宗教法人が不動産を売却・処分する場合(宗教法人から不動産を購入する場合)


宗教法人が所有する財産を処分(売却・贈与・寄付)したり、担保に提供する場合には、宗教法人独自の規制があります。

もくじ
  1. 昭和26年4月3日以前から所有している不動産に必要な「権利承継の登記」
  2. 処分する財産の種類によって大きく異なる「手続違反の効果」
  3. 宗教法人の財産売却・処分の流れ
  4. 標準的な所要時間
  5. 司法書士の報酬・費用 

 

以下、単に「法」と記載しているときは、「宗教法人法」を意味します。

昭和26年4月3日以前から所有している不動産に必要な「権利承継の登記」


宗教法人法が昭和26年4月3日に施行され、それまでに成立していた(宗教法人令に基づいて設立された)旧宗教法人は解散し、新宗教法人に承継されています。

宗教法人が昭和26年4月3日以前から所有している不動産の場合には、宗教法人法附則第18条に基づき旧宗教法人から、新宗教法人への権利承継の登記をする必要があります。

宗教法人法附則
  2  宗教法人令(昭和二十年勅令第七百十九号)及び宗教法人令施行規則(昭和二十年司法、文部省令第一号)は、廃止する。

3  この法律施行の際現に存する宗教法人令の規定による宗教法人は、この法律施行後も、同令の規定による宗教法人として存続することができる。 

4  第二項に掲げる命令の規定は、前項の宗教法人(以下「旧宗教法人」という。)については、この法律施行後も、なおその効力を有する。この場合において、宗教法人令第五条第一項及び第十四条第一項中「命令」とあるのは、「法務省令、文部科学省令」とする。 

5  旧宗教法人は、この法律中の宗教法人の設立に関する規定(設立に関する罰則の規定を含む。)に従い、規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受け、設立の登記をすることに因つて、この法律の規定による宗教法人(以下「新宗教法人」という。)となることができる。 

6  二以上の旧宗教法人は、共同して、この法律中の宗教法人の設立に関する規定(設立に関する罰則の規定を含む。)に従い、規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受け、設立の登記をすることに因つて、一の新宗教法人となることができる。 

7~17 (略)  

18  旧宗教法人が第五項又は第六項の規定により新宗教法人となつたときは、その設立の登記をした日において、当該旧宗教法人は解散し、その権利義務(当該旧宗教法人が行う公益事業その他の事業に関し行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)は、新宗教法人が承継する。この場合においては、法人の解散及び清算に関する民法及び非訟事件手続法の規定は適用しない。 

19~25 (略)

 

この場合の登記申請書は次の内容になります。

登記の目的 所有権移転
登記原因 昭和年月日宗教法人法附則第18項による承継

処分する財産の種類によって大きく異なる手続違反の効果


処分・担保設定する財産の種類 宗教法人法又は内規(規則)に違反した処分の効果

境内建物

境内地

財産目録に掲げる宝物

無効

但し、善意の相手方又は第三者に対しては対抗できない。 

※ 宗教活動の存続にかかわる大切な財産だからです。

それ以外 対外的には有効

財産の種類を見分ける方法

1.宗教法人から「財産目録」の提出を受けます。

宗教法人はその事務所に「常に」財産目録を備えなければならない(法25Ⅱ)とされており、信者その他の利害関係人であって、閲覧に正当な利益があり、かつ、閲覧請求が不当目的でないと認められる者から請求があったときは、これを閲覧させなければならない(法25Ⅲ)となっています。

 

2.今回処分対象となっている財産が「境内建物」「境内地」「宝物」として登録されていないかチェックします。

下の赤枠で囲った所に境内地・境内建物と記載されている場合には、手続違反が一切ないように注意が必要です。

宗教法人・財産目録様式例(文化庁・宗教法人運営のガイドブックより)
宗教法人・財産目録様式例(文化庁・宗教法人運営のガイドブックより)

財産売却・処分の流れ


司法書士へのご相談

宗教法人を当事者とする財産処分のチェック項目は多岐に渡ります。

不動産会社が仲介に入っている場合も含めて、契約締結前に、必ず司法書士に相談することをオススメします。

売買などの契約

次のような特約が必要です。

  • 宗教法人法及び内規(規則)に定められた手続の完了をもって契約の効力が発生する旨(停止条件付)
  • 条件が整わなければ白紙解約とする旨
  • (売買契約の場合には)条件成就後に売買代金が支払われた時期が所有権移転時期となること

責任役員の定数の過半数の議決

規則でより厳しい手続を定めている場合には、その手続を実行します(法23)。

売買が無効になる可能性がある境内建物・境内地の処分についての内規(規則)の内容は、宗教法人の法人登記簿に「規則で境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物の処分等に関する定め」として登記されています(法52Ⅱ⑦)。

信者ほか利害関係人に対する財産処分等の公告

処分行為の1か月前に公告を開始する必要があります(法23)

不動産取引

司法書士が宗教法人法及び宗教法人内規(規則)に定められた手続がすべて有効に実行されたことを確認したうえ、売買代金の支払いなどをご指示させていただきます。

標準的な所要時間


2~3か月です。

宗教法人内規で複雑な手続が定められている場合には、この限りではありません。

司法書士の報酬・費用


通常の不動産取引の報酬に次の金額を加算して申し受けます。

手続に不慣れな宗教法人様が当事者の場合 司法書士主導による手続実践 +220,000円(税込)
手続に慣れた宗教法人様が当事者の場合

宗教法人様主導による手続実践

司法書士による手続確認

+110,000円(税込)

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