二人代表取締役とハンコ(法人実印)の関係


これまで一人で会社を引っ張ってこられた代表取締役から「今回、もう一人代表取締役を選定し、ともに会社を引っ張ってもらうことにした。ついては、会社登記をお願いしたい。」というご依頼を受けることがあります。いわゆる二人代表取締役の会社です。

「二人代表取締役になる場合、法人印をどうするのか」ということも決定いただく必要があります。

この記事では、二人代表取締役の会社が、どのように法人印を届け出ているのかを解説しています。

当メディアの人気記事「二人代表取締役ってどうでしょうか?!そのメリット・デメリットと『最強の二人代表取締役』になる方法」もあわせてご参照ください。

もくじ
  1. 会長・社長等の肩書に関するルール
  2. 法人印に関する基本的ルール
  3. 二人代表取締役が選択できる法人印の届出方法
  4. 司法書士の報酬・費用

会長・社長等の肩書に関するルール


この記事の内容とは直接関係ありませんが、簡単に説明します。

 

会長、社長ともに法律用語ではございません。

ただし、世間一般では次のように使い分けがなされています。

  • 代表取締役会長:前社長。
  • 代表取締役社長:会社の現経営者。

この記事でも、そのように使い分けます。

 

なお、代表権のない(平取締役の)会長は、望ましくありません。

一般的に、社長や会長は会社のトップであり、代表権があるのが通常だからです。 

会社法第354条(表見代表取締役)
 

 株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。

「本条が例示するもののほか、従来、総裁・副総裁・頭取・副頭取・理事長・副理事長・会長あるいは代表取締役職務代行者(最判昭和44年11月27日民集23巻11号2301頁)などがあるとされてきた。」(酒巻俊雄 編集代表 龍田節 編集代表『逐条解説会社法 第4巻 機関・1 ― 第295条~第373条』(中央経済社、2008年)420頁)

法人印に関する基本的ルール


印鑑は、法務局に届出することで、法人実印になります。

代表取締役名義で契約をしようとするとき、法人実印の押印と、印鑑証明書の提出を求められることがあります。

法人の印鑑証明書は法務局が発行します。

したがって、印鑑は、法務局に届け出ることにより、法人実印となります。

より正確に申し上げると、代表取締役が法務局に対して「自分の法人実印はこれである」と届け出た印鑑が、当該代表取締役の法人実印となります。

 

届出時期は、その代表者の名前で会社登記を申請するまで

「登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない」等と定めた商業登記法第20条は、法改正により削除されました【1】。法人印を押印する代わりに、電子署名を行う会社に対応するためです。

もっとも、現時点(令和7年)でも、ほとんど全ての会社が印鑑届出を行っています。

そして、印鑑届出は、その代表者名で会社登記を申請する時までに印鑑を届け出る必要があります。

 

また、契約書に法人実印の押印と、印鑑証明書の提出が求められている場合において、当該代表取締役が印鑑届出をしていないときには、急いで届出をする必要があります。

【1】法務局に印鑑を届出する場合の方法は、商業登記規則9条に規定されています。

 

二人代表取締役の会社は、一人だけ届出でも問題ありません。

二人代表取締役の場合に、一人の代表取締役の名前でしか契約【1】や登記申請をしないと決めている場合には、一人のみの届出で問題ありません。

【1】ここでの契約とは、銀行取引契約や商品の受発注契約など法人実印の押印を求められる全ての契約を指します。

 

二人代表取締役が同じ法人印を使うことはできない。

二人代表取締役が、同じ印鑑を利用した場合、どちらの代表取締役が押印したのか不明となり、問題が生じます。そこで、二人代表取締役が同じ法人実印を使う(法務局に届け出る)ことは禁止されています。

「数人の代表取締役が同一の印鑑を押して作成した印鑑紙を添付してなされた会社設立の登記申請又は代表取締役変更の登記申請は、商業登記法20条の規定による印鑑の提出がないものとして却下するのが相当である(昭和43年1月19日民事甲207号回答)」

 

代表取締役が法人実印を届け出るときに取締役会決議などは不要。

「代表取締役には選任するが、法人印の届出(その代表取締役単独で契約させるの)は、もう少し経ってからにしたい」というのは通用しません。

取締役会などで代表取締役に選任された以上、当該代表取締役が印鑑を届出するか否かは、当該代表取締役が一人で決定し、法務局に届け出ることができるからです。その際、従前の代表取締役の承諾なども必要ありません。

二人代表取締役が選択できる法人印の届出方法


次の選択肢からお選びください。

いずれの選択をなさっている二人代表取締役の会社様もございます。

 

➊ 新社長は印鑑届しない。

会長の印鑑はすでに届出がなされていますので、印鑑届出関係で今回すべきことはありません。

会長のみの届出ですので、必要な法人実印は1本です。

⇒当面は➊新社長は印鑑届しないで、1年後2年後に➋や➌の手続をとられる会社様もございます。

⇒もっとも、代表取締役に選任された時点で、新社長は単独で印鑑届出することができます。

 

➋ 会長が現在使っている法人印を新社長に譲る。

会長が使う法人実印が無くなります。

会長について印鑑廃止を届け出て、社長について印鑑届出を行います。

社長のみの届出ですので、必要な法人実印は1本です。

 

➌ 新社長が新たな法人印を作り、届出する。

社長について印鑑届出を行います。

二人代表取締役とも届け出るということは、法人印が2本必要になります。

司法書士の報酬・費用


業務内容 司法書士の報酬・費用 実費
法務局への法人実印の届出 11,000円(税込)

郵送費

(登録免許税等はかかりません。)