見せ金とは、他人からの借入金を会社に払い込んで出資を装い(資本金のように見せかけて)、直後に会社から受け取って、借入金を返済する行為です。

このような方法では、会社にはお金(資本金)が残らないため、資本充実の原則に反し、判例上は払込みは無効とされます。

関与した発起人や取締役は、会社への支払義務や損害賠償責任を負うほか、公正証書原本不実記載罪などの刑事罰に問われるリスクがあります。

この記事では「見せ金」について解説しています。

もくじ

  1. 見せ金とは
  2. 見せ金が禁止される理由
  3. 見せ金を実行した場合の責任と制裁(ペナルティ)
    1. 民事上の責任
    2. 刑事上の責任
  4. 見せ金の定義(最判昭和38年12月6日)
  5. 見せ金を疑われないために、すべきこと

「見せ金」とは


「見せ金」とは、発起人や取締役が、払込取扱機関以外の第三者から借金をして株式の払込みに充て、会社設立後または募集株式発行の効力発生後に、その払込金を引き出して借入先に返済する行為をいいます。

例えば、次のような例です。

  1. 発起人Aが、第三者Bから100万円を借りる
  2. 発起人Aが、第三者Bから借りたお金100万円を出資金として会社に払い込む。
  3. 発起人Aが、会社を設立する。
  4. 発起人Aが、会社からすぐ100万円を引き出して、第三者Bへ返済する。
  5. 結果、会社には本来あるはずの100万円が無い状態になる。

出資義務を履行したように見せかける(仮装する)ので「出資履行の仮装」といわれます。

見せ金とよく似た違法行為に「預合い(あずけあい)」があります。

「見せ金」と「預合い(あずけあい)」との違い

出資履行の仮装

(会社法52-2)

預合い
  • 払込取扱銀行との通謀があり、実際には金銭の移動がない。
  • 実行した場合、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。預合いに応じた者も、同様とする(会社法965)。
見せ金
  • 実際に金銭の移動はあるが、払込取扱銀行との通謀はない。
  • 会社法には明文規定なし。
  • 実行した場合、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(刑法157)

見せ金が禁止される理由


『見せ金』が禁止されている背景には、見せ金には、株式会社制度の根幹に関わる問題があるからです。

  • 資本充実の原則への違反: 形式上の払込みはあっても、実質的に会社の財産が確保されず、資本金が増加せず、倒産リスクも上がることになります。そして、会社が倒産すると、取引先、債権者、投資家、従業員など全員が困るためです。
  • 利害関係者の保護: 資本金の額が大きい会社であれば、小さい会社よりも信用してしまいますよね。見せ金は、会社の資本金の額を信用して取引を行う取引先、債権者、投資家などの信頼を裏切る行為であるため禁止されています。
  • 規制の潜脱: 「見せ金」は、「預合い(会社法965)」に対する厳しい規制を回避する目的で行われることが多いため、預合い同様に禁止し、実行した者を厳しく処罰しています。

見せ金を実行した場合の責任と制裁(ペナルティ)


見せ金を実行した者には、とても大きい責任と制裁が待っています。

出資履行を仮装した場合の民事上の責任

責任区分 概要 根拠規定
払込みの無効 見せ金による払込みは、実質的に払込みがあったとはいえず、法的に無効(始めから効力がない)とされます。 後掲最判昭和38年12月6日
支払義務 出資の履行を仮装した発起人、株式引受人、および関与した取締役等は、会社に対して仮装した払込金額の全額を支払う義務を負います。 会社法52条の2、213条の2、213条の3
会社設立無効 払込みの瑕疵として、会社設立無効の原因となる可能性があります 会社法828条1項1号
損害賠償責任 関与した取締役は、会社に対する損害賠償責任を負う可能性があります 会社法423条
会社法第52条の2(出資の履行を仮装した場合の責任等)
 
  1. 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。
    一 第34条第1項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
    二 第34条第1項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)
  2. 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
  3. 発起人が第1項各号に規定する支払をする義務を負う場合において、前項に規定する者が同項の義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
  4. 発起人は、第1項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第二項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した設立時発行株式について、設立時株主(第65条第1項に規定する設立時株主をいう。次項において同じ。)及び株主の権利を行使することができない。
  5. 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。

上に抜粋しました会社法第52条の2第4項を図示すると、

次のような形になり、とても権利関係が複雑になります。

銀行 →貸金返還請求→

発起人

・株主

→×株主権行使出来ない→ 会社   関与役員
  ←出資請求権← →出資請求権→

出資履行を仮装した場合の刑事上の責任

見せ金は刑法犯にも該当します。つまり、逮捕して取り調べを受ける可能性があるということです。

公正証書原本不実記載等罪(刑法157条)
 
  1. 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
  2. (以下略)

 

見せ金が、公正証書原本不実記載等罪に該当することは、最高裁判例で確定しています。

最判昭和41年10月11日刑集20巻8号817頁
  会社の設立又は増資に際し、株金の払込が仮装のものであるにかかわらずこれを秘し、その株式引受人による払込が完了し、設立又は増資をした旨の登記申請をなし、商業登記簿の原本にその記載をなさしめたときは、商法一八八条二項五号「発行済株式ノ総数」に関し、公正証書原本不実記載罪が成立する。
最判平成17年12月13日刑集59巻10号1938頁
 

◆甲社の増資の際、新株の引受人である乙社において甲社から第三者を通じて間接的に融資を受けた資金によって行った新株の払込みが無効であるとして、商業登記簿の原本である電磁的記録に増資の記載をさせた行為について電磁的公正証書原本不実記録罪の成立が認められた事例

◆新株の引受人が会社から第三者を通じて間接的に融資を受けた資金によってした新株の払込みが無効であるとして商業登記簿の原本である電磁的記録に増資の記録をさせた行為につき電磁的公正証書原本不実記録罪の成立が認められた事例

(上記要約は、Westlaw Japanによる。)

例えば「会社には資金が豊富にあるから、代表取締役が会社から資金を借り入れて、それを会社に出資する」という行為が、見せ金に該当します。この方法では、会社の資金は全く増えないからです。

見せ金の定義(最判昭和38年12月6日)


「見せ金」をハッキリと定義した条文はありません。

しかし、次の判例が、重要な判断基準を示しています。

最判昭和38年12月6日民集17巻12号1633頁
  当初から真実の株式の払込として会社資金を確保するの意図なく、一時的借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済する場合の如きは、右会社の営業資金はなんら確保されたことにはならないのであつて、かかる払込は、単に外見上株式払込の形式こそ備えているが、実質的には到底払込があつたものとは解し得ず、払込としての効力を有しないものといわなければならない。

判例を分解すると、次のような事情を加味して判断していることが分かります。

  1. 会社成立後、借入金を返済するまでの期間の長短:どの程度長期であれば大丈夫か不明。
  2. 払込金が会社資金として運用された事実の有無
  3. 借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無:発起人・株主の個人の収入で返済ができれば、会社の資金に影響を及ぼしません。

 

まとめ

次の二つのことがいえます。

  1. 借入金を出資せず、自己資金を出資すれば大丈夫。
  2. 借入金を出資したとしても、長期返済であれば、大丈夫かもしれない(どの程度長期であれば大丈夫なのかは、分からない。)。

歯切れが悪くて申し訳ありませんが、君子危うきに近寄らずともいいます。

見せ金はペナルティが大きすぎますので、できるだけ自己資金を出資してください。

見せ金を疑われないためにすべきこと


「見せ金」は、民事上の責任を負うだけでなく、刑事上の責任も負う可能性があることは、すでにご説明しました。逮捕して取り調べを受けたくないのであれば、「見せ金」に該当しないスレスレを行くのではなく、絶対に「見せ金」に該当しない(疑われもしない)ように、出資金を払い込む必要があります。

次のような方法がありますので、しっかりと司法書士に相談しましょう。

 

金融機関からの融資以外での会社設立や増資を考える。

代表者個人が、金融機関から融資を受けて、そのお金を出資しようと考えているときには、注意が必要です。上記判例のとおり、見せ金に該当しないようにするためには「長期返済」「会社資金として運用」「返済が会社資金に影響を及ぼさない(代表取締役の役員報酬の範囲内で返済できる)」ことなどが必要です。

個人である発起人や社長が、金融機関からの融資を受けて、出資するとこのようなリスクを負うことがあります。避けた方が無難でしょう。

もっとも、親子関係にある会社の親会社が、金融機関からの融資を受けて、子会社に出資(増資)するということは、割とよくあることです。この場合でも、見せ金に該当しないようにする必要があります。

親族から借りて設立しようと考えていたのなら、借りるのではなく、貰えないか交渉する。

貰えることになったとしても・・・年間非課税枠110万円を超える場合には、贈与税の申告が必要になります。

親族から貰うのも無理なら、出資してくれないか、交渉する。

親からお金を借りるのではなく、(返済する義務のない)出資にしてもらえるように「創業の想い」を熱く語って、説得しましょう。

ただし、出資となるとその親族が株主になるということであり、経営に口を出される可能性があります。

小さくはじめて、投資家から資金調達する。

設立しようとしている会社がスタートアップ企業に該当するのであれば、小さく始めて、投資家からの資金調達を検討するのもありです。

記事「スタートアップ(ベンチャー)支援/株式上場(IPO)支援」を参照ください。

クラウドファンディングで出資を募る。

 クラウドファンディングには、様々なタイプがあり、タイプごとの注意が必要です。

  • 「貸付型」は、借金ですので資本金ではなく「負債」となります。
  • 「ファンド型」と「株式型」は新株発行となりますので、「資本金」にすることができます。
  • 「寄付型」は、寄付金として「売上」になり、資本金とはなりません。
  • 「購入型」は、最終的にサービスや商品を提供することになりますので「売上」になり、資本金とはなりません。

この他、クラウドファンディグには、金融商品取引法などの規制もあります。

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