相続税申告の要否と相続税の計算方法


相続税の基礎控除枠が小さくなって

お客様の中にも相続税の申告が必要な方が増えてきました。

 

申告をして、軽減制度を利用することで税金がかからない相続もありますが、申告期限(死後10か月)を越えてしまうと、軽減も受けられません。

当グループでは、

  1. 相続税がかかるのに、見過ごして、皆様がペナルティーを受けることのないよう
  2. 申告さえすれば税金がかからないものを見過ごさないよう

にきっちりとチェックをし、必要に応じて、相続税専門の税理士におつなぎしています。

もくじ
  1. 相続税申告における3パターン
  2. 相続税の基礎控除
  3. 相続税上の相続財産
    1. 相続時精算課税の適用を受けた贈与財産
    2. 相続開始前3年以内の贈与
    3. 不動産
    4. 自動車
    5. 生命保険(みなし相続財産)
    6. 死亡退職金(みなし相続財産)
    7. 葬儀費用
  4. 法定相続人
    1. 養子
    2. 実子とみなす養子
    3. 相続放棄
  5. 各種軽減
  6. 相続税計算の流れ
  7. 人気に関連ページ

相続税申告における3パターン


パターン1 相続税なし ▶相続税申告不要
パターン2

申告すれば、各種軽減の適用を受けられて、相続税なし

▶相続税申告必要
パターン3 相続税がかかる ▶相続税申告必要

あまり知られていないのが「パターン2」の申告すれば、無税パターンです。

各種軽減の適用を受けるためには、期限内に申告する必要があります。

相続税の基礎控除


相続財産が、以下の金額に満たない場合には、相続税はかかりません。

 
法定相続人の人数 5000万円+(1000万円×法定相続人数 )

3000万円+(600万円×法定相続人数 )

3人

5000万円+(1000万円×3人)=8000万円

3000万円+(600万円×3人)=4800万円

4人 9,000万円

5,400万円

5人

1億円

6,000万円

まだ、相続税申告しなくても良いんだと、安心してはいけません。

相続税上の相続財産


財産の種類ごとに注意すべき点は、次の通りです。

相続時精算課税の適用を受けた贈与財産

生前贈与をした際に、『相続のときに精算するから、今は贈与税を掛けないでとの申告(相続時精算課税)』していた場合です。

詳しくはこちらをご覧ください。

相続開始前3年以内の贈与

不動産

不動産の価格にはいろいろな種類があり、用途に応じて使い分ける必要があります。

相続税額算出に使うのは、①税理士が路線価から計算する路線価評価か、②税理士が不動産鑑定士に外注する時価です。

  考え方

金額イメージ【1】

公示価格

毎年1月1日時点における全国3万地点の標準地の正常価格。

各標準地ごとに2人以上の不動産鑑定士によって行われた鑑定評価をもとに国土交通省が決定し、毎年3月に公表する。

100
路線価

国税庁が毎年7月に公表する。

全国のものがHPで公開されています。

土地が面している道路ごとに路線価が設定されており、主に土地の相続税評価を算出するために使います。

路線価がない地域は倍率表を使って計算します。

80
固定資産税評価

固定資産税を課税するために市町村が算出した価格。

建物の相続税評価では、そのまま固定資産税評価額を使います。

70

【1】金額イメージ

公示価格を100とした場合、路線価はおおよそ80、固定資産税評価はおおよそ70となるように算出されています。

 

【税理士による評価と、不動産鑑定士による評価の違い】

税理士も不動産鑑定士も、相続税申告のために不動産を評価する場合には、出来るだけ安く評価するようにしてくれます。ところが、その評価額には大きな差が生じることがあり得ます。

税理士による評価は「相続税財産評価に関する基本通達」に基づいて、その範囲内でしか評価を下げることができません。

一方、不動産鑑定士による評価は「不動産鑑定評価基準」によって種々の要素を加味して判断し、大幅に評価を下げることができます。よって、相続税申告のための評価では、不動産鑑定士の方が安くすることができるのです。

良く例に出るのは、市街地の中にある山林です。市街地には路線価が設定されていますので、路線価で市街地の山林を計算するととんでもなく高額になることがあります。そこで、不動産鑑定士の出番が来るというわけです。もっとも、不動産鑑定士に依頼すると別途その報酬が発生しますので、見極めが必要です。

以上を表にまとめると次のようになります。

  税理士の評価 不動産鑑定士の鑑定評価
評価基準 相続税財産評価に関する基本通達 不動産鑑定評価基準
判断要素 通達に従った評価でほとんど判断はしない。 判断する。
価格の相違 どの税理士さんが評価しても、本来ない筈

どの不動産鑑定士さんに依頼するかで、

かなりある。

価格の性格 みなし時価 時価
費用 相続税申告の報酬に含まれる

相続税申告の報酬以外に

別途不動産鑑定士報酬が発生する。

自動車

自動車の評価は、色々な場面で必要になりますが、次のサイトがとても分かりやすかったので、ご参照ください。

自動車(車両)の相続税評価を徹底解説/税理士法人トゥモローズ/最終アクセス210724

よく分からなくなる次のような論点について解説されています。

  1. 業者の買取価格か、業者の売出価格か?
  2. 業者の買取相場を把握するために必要な情報(年式、メーカー、車種・グレード、走行距離、色)
  3. 車検証のどこを見れば必要な情報が掲載されているのか?
  4. グレード検索サイト(AIS/最終アクセス210724)
  5. 個人情報を入力しないでも、買取価格相場がわかるサイト(中古車買取相場/ガリバー/最終アクセス210724):車種選択→年式でソート→走行距離

生命保険(みなし相続財産)

民法上は、相続財産ではありません(生命保険契約によって、相続開始を条件に指定受取人が受け取ることができる指定受取人の固有財産と考えます。)が、相続税を計算するときには相続財産とみなして課税されます(相続税法3Ⅰ①)。

以下の非課税枠があります。

500万円×法定相続人の数

死亡退職金(みなし相続財産)

民法上は、相続財産ではありませんが、相続税を計算するときには相続財産とみなして課税されます(相続税法3Ⅰ②)。

以下の非課税枠があります。

500万円×法定相続人の数

葬儀費用

相続財産から控除することができます。

詳しくはこちらをご覧ください。

法定相続人


養子

養子も法定相続人にカウントしますが、次のとおりです(相続税法15Ⅱ)。

被相続人に実子がいるとき 養子のうち1人までを法定相続人に加算
被相続人に実子がいないとき 養子のうち2人までを法定相続人に加算 

相続税を支払いたくないために、たくさんの方と養子縁組をするのを予防しています。

実子とみなす養子

次の養子は(相続税法上では)実子とみなされますので、すべて法定相続人の数に含まれます(相続税法15Ⅲ、相続税法施行令3の2)。

  1. 被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人
  2. 被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人
  3. 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人
  4. 被相続人の実の子供、養子または直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子供などに代わって相続人となった直系卑属。なお、直系卑属とは子供や孫のことです。

相続放棄

相続放棄をした人がいても、その放棄はなかったものとして、相続税上はカウントします。

放棄するか否かは、私人がコントロールでき、税法は恣意的な行為によって、税額が変わることを嫌うためです。

各種軽減


小規模宅地等の特例

要件に当てはまる場合、宅地の価格を最大80%減額して評価する制度です。

建物が建っている土地、アスファルト敷きのパーキングなど

面積の上限などもあります。

相続税申告書に特例を受けようとする旨の記載が必要です。

配偶者の税額軽減

配偶者が実際に相続した遺産額が「1億6000万円以下の場合」又は「配偶者の法定相続分相当額までの場合」は、配偶者には相続税はかかりません。

相続税申告書の提出が必要です。

相続税計算の流れ


当グループでは、相続手続きをお受けしたお客様のご要望によって、相続税を心配しないで良いか、財産内容をお伺いします。

相続税の申告が必要かをきっちりとチェックして、税理士さんをご紹介するまでが、当司法書士グループのお仕事です。

具体的な相続税の算出につきましては、ご紹介した税理士さんにご確認ください。

⑴ 遺産額の計算

土地は路線価によって計算

小規模宅地等の特例など

⑵ 遺産額から基礎控除額を差し引く

基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数〔1〕です。

 

〔1〕法定相続人の数には、相続放棄した者を含みます。相続放棄の有無によって基礎控除が小さくなることはありません。

〔2〕法定相続人に要旨がいる場合の法定相続人の数は、次のとおりです。

  1. 被相続人に実子がいる場合は、養子のうち1名を法定相続人数とします。
  2. 被相続人に実子がいない場合は、養子のうち2名を法定相続人数とします。

⑶ 法定相続人一人ずつその法定相続分を掛ける

⑷ ⑶の数字それぞれに税率を掛けて控除額を差し引く

相続税の速算表

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

⑸ ⑷の額を合計する(相続税の総額)

⑹ 相続税の総額を、実際に相続する割合で按分する(各人の税額)

⑺ 各種軽減を適用し、実際に納める税額を計算する。

それぞれ人的要因に基づく控除を行ないます。

  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 障害者控除

などです。 

人気の関連ページ