司法書士は即独か勤務か?独立するタイミングは?


「即独か勤務か」「独立するタイミング」これらは、司法書士試験の合格発表後、毎年SNSで議論されるテーマです。

私自身は3年半の勤務経験を経て独立しましたが、試験と実務の違いに苦労しました。したがって、私は特段の事情がない限り、一度は勤務すべきだと考えています。

 

私がそう考える理由を説明することで、勤務を経験した後独立される方が増えれば幸いです。 

もくじ
  1. 即独をオススメしない5つの理由
  2. 即独もやむを得ない特段の事情
  3. 独立のタイミングは?!
  4. 結びに代えて

即独をオススメしない5つの理由


合格率3%の試験に合格したから、即独でも成功できるという誤解

100人入る受験会場で僅か2、3人しか受からない司法書士試験。合格直後は無敵感を感じます。

でも、その無敵感は間違っています。何故なら司法書士は皆その3%の試験に合格した方ばかりです。その大半がいずれかの事務所で修行をし、所長や先輩司法書士の仕事ぶり(集客方法やプレゼン方法などを含む)を学んで独立した猛者ばかりです。

その証拠にどこの事務所でも良いので、就職してみてください。試験合格しただけで実務を知らない(あまり役に立たない)ご自身を発見できるでしょう。人の実務を見てその上に積み上げるのと、ゼロから自分で実務を作るのとでは「雲泥の差」があります。

即独を勧める司法書士は、あなたが目指す司法書士か?その方自身も即独か?

即独すれば良いと言ったその司法書士。業界でのポジション、年収や主にやっている仕事は何でしょうか?

全てを知ったうえで、その方も即独であれば、あなたも即独すれば良いと思います。

ただし、その方のポジション、年収、業務があなたの希望と異なっていたり、その方自身が即独でない場合には、その方の言葉には何等信ぴょう性はありません。

即独を勧める方は、本当に親身になってくれているか?

私は、24歳で即独しようとしたとき、始めて「親族会議」なるものが招集され親戚のおばちゃん、おじちゃん全員から、全力で止められました。

私が即独を諦めたのは、(人数による圧力もありますが)ある商売をしていた叔父に言われた「どこかで1年でも修行してからなら、良いお客さん紹介してあげるから。でも、修行もせんと独立するなら紹介でけへんで」という言葉でした。

商売に1番大切なものは信用です。試験を受かっただけで実務を知らない人間に、自分の大切な友人知人会社を紹介できない。自分の信用をも傷つけることになるから。3年半修行し開業後20年を迎えようとしている「今」であれば、よく理解できる言葉です。

そして、親族(身内)ほど親身になってくれる人は、外部にはほとんど居ません。

多種多様化した司法書士事務所

将来、どんな事件を担当したいかによって、考え方は違うと思います。司法書士の仕事もここ20年で本当に多様化高度化し、事務所の姿も様々なものになりました。

例えば、

  1. 不動産取引のみを不動産会社から下請けして効率よく稼ぐ不動産登記専従事務所
  2. 会社登記を専門で行う商業登記専門事務所
  3. 後見を専門で行う後見事務所
  4. 不動産登記・会社登記・簡裁訴訟・成年後見まで何でもこなす総合事務所
  5. これらの手続業務から抜け出し事業承継や資産承継プランを提供している事務所

事務所も多様なら、学べるスキームも異なります。詳しくは「司法書士の就職・転職Q&A」の「Q司法書士の業界はどうなっていますか?」ご参照ください。

 

独立後、司法書士試験の受験知識だけでできる簡単な不動産登記、簡単な会社登記だけをしたいというのであれば、即独して営業方法さえ習得すれば良いと思います。

私は、司法書士の仕事の集大成は、M&Aのクロージングであったり、事業承継のプランニングと実行であったりだと考えています。司法書士報酬も大きく、やり甲斐も大きい仕事です。これらの業務は、試験に受かっただけで修行もしていない司法書士では到底できないでしょう。勤務経験なく基礎的な実務力がないので、応用力が必要なこれらの業務を責任もって取り組むことができないからです。

陸上競技でも、足腰を鍛えないと上体がブレて良い結果が出ないというじゃないですか。アレと同じです。しっかりした事務所で修行して基礎的な実務力を養ってこそ、高度な仕事をつつがなく取り扱えるようになるのです。

実務は、お客様への説明方法や、説明で使うプレゼン資料も含めて進歩している。

司法書士の仕事は、不要なものを売りつけるものではありません。本来、買って貰うべき商品であっても、あなたの説明が不味くて受託に結びつかないことは、司法書士にとって損害であるばかりか、お客様にとっても損害です。

したがって、各事務所は分かりやすい説明資料の作成を競い合っています。修行した事務所のものをそのまま持ち出すことは不正競争にあたるので止めておくべきですが、ご自身で一から作るにしても見たことがあるのと無いのとでは雲泥の差でしょう。

勤務時代に所属事務所のツールを使いこなして、開業後はその記憶を頼りにさらに分かりやすい説明や資料を作り出して欲しいと思います。

即独もやむを得ない場合


一方、確かに即独がやむを得ないと思われる場合もあります。他の先生方とお話しをして、これは即独もやむなしと思ったのは次のような場合です。

既に補助者経験を積んでいる。

もっとも補助者時代にどういう事務所で修行したかに寄ります。

登記専従事務所での補助者経験であれば、また別の事務所に転職してみるのも視野が広がって良いかもしれません。

貯金が全くないが家族があり、司法書士事務所が提示する給与と勤務時間ではやっていけない。かつ開業後も続けられる副業がある。

もっとも、あなまち司法書士事務所では、このような方々にも一定の実務能力を獲得してから独立してもらうべく、パートタイム司法書士制度も設けています。

勤務できる事務所が周辺になく、家族のことも考えれば引越できない。

1~2年単身赴任してでも、勤務を経験すべきと思います。数年我慢することで、あなたの司法書士人生を左右する司法書士事務所がたくさんあると、思うからです。

小さなお子様がいるなど、どうしようもない場合には、時期をみて勤務してみるのも良いかもしれません。

独立のタイミングは?!


私がオススメする独立のタイミングは、下記すべてをクリアした時点です。

初対面の顧客とも緊張すること無く、お話できるようになった時点

不動産取引でも、法律相談でも、司法書士の目の前にいらっしゃったお客様は、常に緊張なさっていると思います。その前で司法書士自身も緊張していたのでは、お客様にリラックスしていただくことができません。

顧客との面談後8~9割以上受託に繋がる程度の面談力・安心力が身についた時点

電話での相談や、法律相談は受託に繋げるための大切な仕事です。

ここで自信をもって提案し、お客様を安心させることができて始めて受託につながります。

面談力・安心力を鍛える必要があります。

これ以上勤務しても、レベルアップできないと思った時点

こう考えるということは、登記専従事務所に勤務されているからだと、思います。

総合事務所に勤務していれば、顧客からの質問に応じて、日々レベルアップしていくことができます。他の事務所に転勤するのも良いかもしれません。

結びに代えて


司法書士制度の発展が「優秀な司法書士が市井でどれだけ活躍しているか」に掛かっていることには議論の余地はありません。

制度が発展しないと、司法書士報酬の低廉化を招くこととなり、そのような業界に良い人財が入ってくることは無くなります。そして優秀な人財がいない業界の末路は目に見えています。

 

私は、司法書士業界のためにも、勤務でしっかり基礎的な実務力を身につけたうえで独立し、多様かつ高度な案件を担当できる司法書士が増えることを祈念しています。

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