会社破産(一般管財・個別管財)の基準/個人事業主破産(同時廃止・管財)の基準/予納金の目安@神戸地方裁判所


破産するのにもお金が必要なのは分かったけれど、具体的にはどれだけ掛かるのでしょうか?

 

破産手続には、種類があります。

大規模な会社や、債権者が多い場合などには、複雑な申立になりますし、申立後の手続きも複雑になります。そして、複雑になるということは、費用も高額になることを意味します。

少しでも単純な軽い手続きにして、費用を抑えることも大切です。

 

以下ご説明するのは、いずれも神戸地裁基準です。裁判所によって異なりますのでご注意ください。

もくじ
  1. 破産に必要なお金の種類
  2. 破産手続の種類と予納金
  3. 会社法人の破産手続(一般管財・個別管財)の基準(神戸地方裁判所)
  4. 個人事業主の破産手続(同時廃止・管財)の基準(神戸地方裁判所)
  5. 司法書士の報酬・費用

破産に必要なお金の種類


  費用の名前 意味
「申立書を作成する司法書士報酬」又は「申立する弁護士報酬」

申立書を作成し申立をすることに対する報酬です。

数十万円~です。

申立までの実費 債権者などへの連絡に使う切手代など。数千円です。
(申立書貼用)印紙 申立書には収入印紙を貼り付けます。千円ちょっとです。
裁判所予納金 裁判所が官報公告をするための費用です。2万円弱です。
予納郵券

裁判所が債権者に対して連絡をするために使う切手代です。

数千円です。

管財事件の場合、次の費用も必要。

破産管財人の引継予納金

管財事件の場合、破産管財人をつとめる弁護士の報酬として支払う金額です。管財人が使う切手代も含まれています。

数十万円~数百万円です。

管財事件なら❶~❻の費用がすべて必要ですが、

管財事件にならなければ(同時廃止事件になれば)、❶~❺の費用のみ(管財人引継予納金が不要)になります。

管財事件になるか否か(破産事件の種類)によって、費用が全く異なるのです。

 

つまり、ご自身(自社)が管財事件になる否かをあらかじめ予想しておけば、破産に必要な費用(絶対置いておかないといけない金額)も予想がつきます。

破産手続の種類と予納金


破産手続の種類によって、費用はどう変わってくるのか?!ご説明します。

破産法第216条

1.裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用【1】を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。

【1】破産手続の費用

破産手続は、申立人の財産を現金化して、債権者に配当する手続です。この申立人の財産を現金化する作業のために、裁判所は破産管財人という弁護士を選任します。この破産管財人の報酬のことを「破産手続の費用」といいます。破産管財人が手続をすすめるので【管財事件】と言います。

ただし、申立人の財産の額が、破産管財人の報酬を支払うのにも不足する場合には、裁判所は破産管財人を選任せずに、破産手続を終了させます。裁判所が破産宣告と同時に破産手続の廃止を宣言するので、【同時廃止事件】といいます。

管財事件と同時廃止事件との間にある財産規模の場合には、【少額管財事件】となります。

管財事件の方が、同時廃止事件よりも費用(申立書作成報酬、実費ともに)が高額です。

それなのに・・・

同時廃止と管財事件との線引きは法律には規定がありません。

そこで、裁判所ごとに決めています。

会社法人の破産手続選択基準(神戸地方裁判所)


法人には同時廃止はありません。

また、神戸地裁では、個人事業主も法人も「少額管財」という取扱いはありません。

必ず管財事件として申立をする必要があります。

次の基準で「一般管財」か「個別管財」か見極めて申し立てましょう。 

一般管財手続 < 個別管財手続 < 大規模管財手続

一般管財 個別管財
管財人引継予納金21万円【1】 管財人引継予納金70万円
個別管財のどの基準にも当てはまらない場合
  • 負債総額5000万円未満【2】
  • 債権者数が200人~500人程度までの場合
  • 訴訟、財産の換価などに半年以上かかると見込まれる場合

など

【1】明け渡し未了の事業用賃借不動産がある場合で、敷金や保証金が十分でない場合、明け渡し費用が追加で予納する必要があります。

【2】神戸地裁では負債総額だけでなく、換価すべき財産の有無などを総合的に考慮して引継予納金を決めています。

  負債総額 管財人引継予納金
一般管財   21万円
個別管財 ~5000万円まで 70万円
5000~1億円まで 100万円
1~5億円まで 200万円

個人事業主の基準(神戸地方裁判所)


神戸地裁では、「少額管財」という取扱いはありません。

管財として申し立てるか、同時廃止として申し立てる必要があります。

同時廃止として申し立てをしても、内容によっては管財事件にされてしまうこともあります。

同時廃止として申立できる基準

  左の財産の額
1.現金、普通預金(流動性預金) 50万円未満
2.定期預金(固定性預金) 20万円未満
3.換価可能財産 20万円未満
以上を含む積算合計額 100万円未満

【1】オーバーローン(不動産の価値<住宅ローン残高)の不動産をもっていても、同時廃止申立は可能です。オーバーローンの不動産は、住宅ローン債権者(抵当権者)が優先的に弁済を受ける権利を有しており、住宅ローン債権者による売却に任せれば良いからです。

かつ

財産隠し、偏頗弁済、免責不許可事由の疑い等の調査の必要性がないこと

かつ

個人事業主の場合には、

事業廃止から相当期間が経過していること

事業所の明け渡しが完了していること

なども必要です。

管財事件になった場合の管財人引継予納金の額は?!

個人事業主が管財事件となった場合の管財人引継予納金の金額は、最低でも20万円ほどです。

内容によって加算されます。

管財事件として申し立て、自由財産拡張申立をすれば、自由財産となる金額の目安

1.現金(普通預金は含まない) 99万円まで
2.家財道具一式  

3.差押禁止動産、差押禁止債権

(破産法34Ⅲ②、民事執行法131、同152、その他特別法上の差押禁止財産)

 

自由財産の拡張に関しては山中理司弁護士の『破産者が手元に残せる財産』が秀逸ですのでご参照ください。

司法書士の報酬・費用


費用は、分割払で結構です。

申立は、分割払い完了後になりますので、それまでの間に申立書類を作成します。

ご依頼と同時に、債権者への返済をストップいただきますが、司法書士からの受任通知によって取立は止まりますので安心ください。

そのほか、司法書士が資料を依頼してから提出いただくまでに3か月超を要した場合には、別途事務手数料上限5万5,000円(税込)を申し受けることがありますので、ご注意ください。。

業務内容

司法書士

報酬

実費

個人非事業者の

同時廃止申立

債権者への受任通知

債権者からの書類の取得

破産申立書の提出

裁判所からの追加指示への対応

275,000円

(税込)

申立印紙1,500円

裁判所提出予納金

1万5000円ほど【1】

その他郵券代【2】

実費計3万円ほど

個人非事業者の

管財申立

債権者への受任通知

債権者からの書類の取得

破産申立書の提出

裁判所からの追加指示への対応

破産管財人への引継ぎへの同行

破産管財人の追加指示への対応

330,000円

(税込)

申立印紙1,500円

裁判所提出予納金

1万5千円ほど【1】

その他郵券代【2】

管財人引継予納金

20万円~【3】

実費計25万円ほど~

個人事業主の

管財申立

債権者への受任通知

債権者からの書類の取得

破産申立書の提出

裁判所からの追加指示への対応

破産管財人への引継ぎへの同行

破産管財人の追加指示への対応

330,000円

(税込)

申立印紙1,500円

裁判所提出予納金

1万5千円ほど【1】

その他郵券代【2】

管財人引継予納金

20万円~【3】

実費計25万円ほど~

会社の一般管財申立

(代表者は申立せず)

【4】

債権者への受任通知

債権者からの書類の取得

破産申立書の提出

裁判所からの追加指示への対応

破産管財人への引継ぎへの同行

破産管財人の追加指示への対応

385,000円

(税込)

【会社管財申立】

申立印紙1,000円

裁判所提出予納金

1万5千円【1】

その他郵券0円【2】

管財人引継予納金

21万5000円~【3】

実費計25万円ほど~

 

会社の一般管財申立

(と同時申立の)

法人代表者管財申立

         

債権者への受任通知

債権者からの書類の取得

破産申立書の提出

裁判所からの追加指示への対応

破産管財人への引継ぎへの同行

破産管財人の追加指示への対応

440,000円

(税込)

【会社管財申立】

申立印紙1,000円

裁判所提出予納金15,000円【1】

その他郵券0円【2】

管財人引継予納金

4万5000円~【3】

 

【個人管財申立】

申立印紙1,500円

裁判所提出予納金

16,000円ほど【1】

その他郵券0円【2】

管財人引継予納金

20万5000円~【3】

 

実費計30万円ほど~

【1】裁判所提出予納金は、主に官報公告の費用です。

【2】郵券は、債権者などへの郵送費です。

管財事件で郵券の予納が必要ないとされているのは、郵便は基本的に管財人から行なうためです。

【3】管財人引継予納金は、主に管財人報酬(管財人が発送する郵券代が含まれます。)です。

【4】会社の破産申立をしても、社長個人の破産申立をしないで良い場合は次のとおりです。

  1. 社長が会社の借金の連帯保証人になっていない場合
  2. 会社が社長に貸し付けていない場合=社長が自社から借金をしていない場合

社長が会社の株主であっても関係ありません。

∵社長の株式が無価値になるだけだから。

社長が会社に貸付していても関係ありません。

∵社長の貸付金も返済されなくなるだけだから。

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