(民法952条の)相続財産清算人選任申立


  1. 相続放棄をしたので、相続財産の管理清算を引き継ぎたい方
  2. 相続人が存在しないので、ご自身が特別縁故者として分与を受けたい方
  3. 被相続人に何等かの請求をしたいけれど、相続人がいないという債権者の方

そんなときには、相続財産清算人を選任する必要があります。

※ 令和5年4月1日改正民法が施行され次のとおり改正されました。
  • 従来の相続財産管理人→「相続財産清算人」に名称変更(民952)
  • 相続財産の保存・管理のみの管理人が必要→新「相続財産管理人」スタート(民897の2)
この記事では、相続財産清算人(従来の相続財産管理人)について説明しています。
もくじ
  1. 相続財産清算人の選任を申立できる方
  2. 相続財産清算の流れ
  3. 相続財産清算人の職務
  4. 標準的な所要時間
  5. 司法書士の報酬・費用
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相続財産清算人の選任を申立できる方


利害関係人又は検察官が請求できる(民952)とありますが、利害関係人とは次のような方のことです。

1.受遺者

遺言で財産の一部の贈与を受けた方など

2.被相続人に対して債権(債務)を有する方

3.特別縁故者として分与を請求する方

特別縁故者について詳しくはコチラ

相続財産清算の流れ


相続財産清算の流れは複雑で、次のとおりです。

PC画面でご覧ください。

相続の開始

相続人がいる場合、相続財産に関する権利義務は、相続人に承継されます。

一方、相続人がいない場合(相続人がいなそうな場合を含みます。)には、次のとおりです。

相続財産法人

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする(民951)。

相続財産清算人選任申立

相続財産清算人の選任

家庭裁判所が相続財産清算人を選任します(民952Ⅰ)。

相続財産清算人名義への変更登記

相続財産に不動産がある場合、相続財産清算人は不動産を相続財産法人の名義に変更登記します。

相続財産清算人ご自身が登記できない場合には、司法書士にご依頼いただくことが可能です。

登記申請書
登記の目的 所有権登記名義人氏名変更【1】
登記原因 年月日相続人不存在【2】
変更後の事項 登記名義人 亡■■■■相続財産
申請人

住所【3】

 

亡■■■■相続財産清算人 ●● ●●

添付書類

登記原因証明情報【4】 代理権限証明情報

年月日申請

○○地方法務局 ○○支局

代理人

神戸市灘区鹿ノ下通二丁目4番15号

 

司法書士 佐 藤  大 輔

 

連絡先電話番号 078-805-1965

登録免許税

金1,000円【5】

不動産の表示

(略)

【1】所有者に変更するわけではありませんので、「所有権移転登記」ではなく「所有権登記名義人氏名変更登記」を行います。

【2】年月日は被相続人死亡の日です。

【3】選任審判所の住所、氏名を記載します。

【4】登記原因証明情報として、選任審判書を添付します。

【5】不動産1個につき1,000円です。

家庭裁判所による「相続財産清算人選任・相続人捜索公告」

家庭裁判所が官報に「相続財産清算人が選任された旨と相続人は名乗り出るよう」公告をします(民952Ⅱ)

相続財産清算人による「債権者・受遺者に対する公告」

相続財産清算人が官報に「相続債権者及び受遺者に対し、2か月内にその請求の申出すべき」旨公告します。この公告は、左の選任・捜索の公告期間内に満了する必要があります(民957Ⅰ)。

公告方法は民957Ⅱ→民927Ⅱ~Ⅳ。


6か月間

2か月間


相続人捜索の公告の終期

<相続人が出現>権利義務は相続人へ

<相続人が出現せず>相続人がいないことが確定します(民958の2)

公告期間満了後

相続財産清算人は、申出のあった相続債権者や受遺者に対して弁済します。弁済方法は民957Ⅱ→民928~935(932ただし書を除く。)


3か月間以内


特別縁故者からの分与申立

被相続人に特別の縁故があった方は、申し立てによって、相続財産の全部又は一部の分与を受けられることがあります(民958の3)。詳しくはコチラ

(あり。財産分与あり)

特別縁故者へ

(なし又は分与申立却下)

共有物のときは共有者へ

(最判H1.11.24)

(なし又は分与申立却下)

共有物でないときは国庫へ

(民法959)


相続財産清算人の職務


相続財産清算人には、司法書士又は弁護士が選任されます。

1.官報公告「債権者・受遺者に対する債権申出の催告」

相続財産清算人が官報に「相続債権者及び受遺者に対し、2か月内にその請求の申出すべき」旨公告します。この公告は、左の選任・捜索の公告期間内に満了する必要があります(民957Ⅰ)。

公告方法は民957Ⅱ→民927Ⅱ~Ⅳ。

2.相続財産を家裁の許可を得て、現金化

相続財産清算人は、申出のあった相続債権者や受遺者に対して弁済します。弁済方法は民957Ⅱ→民928~935(932ただし書を除く。)

3.報告

  1. 相続債権者や受遺者から請求があったときに、報告します(民954)
  2. 家裁に定期的に報告します。

4.清算の計算、引き渡し

相続人が現れ、相続の承認をしたときには、清算の計算をして相続人に引き渡します(民956)。

相続財産に残余があるときには、清算の計算をして国に引き渡します(民959)。

標準的な所要時間


債権者として請求できるようになるまでの時間

手続 時間
(戸籍収集) 2~3か月
(相続放棄有無照会) 1週間
(相続財産調査) 1~2か月
(負債調査) 1か月
相続財産清算人選任申立書作成・提出 2~3週間
債権申し出の催告 2か月
合計 7~9か月程度

特別縁故者として請求できるようになるまでの時間

手続 時間
(戸籍収集) 2~3か月
(相続放棄有無照会) 1週間
(相続財産調査) 1~2か月
(負債調査) 1か月
相続財産清算人選任申立書作成・提出 2~3週間
相続財産清算人選任・相続人捜索公告 6か月

相続財産清算人からの意見書提出

家庭裁判所調査官による調査

家庭裁判所による審判

審判の確定

数か月
合計 1年半~2年程度

司法書士の報酬・費用


相続財産清算人の選任申立

手続き  司法書士の報酬(税込) 実費
(戸籍収集) 11,000~33,000円程度 1万円程度
(相続放棄有無照会)

11,000円

郵送費
(相続財産調査)

調査範囲によります。

照会先1か所につき1,100~2,200円

郵送費
(負債調査) 33,000円 3千円ほど
相続財産清算人選任申立 220,000円

印紙800円

郵送費

官報費用4千円ほど

予納金20~100万円

【1】

合計

ざっくり33万円ほど

 

【1】予納金は、相続財産清算人の報酬に充てられる費用で、最初に申立人が立て替えます。

最初に収める予納金の額は、相続財産により、裁判所が決めます。現金預金が多いときには20万円程度ですむこともありますが、現金化しにくい財産が多数あるときには100万円などと高額な予納を求められることもあります。相続財産管理が終了して予納金に余りがあるときには、戻ってくることもあります。

相続財産法人への名義変更登記

手続き  司法書士の報酬(税込) 実費
相続財産法人への名義変更登記 33,000円 1万円程度(不動産3個まで)

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