ご家族がお亡くなりになった後に、銀行に行くと出金や入金ができなくなっていることがあります。
これを「銀行預金の凍結」といいます。
一旦凍結されると、相続手続完了までは、口座を利用することができなくなります。これは被相続人のキャッシュカードなどを無権限の者が勝手に使って引き出しすることを予防するための措置です。
遺言執行者になった場合、被相続人名義の預金口座を凍結する必要があります。
成年後見人が被後見人死亡後、相続人に引き渡す場合も銀行口座は凍結してから引き渡します。
また預貯金通帳やキャッシュカードを占有している一部相続人による引き出しが心配なときには、相続人から銀行に通知して止めることが可能です。
※「債務整理や自己破産に伴なう口座の閉鎖」については債務整理のコラムをご覧ください。
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遺言執行者から電話一本で凍結できる場合もありますが、通常は金融機関に対して内容証明郵便で遺言執行者就任を通知して凍結させます。
相続人から凍結したい場合には、ご自身が相続人であることを証明する相続人戸籍、被相続人の除籍謄本や除住民票を銀行に提出すれば止めてもらえます。
銀行が勝手に凍結することもあります。銀行員が葬儀を見たり、新聞の訃報欄に掲載されたのを見つけた場合などです。
口座凍結すると
×=できなくなること、〇=できること
で表示しました。
大手都銀とゆうちょ銀行については次の通りです(令和3年2月17日あなまち司法書士事務所調べ)。
手続名 | MUFJ | SMBC | みずほ | ゆうちょ銀行 | |
出金 | 窓口での出金 | × | × |
× |
× |
ATMでの出金 | × | × | × | × | |
仮払い請求(民909条の2)があったときの出金 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
仮分割の仮処分(家事事件手続法200Ⅲ)による出金 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
入金 | 窓口での入金 | × | × | × | × |
ATMでの入金 | × | × | × | 〇 | |
第三者 | 第三者の引落 | × | × | × | × |
第三者からの振込みの受け入れ | × | × | × | 〇 | |
その他 | 貸金庫への入室、開扉【1】 | × | × | × | ー【2】 |
【1】貸金庫への入室を制限されることは、実は大問題です。遺言書が貸金庫で保管されていることがあるからです。遺産分割協議が完了したので貸金庫を開けて貰ったら、遺産分割協議と異なる遺言書が発見された場合「遺言は遺産分割協議に優先します」ので、遺産分割協議は無駄になってしまいます。
この点については、「貸金庫があるときの相続手続」で詳しくコメントします。
また、以上の理由から、貸金庫は遺言書の保管に適していませんので、ご注意ください。
【2】ゆうちょ銀行には貸金庫はありません。
銀行が求める書類の提出です。つまり
場合 |
主な必要書類 |
公正証書遺言がある場合 |
公正証書遺言 被相続人(遺言者)死亡の記載のある戸籍 受益相続人の印鑑証明書 |
法務局保管自筆証書遺言がある場合 |
法務局発行の遺言書情報証明書 (被相続人〔遺言者〕死亡の記載ある戸籍) 受益相続人の印鑑証明書 |
自筆証書遺言がある場合(法務局保管以外) |
家裁に提出し検認を経た自筆証書遺言 被相続人(遺言者)死亡の記載のある戸籍 印鑑証明書(受益相続人) |
遺言書がない場合(=遺産分割協議) |
遺産分割協議書(全員実印押印) 印鑑証明書(全相続人) 被相続人の出生から死亡までの戸籍 |