吸収合併における存続会社の資本金などの定め方


会社吸収合併を実行するときには避けては通れない会社計算規則は、難解です。

できるだけ分かりやすく解説します。

合併対価の全部又は一部が存続会社株式であるときの【原則】


存続会社にとっては、現物出資による増資と同じ。

       

承継する財産が

プラスのとき

       

  • 存続会社の資本金・資本剰余金の増加額は、消滅会社から承継した株主資本等変動額【1】の範囲内で合併契約で決めた額。
  • 存続会社の利益剰余金は変動しない【2】。

(会社計算規則35Ⅱ本文)

承継する財産が

マイナスのとき

  • 対価自己株式の処分により生ずる差損の額を、まず「その他資本剰余金」を減少させ、次に「その他利益剰余金」を減少させる。
  • 資本金・資本準備金・利益準備金は変動しない。

(会社計算規則35Ⅱ但書)

【1】株主資本等変動額とは(会社計算規則35Ⅰ)

承継会社が増加可能な株主資本等の総額のことで、次のとおりとなる。

場合

株主資本等変動額

① 支配取得に該当する吸収合併のとき 時価を基礎に算定
② 存続会社と消滅会社が共通支配下関係にあるとき 帳簿価額 〃
③ ①②以外のとき 帳簿価額 〃

【2】利益剰余金が変動しない理由

∵資本取引のときは、資本金・資本剰余金で処理すべきで、利益剰余金は営業活動によって生じた利益しか計上できないという会計処理をここでも確認したもの。

【例外その1】合併対価の全部が存続会社の株式であり、かつ、支配取得に該当しないとき


合併対価の全部を、存続会社の株式によるとき(交付される対価の中に現金などが含まれないとき)には、両方の貸借対照表を単純に合算しても特に支障はない。

支配取得に該当する吸収合併を除外するのは、その場合の株主資本等変動額は、時価を基礎に算定することになるためである(上記原則【1】をご参照。)。

そこで

「消滅会社の資本金・資本剰余金・利益剰余金の額」をそのまま「存続会社の増加する資本金・資本剰余金・利益剰余金」とできる(会社計算規則36Ⅰ)。

 

※ 吸収合併では利益剰余金を増やせないという原則(35Ⅱ本文)に関わらず、利益剰余金を増やせることを規定している。

 

但し、対価自己株式があるときにはその帳簿価格から減じて計算すべし(会社計算規則36Ⅰ但書)

【例外その2】合併対価がないとき


完全子会社同士の合併を想定した規定です。

「消滅会社の『資本金・資本剰余金の合計』」をそのまま「存続会社の増加する『その他資本剰余金』」とできる(会社計算規則36Ⅱ)。

「消滅会社の『利益剰余金』」をそのまま「存続会社の増加する『その他利益剰余金』」とできる(会社計算規則36Ⅱ)。

【まとめ:吸収合併存続会社の資本金など】


目的に応じて、どの条文を使うか選択して使います。

目的 使う条文 分割対価 他の注意点
存続会社の資本金を増やしたくない 35ⅠⅡ 全部を存続会社株式 合併契約において、増加資本金をゼロと定める。
35ⅠⅡ 一部を存続会社株式 合併契約において、増加資本金をゼロと定める。 
36Ⅰ 全部を存続会社株式 ×合併契約において、増加資本金をゼロと定めなかったときには、存続会社の資本金は増加してしまう。
36Ⅱ なしとする。

存続会社の資本金は増えない。

その他資本剰余金が増える。

存続会社の利益剰余金を増やしたい

36Ⅰ 全部を存続会社株式 消滅会社の利益剰余金と同額、存続会社の利益剰余金が増える。
× ×一部を存続会社株式 増えない。∵35Ⅱ本文により利益剰余金は変動しない。 
36Ⅱ なしとする。 消滅会社の利益剰余金と同額、存続会社のその他利益剰余金が増える。 

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