株式会社は、様々な種類の株式を発行することができるようになりました。
事業承継やM&A対策など様々な場面で、種類株式を利用することができます。
シチュエーション | 種類株式を利用 | それ以外を利用 |
少数株主整理 |
|
|
株式分散予防 |
|
|
経営権をスムーズに渡す(事業承継) |
|
|
後継者成長まで経営を監視したい(事業承継) |
|
|
M&A |
|
他の種類の株式よりも剰余金の配当において、優先して配当を受けることができます。
配当優先株式で、決めて戴くべき事項は、次の3項目です。
Aパターン | Bパターン | |
❶優先配当の定め方 |
□「1株につき年〇円の優先配当金を支払う(金額で定める)。」 →普通株式無配でも配当あり。
|
□「1株につき普通株式に対する配当財産の〇%増しの優先配当金を支払う(割合で定める)。小数点以下1位を切り上げる。」 ▼ このままでは、普通株式無配なら配当なし。 ▼ □優先配当金の下限を1株あたり金〇円とする。普通株式に対する配当財産がない場合にも、優先株式に対して1株金〇円を優先配当金として支払う。 |
❷所定の優先配当を行った後にさらに配当可能利益がある場合には普通株式とともに優先株式も配当を受けるか |
□受ける(参加型) 「当会社は、B種類株主に対して、優先配当金のほか、A種類株主に対して交付する配当財産と同額の配当財産を交付する。」 →優先配当株式は、常に、普通株式よりも高額の配当を受ける。 【無議決権の持株会の場合はこちらを採用します】 |
□受けない(非参加型) 「当会社は、B種類株式に対して、優先配当金を超えて配当財産を交付しない」
→普通株式への配当金よりも、配当優先株式への配当金が少額になりえる。
|
❸優先配当出来なかったとき、次年度への優先配当額を繰り越すか |
□繰り越す(累積型) →全部又は一部の優先配当が出来ない場合には、翌事業年度以降に繰り越す(キャリーオーバー)
|
□繰り越さない(非累積型) 「ある事業年度において、B種類株主に対して支払うB種類株式1株あたりの剰余金配当額が優先配当金の額に達しないときでも、当会社は、当該不足額を翌事業年度以降に累積しない」 |
複数の株式を発行することができるよう定款で定められた会社。現実に複数発行している必要はありません。
(平成28年9月・あなまち司法書士事務所・司法書士染田直樹)
次のとおりです。
株式の内容 |
単一株式発行会社での導入可否(会107) =全ての株式への導入可否 |
種類株式発行会社での導入可否(会108) =一部の種類株式への導入可否 |
剰余金の配当 | × | 〇 |
残余財産の分配 | × | 〇 |
議決権制限 | × | 〇 |
譲渡制限 | 〇 | 〇 |
取得請求権付 | 〇 | 〇 |
取得条項付 | 〇 | 〇 |
全部取得条項付 | × | 〇 |
拒否権付(黄金株 | × | 〇 |
役員選任権付 | × | 〇 |
(平成28年9月・あなまち司法書士事務所・司法書士染田直樹)
いずれも株式会社が、株主に請求すれば、株主から株式を買い上げることができる種類株式です。違いは次のとおりです。
取得請求権付株式 |
全部取得条項付株式 | |
普通株式を変更する場合 | 種類株主全員の同意(会111①) | 株主総会特別決議(会466、309Ⅱ⑪) |
取得事由が発生した場合 |
①予め定款に取得事由を定める。 ②取得事由の発生 ③取得のための株主総会不要 ④会社からの取得請求 |
①定款に取得事由の定め不要 ②取得事由の発生 ③取得のための株主総会特別決議 ④会社からの取得請求(会309Ⅱ③、171Ⅰ)
|
取得の対象となる株式 | 一部の者の株式のみ取得可能 | 種類株式を有する種類株主の全てを取得することしかできない。 |
(平成28年9月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)
次のとおりです。
パターン | 承認方法 |
既存株主の株式の一部を種類株式に変更する | 株主全員の同意 |
新たに種類株式を発行する | 株主総会特別決議 |
(平成28年9月・あなまち司法書士事務所・司法書士染田直樹)
次のとおりです。
会社法 | 内容 | 同意がいる人 |
110 |
【単一株式発行会社】
|
株主全員 |
【単一株式発行会社】 既存株主を種類株主に変更(単一株式発行会社から種類株式発行会社への変更) |
株主全員 | |
111 |
【種類株式発行会社】 既発行の種類株式(例えばB種類株式)を取得条項付とする場合 |
B種類株主全員 (別途、定款変更承認の株主総会特別決議) |
(平成28年9月・あなまち司法書士事務所・司法書士染田直樹)
次のとおりです。
また、役員の選任に関して両方の種類株式を導入することは、規定に矛盾が生じるため出来ません。 さらに、一つの種類株式に「取締役選任議案に対する拒否権」と「取締役選任権」を付与することも出来ません。 ただし、一つの種類株式に「代表取締役選任議案に対する拒否権」と「取締役選任権」を付与することは可能です。
(平成28年10月25日執筆/平成28年12月6日加筆修正・あなまち司法書士事務所・司法書士染田直樹)
黄金株(拒否権付株式) | 選任条項付株式 | |
特徴 |
①黄金株主は、株主総会が選任した役員を拒否できる ②黄金株主は、株主総会が解任した役員の解任を拒否できる ③「どの役員(取・監・代取)の選任・解任について拒否できるか」予め定款に定め、登記も必要 |
①一定数の取・監を、選任条項付株式が直接、選任又は解任できる ②「選任・解任できる取・監の数」を予め定款に定め、登記も必要 |
メリット |
①どの決議について拒否権を持たせるか、会社が自由に設計できる ②実質上、役員選任・解任につき実権を握ることが可能 ③定款で定めれば、取締役会での代取の選定・解任についても拒否できる ④公開会社も採用できる |
①一定数の取・監について、直接選任・直接解任できる |
デメリット |
①黄金株主が議決権を行使できない(意思表示できない)場合、役員を選任できなくなる ②黄金株主と経営陣との間で、対立があるとどのような議案も、黄金株主が拒否し、役員を選任できなくなる ③種類株主総会で取締役・監査役を選任する場合、拒否できない ④株主総会が解任しない役員を解任することはできない |
①公開会社は採用できない ②代取を選任・解任することは出来ない ③定款で定めた人数の取・監の候補者を選任できない場合は、選任条項は廃止されたものとみなされる(会社法112Ⅰ) |
①当該種類株主に相続が発生した場合、会社にとって予期せぬ相続人が株主となる可能性がある(⇒取得条項をつけるなどして対応可能) ②取締役などの選任について実質的に支配権を持つので、将来の出資者・銀行・取引先などの視点も考慮する必要がある |