代表取締役と社長の違いー会社TOPが使うべき肩書きは何か?


会社TOPがその肩書きを決めようとするとき、他社のTOPから受け取った名刺を参考になさることも多いと思います。ところが名刺を見比べてみると・・・

  • 単に「社長」だけだったり
  • 単に「代表取締役」だけだったり
  • 「代表取締役社長」だったり
  • 「代表取締役CEO」だったり

様々な肩書の方がいらっしゃいますので、驚かれると思います。

この記事では、代表取締役と社長の違いについて解説し、最後に会社TOPが使うべき肩書きを提言しています。

もくじ
  1. 会社代表者の肩書は2種類
  2. 法律上の用語(代表取締役)
    1. 権限
    2. 資格
    3. 人数
    4. 法律上の定義
  3. 上記以外の用語(社長・副社長・会長・専務・常務)
    1. 権限
    2. 表見代表取締役の責任
    3. 資格
    4. 人数
  4. 代表取締役と社長の違い(まとめ)
  5. 会社TOPが使うべき肩書き

会社代表者の肩書は2種類


会社代表者の肩書には、2種類あります。

法律上の用語と、それ以外の用語です。

法律上の用語 代表取締役 法律で権限が定義されている。
上記以外の用語

会長

社長

副社長

専務

常務

法律で権限が定義されている。

会社の内規(定款等)で権限が定義されている。

単に「代表取締役」だけの方もいれば、合体させて「代表取締役会長」「代表取締役社長」などとの肩書を使われる方もいます。

これらの肩書を使うにあたり、何等かのルールはあるのでしょうか?

 

 

法律上の用語(代表取締役)


権限

代表取締役は、次の3つの権限をもっています。

  1. 決定権:株式会社は事業活動のために色々な意思決定をしていますが、その決定をする権限です。ただし、代表取締役であっても、何でも一人で決められるわけではなく、案件の種類によって取締役会(会社法348)や株主総会(会社法295Ⅲ)に諮るべき事項が法律上、決められています。さらに詳しく知りたい方は、記事「議案の種類と決議機関」をご参照ください。
  2. 執行権:代表取締役は、決定した事項を執行する権限を当然に持っています(会社法363Ⅰ)。
  3. 代表権:代表取締役は、株式会社を代表する裁判上・裁判外の権限を当然に持っています(会社法47Ⅰ、同349ⅠⅣ)。

資格

取締役の中から、代表取締役を選定します。

したがって、代表取締役になるためには、前提として取締役である必要があります。

人数

代表取締役は2名以上を選定することも可能です。

法律上人数制限はなく、取締役全員を代表取締役に選定することも可能です。

貴社定款で代表取締役の人数を制限している(定款に「取締役のうち1名を代表取締役とする」等の規定がある)場合には、その定款規定に拘束されます。

法律上の定義

会社法に表れた代表取締役の定義を見てみますと、こんな感じです。

  • 株式会社を代表する取締役(会社法47Ⅰ、同349Ⅰ)
  • 株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者(会社法349Ⅳ)
  • 当然に業務執行権を有する取締役(会社法363Ⅰ)
  • 株式会社の取締役の中で唯一「住所」も登記される取締役(会社法911Ⅲ⑭)

 

会社法第349条(株式会社の代表)
 
  1. 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
  2. 前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
  3. 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
  4. 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
  5. 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
会社法第363条(取締役会設置会社の取締役の権限)
 
  1. 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
    一 代表取締役
    二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの
  2. (略)

上記以外の用語(会長・社長・副社長・専務・常務)


「会長・社長・副社長・専務・常務」これらは、いずれも法律用語ではなく、会社法上の役員ではありません。

権限

「社長」という肩書の場合には「代表取締役の中の最上位者」であることを意味することが多いですが、「社長」という肩書自体が法律用語ではありません。

単なる「社長」という肩書の方と取引をしようとする場合には、商業登記事項証明書を取得して、その方が本当に代表取締役であるか確認するのが無難です。

「副社長・会長・専務・常務」の肩書が、どういう意味なのかは、各社の業務分掌規程によります。

 

表見代表取締役の責任

代表取締役でない者に「社長」「副社長」を名乗らせてはいけません。

代表取締役でもない取締役に対して「社長」「副社長」などの肩書きを付与すると、社内外の混乱を招く可能性があるほか、会社が「表見代表取締役の行為責任(会社法354)」を追及されることもありますので、止めておくべきです。

会社法第354条(表見代表取締役)
  株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。

資格

「社長・副社長・会長・専務・常務」いずれも取締役の中から選定されることが多いです。

人数

通常の会社であれば、次のようなイメージです。

もっとも法律上の規定はありませんので、各社の定款において定めるのが通常です。

  • 社長:1名(複数名を社長にするのは一般的ではない。)
  • 副社長:1~数名
  • 会長:1名
  • 常務・専務:各1名~若干名

代表取締役と社長の違い(まとめ)


代表取締役   社長
法律用語である。   法律用語ではない。
複数名を代表取締役に選定することも可能。   複数名を社長に選定するのは一般的ではない。
 

「代表取締役」だけの肩書では、会社のTOPであるか、契約等の相手は判別できません。

代表取締役が複数人いる会社が存在しているからです。

 

「社長」だけの肩書では、代表取締役であるか、契約等の相手は判別できません。

社長が法律上の肩書ではないからです。

会社TOPが使うべき肩書き


まとめでご覧いただいた通り、「代表取締役」だけの肩書には支障があります。

一方、「社長」だけの肩書でも支障があります。

 

したがって、会社のTOPは「代表取締役社長」と名乗るようにしましょう。

また、代表取締役でない取締役には、「社長」「副社長」の肩書を渡さないようにしましょう。