上場会社のコーポレートガバナンスを理解するうえで必要不可欠とされる「コーポレートガバナンス・コード(CGコード)」とは何でしょうか。
そもそも「コーポレート・ガバナンス」とは一体、何なのでしょうか。
これらについて、あなたの理解が進む一助になれば幸いです。
もくじ | |
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「コーポレートガバナンス」も「コード」もあまり聞き慣れないと思います。
「コーポレートガバナンス」と「コード」に分けて考えてみましょう。
コーポレートガバナンスとは
のことです。
コード「code」とは、英単語で、行動規範・慣例・法典・条約・規約という意味です。
例えば「ドレス・コード」は、ある場所における服装の規定のことです。
コーポレートガバナンス・コードとは
1961年 | 自由主義経済の発展のために協力を行う機構として国際機関である経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)が設立される。 |
1964年 | 日本もOECDに加盟。 |
1999年 | OECDが「OECD コーポレート・ガバナンス原則」を公表 |
2006年 | 会社法施行 |
2013年 | 政府が経済復興を目指すことを示した「日本再考戦略」に、CCコードを明記。 |
2014年 |
機関投資家に向け「責任ある投資家の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫」を公表。「SSコード」と略称される。 |
2015年 | 上場企業に向け「コーポレートガバナンス・コード」の適用開始(以降2回改訂) |
2018年 | 金融庁「投資家と企業の対話ガイドライン」を公表 |
2019年 | 会社法改正。上場企業に対して社外取締役の設置義務等が導入 |
コーポレートガバナンス・コードが制定された目的は次の二つです。
機関投資家向けの「SSコード」と、上場企業向けの「CGコード」は、車の両輪として「企業の収益性を高め」「投資家の投資を促す」効果を期待されています。
機関投資家は「SSコード」を受け入れるか否かを自由に選択できますが、323の機関投資家(信託銀行、投信・投資顧問会社等)が受け入れを表明しています(令和5年3月31日時点)。
コーポレートガバナンス・コードは、法令ではありませんので、強制力はありません。
また、上場会社には、コーポレートガバナンス・コードを実施するか、しない自由はあります。ただ、実施しない場合にはその理由を報告する必要があります。
第436条の3(コーポレートガバナンス・コードを実施するか、実施しない場合の理由の説明) | |
上場内国会社は、別添「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を第419条に規定する報告書において説明するものとする。この場合において、「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」ことが必要となる各原則の範囲については、次の各号に掲げる上場内国会社の区分に従い、当該各号に定めるところによる。
(1) スタンダード市場及びプライム市場の上場内国会社 基本原則・原則・補充原則 (2) グロース市場の上場内国会社 基本原則 |
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第445条の3(コーポレートガバナンス・コードの尊重) | |
上場会社は、別添「コーポレートガバナンス・コード」の趣旨・精神を尊重してコーポレート・ガバナンスの充実に取り組むよう努めるものとする。 |
取引所は、コーポレートガバナンス・コードを実施しないにも関わらず理由を報告しない上場会社に対して、次のようなペナルティを課すことができます。
が設けられています。
基本原則 |
(その下に) 原則 |
(さらにその下に) 補充原則 |
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1.株主の権利・平等性の確保 | 7 | 11 | |
2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働 | 6 | 3 | |
3.適切な情報開示と透明性の確保 | 2 | 4 | |
4.取締役会等の責務 | 14 | 21 | |
5.株主との対話 | 2 | 3 | |
原則の合計数 | 5 | 31 | 42 |
「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」ことが必要となる各原則の範囲 | |||
の上場内国会社 |
必要 | 必要 | 必要 |
の上場内国会社 |
必要 |
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。
また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。 少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。 |
この基本原則の下に、7つの「原則」が定められています。
さらに、それぞれの原則の下には「補充原則」が定められています。
そして、
それぞれ実施する必要があります。
これらの関係は、以下の「基本原則2」~「基本原則5」についても同様です。
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。 |
上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。 |
上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと (2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと (3) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。 こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。 |
CGコードが定める「独立役員の要件」については、コチラ「社外取締役・社外監査役・独立役員」もご参照ください。
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。 |
コーポレートガバナンス・コードに相当するような規定が会社法にもあります。
ただし、会社法は「法令、定款への適合を確保するための体制」と「業務の適正を確保するための体制」の整備を求めているに過ぎませんので、コーポレートガバナンス・コードの方が『より広範な内容』について『より具体的な定め』を置いているといえます。
会社法第348条(業務の執行) | |
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会社法第348条第3項第4号を分析するために箇条書きにすると・・・
これらの体制の整備については、取締役の一人に決定を任せるのではなく、各取締役が協議して決めるように定めています。
大会社では、これらの体制の整備について、決定しておかなければならないとされています(会348Ⅳ)。
会社法施行規則第98条(業務の適正を確保するための体制) | |
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