会社法人登記の中でも異質な医療法人の変更登記。論点をまとめました。
また、平成28年医療法が改正されています。改正前後の相違点をまとめていますので、ご参照ください。
もくじ | |
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〔凡例〕この記事では次のとおり略記しています。
権利義務役員が規定されたことで、仮理事を選任する必要(負担)がなくなりました。
平成28年8月31日まで | 平成28年9月1日以降 | |
理事会 | 任意(定款で設置するか決定) | 必須(医46の7) |
役員の数 | 任意(定款で規定) |
理事3人以上 監事1人以上(医46の5Ⅰ) |
役員選任方法 | 任意(定款で選任方法を規定) |
社団医療法人は社員総会(医46の5Ⅱ) 財団医療法人は評議員会(医46の5Ⅲ) |
役員任期 |
2年。2年を経過すれば「仮理事選任」が必要。 ∵権利義務役員の規定がなかったため |
2年(医46の5Ⅸ)。2年を経過すれば「権利義務役員」となる(仮理事選任不要。医46の5の3Ⅰ)。 |
理事長選定 | 任意(定款で選任方法を決定) | 必ず理事会で選定(医46の7Ⅱ③) |
(平成28年12月20日・あなまち司法書士事務所・司法書士染田直樹)
「理事長の住所又は氏名」に変更があったときには、法務局に対して、2週間以内に変更登記を申請する必要がございます(組合等登記令3)。司法書士が担当します。
また、都道府県に対して、遅滞なく届出が必要です。届出には新任役員の就任承諾書・履歴書を添付します(医療法施行令5の13)。行政書士が担当します。
「理事」や「監事」は、登記されていません。したがって、法務局に対して登記申請をする必要はありません。
ただし、都道府県に対して、遅滞なく届出が必要です。届出には新任役員の就任承諾書・履歴書を添付します(医療法施行令5の13)。行政書士が担当します。
医療法人の役員の任期は、「2年を超えることはできない。」とされています(医療法46の5Ⅸ)。
したがって、
任期満了退任します。
理事長は理事の中から選ぶことになりますので、理事長の任期も「理事の任期が切れたときに」切れ、2年に1回の役員変更登記が必要になります【2】。
【1】医療法人「監事」の最低限の任期(定款で定められる最低限の任期)について
【2】医療法人の理事長の任期?/司法書士内藤卓のLEAGALBLOG/最終アクセス221213もご参照ください。
最初の役員の任期については、定款で「設立日から1年経過した日後最初に到来する○月○日までとする」としている例がありますので、ご注意ください。
就任の登記等 | 任期中 or not |
就任日が平成19年3月31日以前 | 登記簿上は登記懈怠のようであっても、理事の任期が伸長され続けている。【1】 |
就任日が平成19年4月1日以降で、 任期満了が平成28年8月31日前 |
2年の任期の経過により、理事が欠けた状態となっている。【2】 |
任期満了が平成28年9月1日以降 |
権利義務を承継中【3】 |
(表は、司法書士内藤卓先生/各種法人登記の基本事項と近時の論点/令和5年10月26日兵庫県司法書士会会員研修会レジメ/16頁より抜粋)
この表の根拠について、見ていきたいと思います。
【1】昭和25年8月1日施行の医療法改正により医療法人の設立が可能になりましたが、理事の任期に関する規定はありません。
【2】平成19年4月1日施行の医療法改正により任期規定「役員の任期は、2年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。」が導入されました(当時の医療法第46条の2第3項。※権利義務規定がない→2年を過ぎるとたちまち理事不在になる。そこで仮理事制度【4】)。また、その改正附則には次のとおりの定めがあります。
改正附則(平成18年6月21日法律第84号)第11条(役員の任期に関する経過措置) |
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この法律の施行の際現に医療法人の役員である者の任期は、新医療法第46条の2第3項の規定にかかわらず、この法律の施行の際におけるその者の役員としての残任期間と同一の期間とする。 |
なお「役員の任期は、2年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。」との規定は、現在も医療法46条の5第7項として、変わらず受け継がれています。
【3】平成28年9月1日施行の医療法改正により権利義務規定が導入されました。
医療法第46条の5の3〔役員等に欠員を生じた場合の措置〕 (平27年法律第74号により追加。平成28年9月1日施行。) |
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比較:会社法第346条(役員等に欠員を生じた場合の措置) | |
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【4】仮理事制度 旧・医療法第46条の4第5項 (平成20年12月1日施行~平成28年9月1日「仮理事制度」廃止) |
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5 理事が欠けた場合において、医療法人の業務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、都道府県知事は、利害関係人の請求により又は職権で、仮理事を選任しなければならない。 |
司法書士顧問契約を締結いただいている場合、割引きがございます。
業務の種類 | 司法書士の報酬 | 実費 | |
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44,000円(税込) | 2,000円ほど |
登記完了後、都道府県への届出は行政書士が行い、この費用が別途必要です。
過料の有無/内容 | |
登記すべき事項を登記しなかった (=登記懈怠) |
20万円以下の過料(医療法93、組合等登記令1→同3) |
期限内に選任すべき理事を選任しなかった (=選任懈怠) |
過料はかからない(医療法に規定がない) |
詳しくは、こちらの記事「医療法違反事件ー医療法人の義務違反(選任懈怠や登記懈怠)についての過料」をご参照ください。
医療機関に関する法人登記(独自の論点)
全ての法人に共通