子会社・関連会社の設立~別会社設立のメリットと、別会社を設立する場合には①会社出資の子会社にするべきか②社長出資の別会社にするべきか?!


いけいけの会社と話していると、しばしば出てくる話題「別会社作ろうかな」

ここでは、次のテーマでお話します。

  1. 別会社を作るメリット・デメリット
  2. 別会社を作るときには①会社出資の子会社にすべきか、②社長出資の別会社にすべきか

会社によって「どのメリット」や「どのデメリット」を重視するかは異なりますので、結論も会社によって異なりますが、ご参照いただければ幸いです。

別会社(子会社・関連会社)設立のメリット


1.経営の意思決定の効率化・責任の明確化

株主が多かったり、取締役が多かったりすると株主総会や取締役会で承認を得るのは大変です。そこで、株主も取締役も少数の別会社を作ることで、素早い意思決定が可能になります。

 

2.損益の明確化

業務部門を独立させ別法人とすることで、別々に会計を行うことになるので、部門ごとの損益を明確にすることができます。

 

3.後継者育成

親会社よりも規模の小さい別会社で、親会社の後継者候補に修行をさせることができます。

 

4.後継者複数の場合の解決策

兄弟2人が後継者候補のときに、別々に継がせることができる。

 

5.リスク分散

多額の投資を要する研究部門を別会社にすることで財務リスクを分散できます。また、複数事業を分散して別会社とすることで不祥事や営業停止処分を受けた際に、本体の会社を守ることができます。

 

6.事業売却が容易になります。

一つの会社の一部を売却するためには、事業譲渡や会社分割などの重たいスキームを使う必要があります。

別会社にしておくと、株式譲渡というより簡便なスキームで済む可能性が高まります。 

 

7.融資が受けやすくなる

別会社の決算書を見せることなく融資を受けることができる。

さらに、融資の際には通常、社長は連帯保証人になることを求められますが、別会社の社長を別の方にしておくと、一人が複数会社の社長を兼任しているよりも融資が受けやすくなります。

 

8.節税メリット

⑴接待交際費の損金算入可能額が2倍になる。

⑵複数社に利益が分散すると税率が下がる。∵累進課税

⑶親会社の売上規模がさほど大きくなければ(特定新規設立法人に該当しなければ)、子会社は原則2年間消費税免税事業者となることができる。

⑷親会社から子会社に社員が転籍する場合、退職金を支給し、親会社の損金とすることができる。

別会社(子会社・関連会社)設立のデメリット


1.手間やランニングコストが増える。

→節税メリット、経営効率化との対比の問題

 

2.税務調査で疑われることがある。

 

親子会社間で架空取引計上による必要経費の水増しの疑いなど

 

3.別会社との間で損益通算ができない。

 

→100%子会社であれば、連結納税制度の適用を選択した場合には、損益通算できます。

 

4.子会社・関連会社間の取引では利益相反承認決議を要することがある。

①法人出資の子会社にすべきか?②社長出資の別会社にすべきか?の基準


会社によって「どのメリット」や「どのデメリット」を重視するかは異なりますので、結論も会社によって異なりますが、ご参照いただければ幸いです。

  法人出資の子会社 社長個人出資の別会社
メリット
  1. 親子会社間取引に利益相反に関する承認決議が不要【1】
  2. 子会社が上手くいかなくて潰すときに損金にできる。
  3. その他のメリットは、上の「別会社設立のメリット」参照
  1. 将来、設立会社を売却する場合、個人で株式を保有していた方が、株式譲渡益に対する課税(所得税等)が安くなる。
  2. その他のメリットは、上の「別会社設立のメリット」参照
デメリット 
  1. 子会社設立に取締役会(取締役会非設置の場合には取締役の過半数の一致)承認決議が必要(∵会348Ⅲ②「支店の設置」の類推、362Ⅳ④「支店その他の重要な組織の設置」)
  2. 税務調査で疑われることがある。ex.親子会社間で架空取引計上による必要経費の水増しの疑い【2】
  3. その他のデメリットは、上の「別会社設立のデメリット」参照
  1. 元の会社の代取が新会社への代取を兼務することは、競業避止義務違反に該当するため取締役会(取締役会非設置会社の場合には、株主総会)承認決議を取得する必要がある。
  2. 元の会社の代取が別会社へ出資することは、競業避止義務違反に該当するおそれがあり、取締役会(取締役会非設置会社の場合には、株主総会)承認決議を念のために取得しておくべき。
  3. 会社が設立会社と取引する場合や設立会社の第三者に対する債務を保証する場合、利益相反行為にあたり、株主総会(取締役会)の承認決議がその都度必要となる。
  4. 会社設立のための出資金目的であっても、会社から代表取締役個人への貸付は利益相反取引にあたり、承認決議が必要。
  5. 子会社が上手くいかなくて潰すときに元の会社の損金にできない。
  6. 税務調査で疑われることがある。親会社・別会社の株式を誰が保有しているかによる。【2】
  7. その他のデメリットは、上の「別会社設立のデメリット」参照

【1】100%子会社の損益は、即親会社の損益と評価でき、両者間に実質的な利益相反関係がない(〔改訂版〕利益相反行為の判断と処理の実際/小山稔・二宮照興編/新日本法規13頁参照、最判昭和45・8・20ほか)。

【2】本社所在地や代取が同じかなども加味される模様です。

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