とても古い抵当権の抹消(休眠担保権抹消)


登記簿に、登記された日付が明治や大正の抵当権や根抵当権がついていることがあります。

これらの古い抵当権等の登記を「休眠担保権」といいます。

 

これを抹消して綺麗な登記簿にする必要があり、この手続を休眠担保権抹消手続といいます。


どんな方法があるのか?!


休眠担保権を抹消する方法は、全部で6種類あります。

 抵当権抹消の方法 抵当権者が
個人の場合  会社の場合
共同申請による抹消登記【原則】【1】
判決による抹消登記【2】
特約がある場合に特約成就を立証したとき(不登法69)【3】

抵当権者

行方不明

公示催告・除権決定(不70ⅠⅡ)【4】 △【7】
債権証書&弁済証書による抹消(不70Ⅲ前段)【5】
弁済期から20年経過&全額供託で抹消(不70Ⅲ後段)【6】

【1】登記簿上の抵当権者の相続人を戸籍を辿って探し出し、抹消登記への協力を依頼する方法。

【2】抵当権者から抹消登記の協力を得られない場合には、判決による抹消を目指します。

【3】抵当権に抵当権者死亡・解散によって抵当権が消滅する旨が登記されている場合に、所有者が、「抵当権者の死亡又は解散の事実を立証」できる添付書類を添付したときは、所有者が単独で抹消登記できます(不動産登記法69)。

【4】公示催告を申立(不登法70Ⅰ)、除権決定(非訟事件手続法106Ⅰ)に基づき、所有者が単独で抹消登記できます(不登法70ⅠⅡ)。

被担保債権の時効消滅を理由に除権決定を求めるには、予め時効援用通知を行なう必要があります。抵当権者が行方不明のときには、時効援用の意思表示の公示送達をする必要があり、この後、公示催告除権決定(6か月)と時間を要することになります。

【5】債権証書(借用書など)と抵当権の被担保債権が消滅したことを証明できる書類(弁済証書など)を添付して、所有者が単独で抹消登記できる(不登法70Ⅲ前段、不動産登記令別表26)

【6】被担保債権から20年経過、かつ期間経過後に、被担保債権元本、利息、遅延損害金全部を供託し、供託したことを証する書面を添付して、所有者が単独で抹消登記できる(不登法70Ⅲ後段)

【7】会社や法人が行方不明に該当する場合とは、法人が大昔に解散などしていて法務局の登記簿原本すら破棄されている場合です。

抹消方法はどういう順で検討すべき?!


どの方法を採用するべきか、検討すべき順は次のとおりです。

特約がある場合には、特約成就による単独抹消(不69)を検討

担保権者が行方不明といえるか検討する。

自然人の場合、行方不明とは、登記簿上の住所に居住していないこと。

難しいのは・・・

会社・法人の場合、行方不明とは、不動産登記法上、どういった状態か?!

抵当権者である法人の状態 行方不明といえるか否か
法人について登記簿に記載がなく、かつ、閉鎖登記簿が廃棄済みであるため、その存在を確認出来ない。 行方不明といえる(昭和63.7.1民三3456)
実態が消滅しているが、登記簿が実在している。 行方不明ではない(昭和63年度首席登記官合同質疑)
会社の本店が不明
代表者の住所が不明
代表者が行方不明
清算人が全員死亡
清算人が行方不明
清算人の存否不明
登記不要の法人の場合、監督官庁から法人の不在証明が発行された場合 行方不明として取り扱って良い(昭和63年度首席登記官合同質疑)

借用証書と弁済証書があるときは、不登法70Ⅲ前段の担保権か種類を確認する。

休眠担保抹消の対象となる担保権の種類(不70Ⅲ前段) 対象とならない担保権の種類

先取特権

質権

抵当権

(元本確定後の)根抵当権、根質権

仮登記担保

譲渡担保

買戻特約

(元本確定前の)根抵当権、根質権

❸弁済期から20年経過&全額供託か❹公示催告&除権決定か❺判決による抹消かを比較検討する。

弁済期から20年経過&全額供託

(70Ⅲ後段)

公示催告・除権決定

(70ⅠⅡ)

判決

(63)

×抵当権者が行方不明でないと使えない。 ×抵当権者が行方不明でないと使えない。 〇抵当権者の行方不明不要
〇抵当権者が行方不明でも、不在者財産管理人の選任を要さない。 〇抵当権者が行方不明でも、不在者財産管理人の選任を要さない。

×個人である抵当権者が行方不明のときは不在者財産管理人の選任を要する。

×法人である抵当権者もその代表者も不明のときには特別代理人の選任を要する。

×20年経過していないと使えない【1】 〇20年経過不要 〇20年経過不要
×使える担保権が限定されている【2】 〇限定なし 〇限定なし
×被担保債権の元本・利息・遅延損害金全額を供託する必要があるので、債権額が高額なら使えない(一部弁済・全額弁済の証明があっても全額供託必要なので二重払いになる。)。 〇供託不要 〇供託不要

×供託した金額に計算ミスがあって不足していれば、先の供託金を取り戻せず、かつ再度供託をし直すことになる。その分も二重払いになる。

〇供託しないので心配ない 〇供託しないので心配ない

〇抹消原因日付によっては、抵当権者の相続登記を要するのが原則だが、休眠担保権の抹消においては事の性質上相続登記を要さない(昭和63年度首席登記官合同質疑81)

△抹消原因日付によっては、抵当権者の相続登記を要する。 ×抹消原因日付により、抵当権者の相続登記を要す。

〇抵当権者死亡の蓋然性が高くても、相続人を確認する必要はない(昭和63質疑)

△申立前に裁判所と要打合わせ ×抵当権者の相続人調査のために戸籍謄本取得の費用と時間を要する。

〇抵当権者が自然人の場合、不在住証明書の取得が必要だが、それほどの負担ではない。

△申立前に裁判所と要打合わせ  

〇抵当権者が自然人の場合、登記簿上の住所(住所移転しているときはその住所にも)に対して、配達証明付き郵便を送るが、「宛名不完全」又は「宛て所に尋ね当たらず」のスタンプがあれば行方不明といえる。

それほどの負担ではない。

△申立前に裁判所と要打合わせ 〇登記簿上の住所に配達証明郵便を送付する必要はない。

〇弁済を証明する書類は必要だが、供託通知書がこれにあたるので、負担はない。

×権利が消滅していることを証明する書面(領収書、完済証明、時効援用通知など)を裁判所に提出する必要がある。  

〇相手方が反論・反証する機会は基本的にないので、確実に抹消できる。

△相手方が反論・反証する機会は少ないので、抹消出来る可能性が高い。 ×相手方の思わぬ反論や反証で抹消できない可能性がある。

【1】弁済期に関する登記の有無

S39.3.31以前受付の登記

登記されている。

登記されていない場合は、弁済期の定めがないものとして債権成立の日を弁済期として取り扱う(S63.7.1民三3499)

S39.4.1以降受付の登記 抵当証券発行特約がある 登記されている(不88Ⅰ⑥)
抵当証券発行特約がない 登記されないので、「被担保債権の弁済期を証する書面」の添付を要する(不登令別表㉖二⑴)

【2】対象となる担保権

休眠担保抹消の対象となる担保権の種類(不70Ⅲ前段) 対象とならない担保権の種類

先取特権

質権

抵当権

(元本確定後の)根抵当権、根質権

仮登記担保

譲渡担保

買戻特約

(元本確定前の)根抵当権、根質権

所要時間


当グループ各事務所にご相談いただいたときから、最終解決までの所要時間を記載します。

戸籍収集が必要な場合には、その時間を加算しております。

 抵当権抹消の方法 所要時間
共同申請による抹消登記 1か月~【1】
判決による抹消登記 6か月~
特約がある場合に特約成就を立証したとき(不登法69) 2か月

抵当権者

行方不明

公示催告・除権決定(不70ⅠⅡ) 6~7か月
債権証書&弁済証書による抹消(不70Ⅲ前段) 2~3か月
弁済期から20年経過&全額供託で抹消(不70Ⅲ後段) 2~3か月

【1】抵当権者の対応にもよりますので、「1か月~」としております。実際には、「あれこれ」言って抹消に応じない場合には、訴訟手続(判決による抹消登記)への移行をアドバイスさせていただくことも多いです。

司法書士の報酬・費用


事案によって大差がありますので、ご相談内容を伺ってから、個別具体的に見積書を提出いたします。

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