株主総会の場で行使すればよい
取締役会なし 制限なし

Q.株主総会で議決権を行使できない場合について教えてください。

次の5通りです。

❶1単元未満の株式

会社は一定数の株式数をまとめて1単元とする旨を定款で定めることができます(会社法188)。1単元は売買の単位であると同時に、株主総会において議決権行使できる最少数です。

❷自己株式(金庫株、会社法308)

会社が自分で保有している自社株式は、株主総会で議決権行使することができません。取締役による恣意的な議決権行使を防止するためです。

❸相互保有株式(子会社が保有する親会社株式など。会社法308)

A社がB社の議決権の4分の1以上の株式を保有している場合、B社はB社の保有するA社の株式について議決権を有しません。

なお、子会社による親会社株式の取得は、原則として禁止されており、例外規定【1】に該当しない限り、法令違反(会社135Ⅰ)であり、取得は私法上無効になります。

❹議決権制限株式(会社法108Ⅰ③)

種類株式の一種

❺自己株式取得決議において取得対象とされた株式の株主(会社法140Ⅲ、160Ⅳ、175Ⅱ)

 

【1】例外として、子会社による親会社取得が認められるのは下記5パターンのみです。また、取得してしまったときには、相当な時期に処分しなければなりません。

一 他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社の有する親会社株式を譲り受ける場合

二 合併後消滅する会社から親会社株式を承継する場合

三 吸収分割により他の会社から親会社株式を承継する場合

四 新設分割により他の会社から親会社株式を承継する場合

五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める場合

(令和元年年9月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)


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