会社の大きさの目安となる「資本金」
ここでは、資本金の額を増やす手続きをご説明します。
もくじ | |
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資本金の増加には
①株式の発行を伴う資本金の増加と、②株式の発行を伴わない資本金の増加があります。
株式を発行を伴う | 株式の発行を伴わない | |
資本金が 増加する |
①募集株式の発行 ②新株予約権の行使 ③取得条項付新株予約権の取得 (以上会社計算規則13Ⅱ) ④組織再編に伴う株式の発行
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①その他利益剰余金の資本組入れ (会社450) ②その他資本剰余金の資本組入れ (会社450) ③利益準備金の資本組入れ ④資本準備金の資本組入れ |
資本金が 増加せず |
①取得請求権付き株式、取得条項付株式、 全部取得条項付株式の取得 ②株式無償割当 (以上会社計算規則13Ⅱ) |
募集株式の発行機関(株主総会・取締役会)は、会社の種類とどういう発行を行なうかによって、全く異なります。下表では、よくできた法務省HPに、必要情報を加筆しています(参照法務省HP「1-20株式会社変更登記申請書(募集株式発行)申請書様式 別表(Excel)」/最終アクセス210525)。
発行の種類 | |||||||||
▽ | |||||||||
株主割当て以外 | 株主割当て(同一種類の株式を割当てる場合のみ) | ||||||||
通常発行 | 有利発行 | ||||||||
会 社 の 種 類 |
▷ |
非 公 開 会 社 【1】 |
取 締 役 会 非 設 置 |
▷ |
募 集 事 項 の 決 定 |
原 則 |
株主総会の特別決議 (会199Ⅱ) |
株主総会の特別決議 (会202Ⅲ④) |
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例 外 |
株主総会の特別決議による委任 取締役の決定(会200Ⅰ) |
定款の定め 取締役の決定 (会202Ⅲ①) |
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▷ |
割 当 て の 決 定 |
原 則 |
株主総会の特別決議 (会204Ⅱ本文) |
【3】 | |||||
例 外 |
定款の定め 取締役の決定 (会204Ⅱ但書) |
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取 締 役 会 設 置 |
▷ |
募 集 事 項 決 定 |
原 則 |
株主総会の特別決議 (会199Ⅱ) |
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例 外 |
株主総会の特別決議による委任 取締役会の決定 (会200Ⅰ) |
定款の定め 取締役会の決定 (会202Ⅲ②) |
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▷ |
割 当 の 決 定 |
原 則 |
取締役会の決定 (会204Ⅱ本文) |
【3】 | |||||
例 外 |
定款の別段の定め (会204Ⅱ但書) |
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公 開 会 社 【2】 |
取 締 役 会 設 置 会 社 |
▷ |
募 集 事 項 決 定 |
原 則 |
取締役会の決議 (会201Ⅰ) |
株主総会の特別決議 (会201Ⅰ、199Ⅱ) |
取締役会の決議 (会202Ⅲ③) |
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例 外 |
定款の定め 株主総会 (会295Ⅱ) |
株主総会の特別決議による委任 取締役会の決議 (会200Ⅰ) |
定款の定め 株主総会 (会295Ⅱ) |
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▷ |
割 当 の 決 定 |
原 則 |
代表取締役等 (会204Ⅰ) |
【3】 | |||||
例 外 |
譲渡制限株式を割当てるときは、取締役会の決議(会204Ⅱ) |
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【1】非公開会社:発行済株式の全部に株式譲渡制限がついている株式会社(会社法2⑤参照)。
【2】公開会社:発行済株式の一部にでも株式譲渡制限がついていない株式会社(会社法2⑤)。上場企業とは全く異なる概念です。
【3】株主割当てを行なう場合には、割当て決議は不要です。
業務の種類 | 司法書士の手数料 | 実費 | |
株式発行・増資 | |||
(500万までの現金による増資) | 110,000円(税込) | 40,000円【1】 | |
(5000万円の現金による増資) | 132,000円(税込) | 360,000円【1】 | |
(1億円の現金による増資) | 137,500円(税込) |
710,000円 【1】 |
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(5億円の現金による増資) | 159,500円(税込) |
350万円 【1】 |
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(10億円の現金による増資) | 187,000円(税込) |
700万円 【1】 |
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(50億円の現金による増資) | 407,000円(税込) |
3,500万円 【1】 |
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その他利益剰余金・その他資本剰余金を資本組入れしてする増資 | |||
(900万円の利益剰余金を資本組入れ)
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88,000円(税込) | 65,000円【1】 | |
利益準備金・資本準備金を資本組入れしてする増資 | |||
減少する準備金の全額を資本金に組入れる場合 (900万円の利益準備金を全額資本組入れ)
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88,000円(税込) |
65,000円 【1】 |
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減少する準備金の全額を資本金に組入れない場合 (900万円の利益準備金の一部を資本組入れ)
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165,000円(税込) | 220,000円【1】【2】 | |
種類株式の登記 A)発行済株式の一部を変更 |
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165,000円(税込)2種類以上は、1種増える毎4.4万円(税込)を加算 | 35,000円 | |
種類株式の登記 B)種類株式を新規に発行 |
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165,000円(税込)2種類以上は、1種増える毎4.4万円(税込)を加算 | 65,000円~(増資額による) |
【1】増加する資本金の額の7/1000(3万円以下は3万円)が登録免許税です。
【2】この場合、債権者を害する可能性があるため、債権者保護手続きが必要となります。官報公告費用を含んだ費用です。
業務の種類 | 司法書士の手数料 | 実費 | |
株主総会招集通知の作成・発送代行及び報告 | |||
33,000円(税込)~ に発送先1名様ごとに1,100円を加算 |
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株主総会シナリオ・想定問答集作成 | |||
55,000円(税込)~ | |||
株主総会立会 | |||
55,000円(税込)~ |
当事務所では、払込期間を定めることをオススメしています。
払込期間を定めた方が、払込期日を定めるよりも、払込が間に合わない場合の期限延長が容易だからです。理由は次のとおりです。
払込期日を定めた場合、払込人が株主になるのは、払込期日までに払い込んでいたとしても、払込期日です(同209)。払込期日が来ない限り、株主になれません。ですから払込期日を延期する場合には、払込人が株主になれると思っていた時期が遅れることになりますので、払込人全員の同意が必要となります(昭和40年1月13日民甲79回答)。
一方、期間を定めた場合、払込人が株主になるのは、自分が払い込んだ日で(会社法209)あり、払込みさえ完了すれば、株式譲渡も可能です。よって、払込期間を定め、払込が間に合わないなどの理由で、払込期間の末日を延期する場合、払込人全員の承諾は必要ない。払込人全員の承諾書を必要とした昭和40年登記先例は、払込期間を定めた場合、適用されません(=払込人全員の承諾書不要)。
ただし、払込人が多数にわたる場合には、払込期日と定めていないと会計処理が大変になるのでオススメできません。
1.銀行に対して
決算書の見た目が悪くなるのではないか?と思われるかもしれませんが、DES後の決算書では会社の借入金が減り、資本金が増えるだけです。資本金が厚くなれば銀行は喜びますので、DESによって決算書の見た目が悪くなることはありません。
2.税務上のリスク
DESにすると、債務に増資額分の価値がない場合(債務超過会社など)には、債務免除益が発生する可能性があります。
▼そういう場合
会社にDES分の現金があるならば、債権者に返済して、債権者から再度出資金として振込んでもらえば現金出資による増資として、このリスクが無くなります。
(令和元年8月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)