差押・仮差押の取下書のチェックポイント(司法書士向け)


不動産取引をしようとする不動産に「差押え」や「仮差押え」が入っていることがあります。

不動産取引においては、売主は買主に対して「負担のない不動産を移転する義務」がありますので、司法書士としては、差押えや仮差押えについても確実に除去できるよう手配する必要があります。

 

※ この記事は「すでに差押え又は仮差押えの登記が入っている状態における取引」について記載しています。

これに対して「仮差押が入りそう、差押えされそうな取引」の場合には、その旨を当事者全員にあらかじめ説明したうえ、資金移動から登記申請までのタイムラグができるだけ無くなる方法で行います。

すなわち、出頭申請を行う場合には、法務局到着後閲覧、申請が終わるまで当事者全員を取引場所に固定します。オンライン申請を行う場合には、閲覧、申請が終わるまで当事者全員を取引場所に固定します。申請とほぼ同時に実行しても、支障ありません。

なお、抹消登記もある場合には、どうしても実行を先に行う必要がありますが、閲覧、申請が終わるまで当事者全員を取引場所に固定します。

もくじ
  1. 差押え・仮差押えの種類
  2. 差押え・仮差押えが抹消登記されるまでの流れ
  3. (民間の差押え)取下書は、いつチェックすべきか?!
  4. (民間の差押え)取下げに必要な書類
  5. (民間の差押え)取下書のチェックポイント
  6. (民間の差押え)取下書の提出先

差押え・仮差押えの種類


民間による差押え・仮差押え

直接法務局に対して、抹消登記を申請することはできません。

裁判所に対して、差押え等の取下書を提出し、裁判所から法務局に対して抹消登記が嘱託されます。

行政による差押え・仮差押え

直接法務局に対して、抹消登記を申請します。

通常、行政が抹消登記嘱託書(申請書)を作成してきますので、それを司法書士が預かって、登記申請します。

 

差押え・仮差押えが抹消登記されるまでの流れ


民間による差押え・仮差押えが抹消登記されるまでの流れは、次のとおりです。

なお、行政(国・都道府県・市町村)による差押え等が抹消登記されるまでの流れは、通常の不動産登記と同じです。

不動産取引(残代金支払、物件の引渡)の完了

(裁判所へ)差押え等の取下げ

(法務局へ)不動産登記申請

(裁判所から法務局へ)差押え等の抹消登記の嘱託

全ての不動産登記の完了

裁判所は、取下げから数日以内に抹消登記を嘱託してくれます。

したがって、不動産取引の登記申請の処理中に嘱託書が法務局へ到着するのが通常(登記簿はずっと事件中)ですので、所有権移転登記だけが完了し差押えが残っている登記簿を取得してしまうことは少ないと思います。

それでも、司法書士としては、差押え登記も抹消されていることを確認のうえ、納品するように注意しましょう。

(民間の差押え)取下書は、いつチェックすべきか?!


通常の抹消登記同様に、取引の数日前にはチェックを完了しておきましょう。

(民間の差押え)取下げに必要な書類


次の書類が必要になります。

  1. 取下書(正本・副本・控え)計3通
  2. (本人申立の場合)差押命令申立書の控え(裁判所の受付印あるもの)
  3. 「2.」がない場合には、債権者の印鑑証明書
  4. 「2.」がないので「3.」を添付する場合において、差押債権者の住所が変更しているときは、差押債権者の住所証明書
  5. 登記権利者義務者目録(抹消登記嘱託用)1通
  6. 物件目録(抹消登記嘱託用)1通
  7. 郵便切手
  8. 収入印紙(抹消登記嘱託用)不動産1個につき1,000円
  9. 不動産の登記事項証明書(1か月以内のもの)各1通

(民間の差押え)取下書のチェックポイント


1.取下書

  • 正本、副本、控えの計3通が必要です。
  • 取下書は、①取り下げる旨記載された表紙、②債権者、債務者及びこれらの代理人が記載された「当事者目録」、③登記簿の記載をそのまま記載した「物件目録」そして④「登記権利者・義務者目録」の4頁で構成されます。
  • 「登記権利者」には、登記簿上の現所有者を書く必要があります。住所・氏名は、登記簿上の住所・氏名を記載します。引越している等の場合には、現在の住所氏名と一致しませんが構いません。また、売買に伴なう差押え取下げの場合には、差押え取下げと所有権移転登記を同日に行い、差押えの抹消登記が嘱託される時点では、登記簿上の所有者は「買主」になっていますが、「売主」の住所氏名を登記簿上記載されたとおり記載すれば足ります。
  • 「登記義務者」には、差押え債権者を記載します。住所・氏名は、登記簿上の住所・氏名を記載します。引越している等の場合には、現在の住所氏名と一致しませんが構いません。
  • (仮)差押命令申立時に申立書に押した印鑑と同じ印鑑による押印が必要です。司法書士としては、同じ印鑑が押印されているか照合する必要があります。差押命令申立書控え(裁判所受付印のあるもの)がない場合には、照合できませんので、債権者の印鑑証明書を用意してもらいます。また、印鑑証明書を添付する場合において差押え債権者の住所が変わっているときには、 住民票など関連のつく書類も必要です。

2.登記権利者・義務者目録

裁判所が登記嘱託書を作成する素材になるものです。

取下書に合綴されたものと同じものを用意します。

そのほかの注意点は「1.申立書」をご確認ください。

3.物件目録

裁判所が登記嘱託書を作成する素材になるものです。

取下書に合綴されたものと同じものを用意します。

そのほかの注意点は「1.申立書」をご確認ください。

4.登記事項証明書

1か月以内のもの。

裁判所が登記嘱託書を作成する際に、参照します。

5.郵便切手

各裁判所(支部)に電話で問い合わせると教えてくれます。

下記は、直近に問合せした神戸地裁姫路支部の例です。

  • 登記嘱託用 法務局1か所につき,519円×1組,529円×1組
  • 債務者通知用 債務者の数×84円

(民間の差押え)取下書の提出先


提出先裁判所(管轄裁判所)

登記簿謄本に下記のような記載があろうかと思います。

原因 令和年月日神戸地方裁判所○○支部仮差押命令

提出先の係り

ここに書くほどのことでもありませんが・・・

裁判所も優しく教えてくれますので、聞いていただければ幸いです。 

  • 差押えの取下げであれば、執行係
  • 仮差押えの取下げであれば、民事係
  • 古い差押えや仮差押えの取下げであれば、記録係