簡単なようで難しい印紙税法。
契約書に対する収入印紙の要否は、契約書の「書きぶりと実体」によって判断されます。実際は非課税文書であるのに、契約書の書きぶりが悪くて、課税文書扱いにならないよう注意が必要です。
もくじ | |
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(以上、国税庁HP/印紙の消印の方法/https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/06/03.htm/最終アクセス231028)
消印を忘れた場合 | 額面額と同額(印紙税法20Ⅲ) |
印紙の貼付け自体を忘れた場合 | 貼付けるべき金額の3倍(印紙税法20Ⅰ) |
印紙税過誤納手続(印紙税法14ⅠⅡ)、印紙税法施行令14ⅠⅣ
契約の類型ごとに整理すると次のとおりです。
そもそも契約書名ではなく中身で判断されることに注意が必要です。
印紙は不要です。
1号文書は課税する文書として「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書」しており、株式や出資持分の譲渡を対象外としているためです。
論点が多く複雑なので、こちら「債務承認弁済契約書に収入印紙は必要か」に移記しました。
次のとおりです。
原則 | 印紙税の課税対象となりません。 | |
例外➊ |
敷地の面積などが記載されており、なおかつ、
その敷地についての賃貸借契約を結んだことが明らかであるとき |
単にその建物の所在地や使用収益の範囲を確定するために、敷地の面積が記載されているときには、印紙税の課税対象となりません。 その敷地についての賃貸借契約を結んだことが明らかであるとき:印紙税額の一覧表の第1号の2文書「土地の賃借権の設定に関する契約書」に該当します【1】。 |
例外➋ | 賃借人から建設協力金又は保証金などの名目で一定の金銭を受け取り、そのビルなどの賃貸借期間に関係なく一定期間据置き後、一括返還又は分割返還することを約する場合 | 印紙税額の一覧表の第1号の3文書「消費貸借に関する契約書」に該当します【1】。 |
例外 ❸ |
契約書に敷金又は保証金の受領の旨が具体的に記載されている場合 | 第17号文書(金銭の受取書)に該当する場合があります【2】。 |
【1】国税庁タックスアンサー「No.7106建物の賃貸借契約書」を参照ください。
【2】下記「建物の賃貸借契約に伴う敷金・保証金の預り証」を参照ください。
敷金の預りは、相手方のために金銭を保管するものではありませんので、敷金の「預り証」は、第14号文書(金銭の寄託に関する契約書)ではなく、第17号の2文書(売上代金以外の金銭の受取書)に該当することになります(基通別表第一第14号文書の3)。
なお、建物賃貸借契約書を作成する場合に、契約書に敷金等の受領の旨が具体的に記載されている場合には、第17号文書(金銭の受取書)に該当する場合があります(以上、国税庁HP「敷金の預り証」)。
金銭または有価証券の受取書や領収書は、印紙税額一覧表の第17号文書「金銭または有価証券の受取書」に該当し、印紙税が課税されます。
金銭または有価証券の受取書は、受け取る金銭または有価証券が売上代金に係るものかそれ以外のものかで税額が異なります。売上代金とは、資産を譲渡しもしくは使用させること(その資産に係る権利を設定することの対価を含みます。)または役務を提供することによる対価(手付けを含みます。)、すなわち何らかの給付に対する反対給付であることをいいます。
なお、営業に関しない金銭または有価証券の受取書は、非課税となっています。ここでいう営業とは、一般通念による営業をいい、おおむね営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことをいいます。したがって、株式会社などの営利法人や個人である商人の行為は営業になりますが、公益法人や商人以外の個人の行為は営業には当たりません。
(以上、国税庁HP「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」を参照)
礼金は敷金と異なり、相手方への返還を予定していない金銭です。また、礼金は、不動産を使用させることによる対価ですから、「売上代金に係るもの」として、印紙を貼り付ける必要があると考えられます。
賃料は、不動産を使用させることによる対価ですから、「売上代金に係るもの」として、印紙を貼り付ける必要があると考えられます。
債務の保証に関する契約書は、本来、第13号文書(債務の保証に関する契約書)として印紙税の課税対象になります。
ところが、主たる債務の契約書(金銭消費貸借契約書、不動産の賃貸借契約書など)に併記した債務の(連帯)保証に関する部分【1】は、課税しないことになっています。
【1】たとえば、消費貸借契約書に債務者と保証人が署名押印し、「債務者が返済期限までに返済しない場合は、保証人が全額弁済します。」と記載した部分。
原則 | 課税事項に該当しない。主たる債務の契約が課税事項に該当するか否かは問いません。 |
例外 | 併記された債務の保証契約を変更又は補充する契約書及び契約の申込書に併記された債務の保証契約書については、債務の保証契約のみが記載されていることになりますから、第13号文書(債務の保証に関する契約書)に該当する(基通別表第一第13号文書の3)。 |
以上、国税庁HP「主たる債務の契約書に併記した債務の保証に関する契約書」を参照。
売主 | 印紙 | |
株式会社などの営利法人 | 必要 | |
個人 | 売ったのが売主自身が住んでいたマイホーム、セカンドハウス | 不要 |
売ったのが収益不動産【1】 | 必要 | |
営利を目的として不動産売買を反復継続して行う【1】 | 必要 | |
公益法人 | 不要 |
【1】営業に関しない金銭または有価証券の受取書は、非課税となっています。ここでいう営業とは、一般通念による営業をいい、おおむね営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことをいいます。したがって、株式会社などの営利法人や個人である商人の行為は営業になりますが、公益法人や商人以外の個人の行為は営業には当たりません(国税庁タックスアンサーNo.7105より抜粋)。
不動産売買契約書は、売買金額によって、印紙税額が定まります。
不動産売買契約書に売買代金として金1025万円(うち消費税金25万円)との記載がある場合、売買代金を消費税込みの1025万円だとすれば貼付するべき印紙は1万円になり、消費税を含まない1000万円だとすれば印紙は5千円で良くなります。どちらでしょうか?
これについては国税庁のタックスアンサー(No.7124消費税等の額が区分記載された契約書等の記載金額)があります。以下引用します。
消費税の課税事業者が消費税および地方消費税(以下「消費税額等」といいます。)の課税対象取引に当たって課税文書を作成する場合に、消費税額等が区分記載されているときまたは、税込価格および税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めないこととされています。
なお、この取扱いの適用がある課税文書は、次の3つに限られています。
(1) 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)
(2) 第2号文書(請負に関する契約書)
(3) 第17号文書(金銭または有価証券の受取書)
設問に対する回答は、明確に消費税額を区分して記載していますので、貼付すべき印紙は5千円で良いということになります。
契約内容 |
印紙 |
解体撤去を条件とする不動産の売買契約書(売買価額が建物解体により生ずる素材価額相当額以下である等建物の素材の売買を内容とすることが明らかなもの) |
不要 |
不動産売買契約の変更合意書 |
変更が「重要な事項」に該当するときは必要(国税庁/No.7127契約内容を変更する文書)。 「重要な事項」は「1」欄の⑴~⑽(印紙税法基本通達別表第2重要な事項の一覧表)を参照 |
不動産の売渡証書(登録免許税の課税標準たる評価額が記載してあっても) |
200円 |
不動産の贈与証書 |
200円 |
不動産の買戻特約付売買契約書(再売買の予約型) | 2回分の売買代金に対応する印紙 |
不動産の買戻特約付売買契約書(解除型) | 最初の売買代金に対応する印紙 |
共有不動産の持分の譲渡契約書(交換契約書、共有物分割契約書) | 価格記載ないものは200円 |
遺産分割協議書 | 不要 |
いずれも第1号の1文書/国税庁/最終アクセス220929を参照した。