他人への貸付金の相続手続

相続法改正附則3条・新民法899の2


他人への貸付金(債権)の対抗要件について、改正相続法では大幅な変更が加えられました。

 

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債権の相続に関する前提


  • 債権が可分債権である場合、遺産分割協議を待たず当然に法定相続分ずつ各相続人に帰属し、各相続人が債務者に請求できる。
  • 遺言があれば、遺言のとおり帰属する。
  • 遺産分割で法定相続分と異なる分割をした場合は、遺産分割のとおり帰属する。
  • 預金債権は可分債権ではあるが、遺産分割協議を行なわないと払戻しできない。

旧民法


  • 遺産分割により、債権を承継した相続人が債務者に通知する場合は相続人全員から通知するとされていました。∵民法467条の債権譲渡の対抗要件に準じて考える。〔受益相続人に激辛〕
  • 遺言により、債権を承継した相続人は、何等の通知なく対抗できました。遺言が無いと思って、一部の相続人に法定相続分で返済していても、その返済は無効でした。〔受益相続人に激甘〕

遺産分割か、遺言かによって、債務者(借主)は不安定な地位に置かれる。

新民法


  • 施行日前に発生した相続であっても(ここが附則3条)、
  • 法定相続分を超える債権を遺言や遺産分割で承継した相続人は、債務者に通知(対抗要件)しない限り、その債務者に対抗できない。
  • 一方、相続人全員から通知を強いることは、相続人間に対立がある場合には困難。
  • 権利取得した相続人の一人が「遺言内容」又は「遺産分割協議の内容」を明らかにして【1】単独で通知すれば【2】、これを共同相続人全員から債務者に通知したことにするとした(民法899の2Ⅱ)。

【1】「明らかにして」とは、どういうことか?

「単に遺言の内容を通知するというだけでは足りず、例えば、受益相続人が遺言書の原本を提示し、債務者の求めに応じて、債権の承継の記載部分についての写し等を交付するというような方法をもって通知するということを想定」している(第26回議事録14p・満田関係官発言)。

【2】通知は、通常、確定日付ある証書にて、すなわち、内容証明郵便にて行います。

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律附則第3条

新民法899条の2の規定は、施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による債権の承継がされた場合において、施行日以降にその承継の通知がされるときにも、適用する。

 

新民法899条の2(共同相続における権利の承継の対抗要件)

1.相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

2.前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

債務者からの承諾


債務者からの承諾も、対抗要件となりますが、この場合には、特別の規定がありませんので、債権者の相続人全員に通知する必要があります。

まとめ


遺言又は遺産分割協議で、他人への債権を相続した相続人は・・・

全相続人の協力が得られる場合 全相続人から債務者宛に内容証明郵便で通知する。
全相続人の協力が得られない場合  受益相続人から債務者宛に「遺言内容」「遺産分割協議内容」を明らかにして、内容証明郵便で通知する。

債務者の協力を得て(協力を得るためには「遺言内容」「遺産分割協議内容」を見せて)債務者から、債権者相続人の一人であるご自身に対して【1】【2】、承諾書を内容証明郵便で発送してもらう。

【1】債権譲渡に関する古い判例ではありますが、「指名債権の譲渡を第三者に対抗するための債務者の承認は(債務者が債権譲渡を認識している以上),債権の譲渡人または譲受人のいずれに対するものであってもよい」(大判大6.10.2)。

【2】承諾の時期は、譲渡前の予めの承諾も、債権譲渡の目的たる債権及び譲受人がいずれも特定している場合には、その後あらためて民法467条1項所定の通知・承諾がなくても、債務者に対抗できる(最判昭28.5.29)。

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