【改正民法対応】遺言書見直しチェックリスト


平成31年の自筆証書遺言の要件緩和を皮切りに、遺言に関する多くの法改正が行なわれました。

改正によって、これまでは出来なかったことが出来るようになっています。

ですから、すでにお書きになった遺言書も見直すべきタイミングかもしれません。

遺言書を見直すべき点をまとめました。

 

10年以上続く家裁事件勉強会の研究成果です。

もくじ
  1. はじめに遺言能力をチェック
  2. お手元の遺言書をチェック
  3. 新しく出来るようになったことをチェック
  4. 従来からの項目をチェック
  5. 遺言の保管をチェック
  6. 遺言執行引受予諾契約をチェック
  7. 遺言執行の際にもチェック
  8. 司法書士の報酬・費用
  9. 人気の関連ページ

はじめに遺言能力をチェック


遺言をやり直すためには、遺言者に遺言能力があることが必要です。

遺言能力がない場合には、遺言の変更を諦めることも大切です。

なお、複雑な遺言であるほど、後日遺言の無効を争われやすくなります。

チェックすべき項目 対策
遺言者の年齢が60~70歳以上 成年後見用診断書【1】を取得したうえ診断結果に基づき対応
遺言者に認知症がある 成年後見用診断書【1】を取得したうえ診断結果に基づき対応
遺言者が成年被後見人などに該当 民法973条に基づき作成します。

【1】成年後見用診断書は、こちらからダウンロードできますので、ドクターの診断を依頼しましょう。診断結果ごとの対応方法は下表のとおりです。

診断書(成年後見制度用)抜粋  

3 判断能力についての意見

診断書の意味と対応方法

□ 契約等の意味・内容を自ら理解し判断できる。

判断能力に問題なし

☛遺言能力に問題なし

□ 支援を受けなければ・・・判断が難しい場合がある。

補助相当の認知力

☛遺言能力に問題あり。司法書士に相談

□ 支援を受けなければ・・・判断することができない。

保佐相当の認知力

☛遺言能力に問題あり。司法書士に相談

□ 支援を受けても・・・判断することができない。

後見相当の認知力しかない

☛民法973条に基づき遺言

お手元の遺言書をチェック


チェックすべき項目 対策
銀行や信託銀行が作成した遺言である

司法書士にチェックしてもらいましょう。

銀行に遺言を任せてはいけない6つの理由

平成31年1月13日以前作成の自筆証書遺言で

目録を全部直筆で書いていない

改正以前の自筆証書遺言は、全文直筆が必要ですので、書き直しが必要ですが、現時点で遺言書を作成(変更)する場合、目録はタイプ打ちなどでも結構です。

「特定の不動産」を「相続させる」旨の遺言である この文言の遺言の場合には、改正前は遺言執行者が単独で名義変更できませんでしたが、新たに作り直すことで遺言執行者が単独で相続登記をすることが出来るようになります。
「特定の不動産」を「遺贈する」旨の遺言である この文言の遺言の場合には、改正前後で変更ありませんので、作り直しは不要です。
遺言執行者に司法書士を選任していない 相続は早い者勝ちになりましたので、遺言執行者は実務慣れした司法書士を選任して、素早く遺言執行を行なう必要があります。当グループ各事務所でも、遺言執行を引き受けておりますので、ご検討ください。

民法改正によって新しく出来ることをチェック


チェックすべき項目 対策
配偶者居住権

ご自宅が遺産の大半を占める場合に配偶者の居住権を保護するために、新しく出来た制度です。

もっとも配偶者居住権を確保するためには遺言では足りず始期付配偶者居住権設定契約と仮登記を推奨しております。

令和元年7月1日以前に婚姻20年夫婦の居住用不動産を贈与していた場合

生前たくさんの贈与を受けた方は、取り分が減ってしまうことがあります。これを回避するためには、遺言を新たに作成して、特別受益持戻免除を記載します。

令和元年7月1日以降に婚姻20年夫婦の居住用不動産を贈与していた(する)場合 特別受益の持戻し免除と推定される(民903Ⅳ)ので、特段の対応は不要です。
「特定の不動産」を「相続させる」旨の遺言である この文言の遺言の場合には、改正前は遺言執行者が単独で名義変更できませんでしたが、新たに作り直すことで遺言執行者が単独で相続登記をすることが出来るようになります。

従来からのチェック項目(自筆証書遺言)


形式的なこと

形式的といっても侮ってはいけません。遺言書は、形式が整っていなければ効力を発生しません。

チェックすべき項目 対策

①遺言というタイトル、②本文、③日付、④氏名は全て直筆で記載しましたか?

代筆やワープロはダメです。

法改正で「遺産目録」のみワープロ作成が認められるようになりました。

日付は明確に記載されましたか?

〇 令和〇年〇月〇日

〇 2020年〇月〇日

☓ 令和〇年〇月吉日∵一月に「吉日」は何日もあるので、日付を記載したことにならない。

遺言者の氏名は記載しましたか?

戸籍どおりの文字で、署名してください。

☓ 芸名

☓ 雅号

署名の後ろに押印はしましたか?

〇 認印や三文判でも結構ですが、実印を押印されるのが通常です。

☓ シャチハタ

☓ 戦国武将や書家が使う花押はダメです。

遺言が複数ページになった場合、契印を押しましたか?

ページの綴目に署名の後ろに押した印鑑と同じ印鑑で押印し、一体となった文書の形式にしてください。

遺言は一人ずつ作成されましたか?

☓ 仲の良いご夫婦でも1通の書類に記載すると無効です。

訂正した場合、訂正の方法は正確ですか?

☓ 訂正に失敗すると、訂正した部分が無効になります。

中身に関すること

チェックすべき項目 対策

遺産をもらう方の特定方法

氏名だけでは「どこの誰か」分からずに後日争いになることがあります。最低限、その方の「生年月日」「住所」「あなたとの関係性」は記載しましょう。

「本籍地」も記載して欲しいです。∵引越をなさって3年経過すると役所が書類を破棄して追跡ができないことがあります。 

財産をあげる場合には明確に「相続させる」か「遺贈する」にしましょう 「譲る」「任せる」「渡す」などは、不明瞭で後日争いになる可能性があります。
「〇〇には一切財産をあげない」との表現はありませんか?

遺言書の文言によっては、遺言執行者の選任を申し立てて、とても厄介な「相続人廃除」の手続をとる必要があるので、注意が必要です。

「相続人廃除」は生前に行なうことも可能ですし、その方が立証が有利です。

相続人廃除についての詳細は、コチラのQ&Aを参照ください。

ある相続人の遺留分を侵害していませんか?

全相続人の遺留分を確保するか否かは、あなたの自由です。

でも、遺留分がもらえなかった相続人は多くもらった他の相続人に対して遺留分侵害額請求を行なう可能性があります。

遺言作成の理由が、兄弟間の公平を図るためのものである場合

兄に多額の生前贈与をしているから、相続では兄の取り分が少ない旨を明記してください。

何年頃に何の為にいくら贈与したのかを明記しておくことが大切です。

特別受益と言います。特別受益分は遺産の額に戻して計算することも、遺産の額に戻すことを免除することも出来ます。

特別受益の詳細はコチラ

特別受益の持戻し免除の詳細はコチラ

遺言作成の理由が、兄弟のうち特に一人の貢献に感謝するためのものである場合

具体的に貢献した内容を明記しましょう。

寄与分の詳細はコチラ

葬儀費用をご自身の遺産から支出してほしい場合

その旨を明確に定めましょう。

葬儀費用を誰が負担するべきかという問題は裁判例も確立しておらず、相続人間で揉める原因となります。葬儀費用負担の詳細はコチラ

封筒について

チェックすべき項目 対策

封筒に入れる必要性はありません。

中身を簡単に見られたくない場合のみ、封筒に入れますが、その場合には次のような対策をしましょう。

封筒に入れる場合

誰が見ても分かるように表に「遺言書」と書いておきましょう。

封筒に入れても封をする必要性はありません。

中身を見られたくない場合のみ、封をしますが、その場合には次のような対策をしましょう。

封筒に入れて封をした場合

封筒のおもてに「裁判所に提出必要。裁判所外で開封した場合には過料に処せられます。」と記載しておくと、後日問題になりません。

封をした場合でも開封されることがあります。封の上から押印しておくと開封された場合、発見しやすいです。

遺言の保管に関すること


作成されたのが直筆で書かれた自筆証書遺言であっても、公証役場で作成する公正証書遺言であっても、遺言書の天敵は「遺言書の存在をもみ消されてしまう(無視されてしまう)こと」です。

  • 遺言が存在している場合には、遺言書に反する遺産分割協議は無効です。
  • また、遺言書を自分の利益のために隠した場合には、相続人から除外(難しい言葉で相続欠格)されます。

それでも多くの遺言書が無視されているのではないかと思います。

 

また「遺言書の存在に気付かれない」というのも多いと思います。

 

これらを予防する方法が幾つかあります。

 

一番良いのは、司法書士に保管を依頼することです。

司法書士に保管を依頼し、年に何度か司法書士と連絡を取りましょう。

司法書士は法律上、厳しい守秘義務がありますので、あなた以外の問合せには一切回答しません。

司法書士はあなたと連絡が取れなくなった場合には、あなたの所在や生死を確認し、万一のときにはご遺族に遺言書の内容を公開します。

 

もう一つは、法務局に遺言書の保管を依頼し、法務局に保管を依頼していることを全相続人に伝えておくことです。

令和2年7月1日より自筆証書遺言を法務局が保管するサービスが始まりました(詳しくはコチラをご覧ください。)。

法務局はあなたが生存している間は、あなた以外の請求で内容を公開することはありません。

誰かに思い出してもらえるよう全相続人に伝えておくことが大切ですが、これがデメリットでもあります。遺言を書いたという、あなたに対して相続人から「内容を教えろ」「自分に有利なように遺言を書き直せ」と圧力を掛けられることがあるからです。

 

やはり、司法書士に保管を依頼しておくのが、一番良いでしょう。

遺言執行引受予諾契約をチェック


チェックすべき項目 対策
銀行・信託銀行作成の遺言書の場合

遺言執行の報酬は高過ぎないかチェックしてください。

通常は司法書士などの専門家に直接依頼した方が安くなります。

中途解約すると違約金などを請求される条項がある場合

銀行・信託銀行の場合、解約すると違約金などを請求されることがありますので、司法書士にご相談のうえ、注意して対応ください。

遺言内容を相続人に通知する義務が明記されていない場合 明記されていなくても、遺言内容を全相続人に通知する義務が法律に規定されました(民1007Ⅱ)ので、ご注意ください。

遺言執行の際にも・・・


遺言を執行する際にも、遺言書作成時期と施行時期を見比べて、遺言書の各条項の有効・無効を判断する必要があります。

法改正は、ある時点で一気に行なわれた訳ではありませんので、遺言書の条項を一つずつ丁寧に見ていく必要があります。

司法書士の報酬・費用


すぐに通読できる文量の遺言書の場合には、通常の法律相談30分5000円(税別)で遺言の内容を精査(チェック)できることもあります。

相続人関係が複雑な場合、遺産内容が複雑な場合には、相談をお受けした時点で見直しの費用をお示しいたします。

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