皆が払っている管理費を滞納されると、腹が立ちますよね。マンション管理組合としても放置することはできません。
マンション管理費等の滞納回収は、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)によって、特別な回収方法が定められていますので、ご紹介します。
もくじ | |
|
区分所有者は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって管理者を選任することができる(区分所有25I)。管理者は、規約又は集会決議により、その職務に関し、区分所有者のために、訴訟当事者になることができる(区分所有26IV)。
区分所有者に対して訴訟を提起する場合には、個別に集会決議が必要とされるのが実務です。
滞納後に区分所有建物の特定承継があった場合には、特定承継人を被告とすることができる(区分所有法8)。
相続などで承継した一般承継人にも請求できることは当然です。
裁判所手続を使うときには、管理費などについて定めた「規約」又は「集会決議の議事録」が必要です。
任意に支払いを交渉する場合であっても、足下を見られないために、まず用意しましょう。
規約にない場合には、予め規約の改正手続を行なってから手続を進めるべきです。
滞納状況等から、将来の管理費等の支払請求が認容された事例(東京地裁H10.4.14判決)
通常訴訟から強制執行 | 7条先取特権 | 8条特定承継人への請求 | 59条競売 |
|
|
|
|
以下、詳しく見ていきます。
区分所有法第7条(先取特権) | |
|
管理費等を滞納された管理組合は、
の上に、先取特権を有しています(区分所有法7条)。 |
【1-1】「建物に備え付けた動産」について、2説がある。
がある。
【1-2】専有部分に備え付けられたものに限らず、建物の共用部分である廊下や屋上に備え付けられたものでもよい(稲本洋之助、鎌野邦樹著/コンメンタールマンション区分所有法[第2版]/日本評論社/2004/59p)。
【2】滞納者が「それは、他人の物から差押できない」と主張してきた場合には?
7条先取特権は、民法319条(即時取得の規定の準用【3】)を準用していますので、「他人の物」と言われたとしても、その物に先取特権を行使できます。
【3】民法319条
第192条から第195条までの規定は、第312条から前条までの規定による先取特権について準用する。
登記された抵当権に負ける(民336)
滞納した税金に負ける(国税徴収法8、地方税法14)
申立に必要な次の書類が準備できない場合には、総会を招集しその承認を求めます。
ご要望により、司法書士が総会に同席し、今後の流れについてご説明することも可能です。
民法335条(一般の先取特権の効力) | |
|
場合 | とるべき手続 |
先行する競売がないとき | 先取特権の実行による競売開始申立て |
先行する競売があるとき | 先取特権による配当要求 |
当事者の証明
先取特権を有することを証明
先取特権の存在を証する文書(民事執行法181Ⅳ)として次の書面を提出します。
【1】管理費等の額が規約や集会決議で決まっていない場合には、申立に先立ち、具体的な金額を確認する決議をする必要があります。
建物に備付けた動産に対する担保権の実行では請求額に足りないことの証明
予納金
区分所有法第8条(特定承継人の責任) | |
|
区分所有法第7条(先取特権) | |
|
「特定承継人」とは、前の所有者から購入した人(買主)という意味です。区分建物以外の物の売買で買主が売主の債務を引き継ぐということはありません。ところが、区分建物の場合の滞納管理費等については、特定承継人に対しても請求することができます(区分所有法8)。
そして、強制競売による買受人も、この特定承継人に含まれます(稲本洋之助、鎌野邦樹著/コンメンタールマンション区分所有法[第2版]/日本評論社/2004/62p)。
なお、相続人などの「一般承継人」に対して請求できるのは、当然です。
区分所有法第59条(区分所有権の競売の請求) |
|
|
いきなり競売申立ができる訳ではなく、競売請求訴訟で勝訴する必要があります。
59条競売の特徴は、次のとおりです。
下記二つの要件を主張・立証する必要があります。
【1】相当長期の滞納、督促無視・・・などです。
【2】他の強制執行が不奏功、今後の支払い可能性がない・・・などですが、裁判例では競売請求までの経緯などによって判断が分かれています。
競売請求訴訟で勝訴さえすれば、無剰余取消しされることがないとされていますので、(特定承継人への請求を含めて)回収可能性は高くなります。
区分所有者と議決権総数の3/4以上の賛成
滞納管理費の請求は、
などによって、必要な手続が全く異なります。
まずは、30分ごと5,500円の司法書士法律相談をお受けください。
通常1時間程度で、事情を聞き取り、方針をご提示できると思います。
事情を良くお伺いしたうえ、見積書を提示いたします。
事案によっては、マンション管理に強い弁護士を紹介することもございます。