株式持ち合い(相互保有株式)によって制限されることと、持ち合い解消のルールはあるのか?!


「会社登記を出したら登記官から『株式の持ち合い解消してくださいね』と言われました。本当ですか?」これもまた、よくされる質問です。

司法書士からの回答は「登記官の説明不足」です。詳しく説明します。

もくじ
  1. 株式の持ち合いとはどんな状態か
  2. 株式持ち合いのメリット・デメリット
  3. 株式持ち合いによって制限されること
  4. 株式持ち合い解消のルールはあるのか?
  5. まとめ

どんな状態か


2社以上の企業がお互いに相手会社の株式を所有している状態。

お互いに持ち合っている状態です。

株式持ち合いのメリット・デメリット


よく言われているメリット・デメリットは次の通りです。

メリット デメリット
  1. 安定株主の形成
  2. 企業間取引の強化
  3. 敵対的買収の予防
  1. 資金繰りの悪化(∵一部資金が流動性のない他社株式)
  2. 一社の株価が落ちると、他社も落ちる

株式持ち合いによって制限されること


株式の持ち合い自体

制限されていません。

例外)子会社による親会社株式の保有

剰余金の配当

制限されていません。

議決権行使

下図のとおり株主総会での議決権行使ができなくなる場合があります。

下記条文の()書きの中が、株式持ち合いの場合に議決権行使が制限される場合です。

会社法第308条(議決権の数)
  
  1. 株主(株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
  2. 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。

抜粋すると、次のとおりです。

  1. 株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて
  2. 株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める【1】株主

は議決権を行使できない。

【1】法務省令で定める株主(会社法施行規則第67条)とは次のとおりですが、相当細かいのでココでは読み飛ばしていただいて構いません。

会社法施行規則第67条(実質的に支配することが可能となる関係)
  
  1. 法第308条第1項に規定する法務省令で定める株主は、株式会社(当該株式会社の子会社を含む。)が、当該株式会社の株主である会社等の議決権(同項その他これに準ずる法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。)に係る議決権を除く。以下この条において「相互保有対象議決権」という。)の総数の4分の1以上を有する場合における当該株主であるもの(当該株主であるもの以外の者が当該株式会社の株主総会の議案につき議決権を行使することができない場合(当該議案を決議する場合に限る。)における当該株主を除く。)とする。
  2. 前項の場合には、株式会社及びその子会社の有する相互保有対象議決権の数並びに相互保有対象議決権の総数(以下この条において「対象議決権数」という。)は、当該株式会社の株主総会の日における対象議決権数とする。
  3. 前項の場合には、株式会社及びその子会社の有する相互保有対象議決権の数並びに相互保有対象議決権の総数(以下この条において「対象議決権数」という。)は、当該株式会社の株主総会の日における対象議決権数とする。
    1. 特定基準日後に当該株式会社又はその子会社が株式交換、株式移転その他の行為により相互保有対象議決権の全部を取得した場合 当該行為の効力が生じた日 
    2. 対象議決権数の増加又は減少が生じた場合(前号に掲げる場合を除く。)において、当該増加又は減少により第1項の株主であるものが有する当該株式会社の株式につき議決権を行使できることとなること又は議決権を行使できないこととなることを特定基準日から当該株主総会についての法第298条第1項各号に掲げる事項の全部を決定した日(株式会社が当該日後の日を定めた場合にあっては、その日)までの間に当該株式会社が知ったとき 当該株式会社が知った日 
  4. 前項第2号の規定にかかわらず、当該株式会社は、当該株主総会についての法第298条第1項各号に掲げる事項の全部を決定した日(株式会社が当該日後の日を定めた場合にあっては、その日)から当該株主総会の日までの間に生じた事項(当該株式会社が前項第2号の増加又は減少の事実を知ったことを含む。)を勘案して、対象議決権数を算定することができる。 

株式持ち合い解消のルールはあるのか?!


登記官が「株式持ち合いを解消するように」と言うことがあるらしいのですが、単なる「株式持ち合い」の場合に、これを解消せよというルールはありません。

 

では、登記官は何のことを言ったのでしょうか?

下記条文をご覧ください。

会社法第135条(親会社株式の取得の禁止)
  
  1. 子会社【1】は、その親会社【2】である株式会社の株式(以下この条において「親会社株式」という。)を取得してはならない。
  2. 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
    1. 他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社の有する親会社株式を譲り受ける場合
    2. 合併後消滅する会社から親会社株式を承継する場合
    3. 吸収分割により他の会社から親会社株式を承継する場合
    4. 新設分割により他の会社から親会社株式を承継する場合
    5. 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める場合
  3. 子会社は、相当の時期にその有する親会社株式を処分しなければならない。

登記官は「子会社による親会社株式の取得・保有の禁止(会社法135)」のことを言っているのです。もう少し親切に教えてあげていただきたいものです。

 

【1】子会社とは、会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう(会社法2③)。

CF.完全子会社とは、ある会社に発行済株式の全部(100%)を所有されている会社のことです(会社法施行規則218の3)

【2】親会社とは、株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう(会社法2④)。

CF.完全親会社とは、ある会社の発行済株式の全部(100%)を所有している会社のことです(会社法施行規則218の3)

まとめ


  関係ない会社同士 子会社が親会社の株式を・・・
取得すること自体 制限なし  禁止(会135ⅠⅡ)
取得した場合の制限 議決権行使が制限される場合がある(会308Ⅰ) 議決権行使できない(会308Ⅰ)
取得した場合の処分 必要なし 相当の時期に処分必要(会135Ⅲ)