被相続人名義の預金口座の取引経過を銀行から入手すると、生前に多額の引出しがされていることが良くあります。
事情を知っている筈の相続人がハッキリ説明すれば良いのですが、説明できないときには、遺産分割協議をすることも出来ません。
被相続人から預金の引出しを指示(依頼)されることはよくあることです。
被相続人から口頭で引出しの指示を受け、通帳や銀行印を預って引出し後、被相続人に交付するという場面です。こういった場合には、被相続人の引出しの指示書面や、被相続人が引き出したお金を受け取ったことを証明する受領書が作成されることが少なく、被相続人の死後、引出金の使途を立証できず、窮地に立たされることもあります。
指示を受けた者 | 指示を受けた者の(通常の)対応 |
配偶者や子ども | 引出金の使途や、目的を質問することも十分に考えられる。 |
それ以外の者 | 振込み指示を受けた場合以外、立ち入って使途まで尋ねることはしないのが通常。 |
□ 被相続人の入院先病院・入所先施設と、引出し金融機関・支店の位置関係
□ 被相続人はいつ頃まで、自分で出金できたか?
□ 被相続人の認知力はどういう経過で落ちていったのか?
請求原因 | 不法行為に基づく損害賠償請求 | 不当利得返還請求 | 預託金返還請求 |
弁護士費用 | 〇請求できる | × | × |
故意・悪意 の利息 |
5% | 5% | なし |
消滅時効 の期間 (起算点) |
3年(加害者と加害行為を知って) 20年(行為から・除斥期間) |
10年(行為から) | 10年(預けた時から)【2】 |
立証責任 |
❶故意過失 ☛故意=盗った立証が困難 ❷権利侵害行為【1】 ❸損害発生 ❹因果関係 |
❶法律上の原因なく ❷利得 ❸損失 ❹因果関係=利得に法律上の原因がないこと
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❶目的物保管合意 ❷目的物受領 ❸返還請求【3】
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被告による相殺抗弁【4】 |
不可 | 可 | 可 |
【1】権限なく引き出したことが請求原因事実なのか(請求原因説)、引出し権限のあることが抗弁なのか(抗弁説)争いがあるが、重要ではない(レガシィ「使途不明金」第1巻10p~)。
【2】寄託=いつでも返還請求できる=権利行使可能時期=預けた時から
【3】要件事実民法(中)497p/要件事実マニュアル上597p
【4】被告から「被告は、被相続人に苛められていたのでその損害賠償請求権を自動債権として相殺する」という主張がなされることがある。