会社法違反事件(選任懈怠・登記懈怠)の過料相場と、過料決定への即時抗告・異議申立


社長のご自宅に突然届きます。特別送達ではなく、普通郵便で届きます。

しかも、文書には「会社法違反事件」という恐ろしいタイトルがついています。

通常詐欺ではありませんが、詐欺かもと思った場合には電話で確認してください【1】。

 

ここでは、本物の「会社法違反事件」として過料に処せられた場合の対処方法をご説明します。

まずは「登記懈怠(けたい)なのか」「選任懈怠なのか」を区別して対応する必要があります【2】。

次に裁判所も登記所も間違えることはあるということを念頭に対応する必要があります。

 


 

【1】これまでは「会社法違反事件」を利用した詐欺を聴いたことことはありません。しかし、残念なことに詐欺は年々巧妙になってきています。いつ詐欺に利用されるか分からないのです。

送付された書類に書かれた電話番号ではなく、当メディアのリンク集から管轄裁判所の電話番号を検索して、電話してみてください。

【2】過料相場を確認するために、過料について記載された社長ブログなども拝見しましたが、これを区別できている方はとても少なく感じました。対応方法が異なりますので、注意が必要です。

どんな場合に過料になるの?!


会社法976条に規定されていますが、主なものは次の二つです。

登記懈怠(会社法976条1号)

登記懈怠とは、役員選任などの登記すべき事項が発生したのに、2週間以内に登記しない場合です。

 

具体的に言うと・・・

  • 登記申請をしたことを契機に過料決定がなされる場合です。
  • 例えば、令和1年5月に選任された役員を、令和2年5月に登記申請すると、1年遅れで登記したことが『登記申請書から明白』です。
  • よく間違えられるのですが・・・全役員が再任された場合でも登記が必要です。 
  • 役員任期がない種類の法人(合同会社・有限会社など)であっても、期限内に登記申請をしないと登記懈怠になります。この点が選任懈怠とは異なります。

選任懈怠(会社法976条22号)

選任懈怠とは、役員を選任するべき時期(役員が退任する時期)を過ぎても新役員が選任されていないので、役員がいない状態です。

 

具体的に言うと・・・

  • 最後にした役員変更登記から10年以上経過したのに役員変更登記をしていないため過料決定がなされる場合です。
  • 株式会社の役員の任期は最長10年です。よって、10年以上役員変更登記を申請していなければ役員選任を怠っていることが『登記簿の記載から明白』です。
  • 過料決定には「法定の員数を欠くに至ったのに」と書かれていることが多いです。
  • 有限会社の役員には任期がない(永久任期)ですので、選任懈怠による過料は発生しません。

これらの違反を発見した登記官は、裁判所へ通知します。

  • 違反を発見した登記官は、管轄地方裁判所(登記された代表取締役住所を管轄する地方裁判所)に通知します(会社の場合:商業登記規則118、その他の法人:各種法人等登記規則5)。
  • 通知されないように議事録に選任懈怠の理由(法定期間内に総会を開催できなかった理由)を記載することもあります。

審理

正式手続による過料決定

(非訟事件手続法120.121)

過料決定前に被審人の意見を聴く

告知から1週間は、即時抗告ができる(非訟120Ⅲ)

略式手続による過料決定

(非訟事件手続法122)

過料決定前に被審人の意見を聴かない

告知から1週間は、異議申立ができる(非訟122Ⅱ) 

●会社法違反はほとんど全部がこの略式手続です

過料とは


  1. 刑事罰ではありませんので、前科はつきません。
  2. 社長個人に課せられるものですので、会社経費で落とせません。この点「登記懈怠により過料に処せられるべき者は、本来の申請義務者たる会社を代表して登記申請を行なうべき者であって会社自身ではない」とする裁判例が存在します(仙台高裁決定S46.9.1、大審院決定M40.8.6)。
  3. 代表取締役が複数いる場合には、複数の代表取締役が過料に処せられます。
  4. 代表取締役就任前に発生した登記申請義務違反についても、新代表取締役は就任の時から登記義務を負い、就任後遅滞なく登記申請をしない限り、遅滞の責めを免れない(大阪高裁決定S37.5.23)がありますので、M&Aの際には注意が必要です。

過料の相場


過料の額については、最高額が100万円と規定されている(会社法976条)ほか、運用の基準などは公開されていません。当職が担当した案件のほか同業司法書士のページなどから抜粋して、統計化を試みました。

登記懈怠の過料相場

役員変更登記懈怠の相場は2~3万円ですね。

検出できた事例は1件だけですが商号という重要事項の登記懈怠は高い目の金額が出ています。

株式会社に限らず、有限会社・一般社団法人・農事組合法人も過料に処されています。

 

役員総数による過料額の増減はデータ不足で検討出来ませんでしたが、あまり関係なさそうですね。

代表取締役数が多いと、代表取締役一人当りの過料額が減少するか否かは、データ不足で検討できませんでした。

種類 懈怠期間 役員総数 うち代取 過料額 法務局 裁判所

過料が通知された時期

(括弧内は過料決定日)

登記懈怠

1年1月

不詳 不詳 4万円 不詳 大阪

登記申請から6か月後

(H24.6決定)

※商号変更の登記懈怠

選任懈怠

登記懈怠

1年

2か月

不詳 不詳 2万円 神戸 神戸

登記申請から2か月後

(H29.4決定)

※選任懈怠と登記懈怠の両方

登記懈怠 1年半 1名 1名 2万円 神戸 明石

登記申請から2か月後

(H29.11決定)

※一般社団法人

登記懈怠 1年8月 不詳 不詳 2万円 不詳 不詳

登記申請から3か月後

(H20.2決定)

登記懈怠 1年9月 不詳 不詳 3万円 不詳 八王子

登記申請から4か月後

(H18.9決定)

登記懈怠 2年2月 不詳 不詳 3万円 不詳 相模原

登記申請から3か月後

(R2.2決定)

登記懈怠 2年半 不詳 不詳

3万円

不詳 東京

登記申請から4か月後

(H28.11決定)

登記懈怠 2年半 不詳 不詳 3万円 神戸 神戸

(H25決定)

※有限会社

登記懈怠 2年半 不詳 不詳 3万円 不詳 前橋

登記申請から2か月後

(H21決定)

登記懈怠

登記懈怠

4年半

1年半

不詳 不詳 3万円 青森 青森

登記申請から2か月後

(H31.1決定)

※農事組合法人

※2件の登記懈怠

選任懈怠の過料相場

役員選任を1年以上忘れれば2~4万円、10年以上忘れれば10万円という感じです。

 

役員総数による過料額の増減はデータ不足で検討出来ませんでしたが、あまり関係なさそうですね。

代表取締役数が多いと、代表取締役一人当りの過料額が減少するか否かは、データ不足で検討できませんでした。

種類 懈怠期間 役員総数 うち代取 過料額 法務局 裁判所

過料が通知された時期

(括弧内は過料決定日)

選任懈怠

登記懈怠

1年/

2か月

不詳 不詳 2万円 神戸 神戸

登記申請から2か月後

(H29.4決定)

※選任懈怠と登記懈怠の両方

選任懈怠

1年3月 不詳 不詳 3万円 不詳 東京

(R1.12決定)

選任懈怠 1年半 不詳 不詳 2万円 不詳 札幌 (R1.11決定)
選任懈怠 1年半 不詳 不詳 4万円 京都 京都

選任懈怠登記申請から2か月後

(H24.7決定)

選任懈怠 2年半 不詳 不詳 6万円 和歌山 和歌山

選任懈怠登記申請から4か月後

(H22決定)

選任懈怠 10年5月 不詳 不詳 11万円 不詳 松山

(R2決定)

選任懈怠 12年 不詳 不詳 10万円 横浜 川崎

登記申請から2か月半後

(R2.3決定)

選任懈怠 12年 不詳 不詳 10万円 不詳 不詳

(H31決定)

選任懈怠 13年 2名 1名 10万円 神戸 神戸

設立から13年半経過した時点

(R2.8決定)

異議の理由


〇=異議として認められうる理由。×=異議として認められない理由。

記載されている内容が事実と異なっている
退任されたとされる時期が間違っている(法務局・裁判所ともに貴社定款を保管していないためこの間違いが多いです。)
登記手続が遅れたことについて特別の理由がある
過料決定に理由が記載されていない(非訟事件手続法120Ⅰ)
× 手続しなければならないことを知らなかった
× うっかり手続を忘れていた
× 依頼していた司法書士等のミスで遅れてしまった

☑ 異議の理由に当てはまりそうだ

☑ 異議の理由に当てはまるか司法書士に相談したい

過料決定に対する異議申立の流れ


1週間という極短期間に異議を述べる必要があるため、迅速な対応が必要です。

 

過料決定を受けとる

通常は普通郵便で郵送されます。

ご相談

最寄りの当グループ各事務所にご予約ください。

①過料決定、②貴社定款、③代表者のご本人確認書類をお持ちのうえ、ご相談ください。

メール・チャットワーク・ZOOMによるご相談も可能です。

ご契約・実費お支払い

異議申立書の作成

司法書士が異議申立書を作成します。

異議申立書への押印

内容ご確認のうえ、押印ください。

異議申立書の提出

司法書士が異議申立書を管轄裁判所に提出します。

提出期限が残っているかに応じて、郵送または持参で提出します。

異議申し立てに関する決定

異議申立から数日で裁判所が異議を認めるか否かを決定し通知します。

成功報酬のお支払い・過料のお支払い

懈怠していた会社登記の申請

過料を支払っただけでは、登記の申請義務が免除されるわけではありませんので、必要な登記を申請します。

司法書士の報酬・費用


業務内容 司法書士の報酬 実費
過料決定に対する異議申立書の作成・提出

減額された額の半額

(税別)【1】

(完全成功報酬制)

管轄裁判所への交通費・郵送費

【1】完全成功報酬制

受け取った過料決定額が10万円で、異議の結果4万円に減額された場合には、差額6万円の半分+消費税を報酬としていただきます。

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