聞いたことがあるようでない。
それが「定期金債権(基本権)」と「定期給付債権(支分権)」です。
単語が良く似ているので混乱しがちですので、記事としてまとめてました。
この記事では、定期金債権と定期給付債権、これらの消滅時効について、司法書士が解説しています。
もくじ | |
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定期金債権(基本権) | 定期給付債権(支分権) | |
定義 | 一定額の金銭を定期的に継続して受け取る権利 | 定期金債権から派生し、各回ごとの個別支払請求権 |
例 |
【1】 |
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条文 |
民法168条(定期金債権の消滅時効) |
旧民法169条(定期給付債権の消滅時効) 現行民法166条(債権等の消滅時効) |
時効 |
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【4】 |
考え方 |
基本権そのものが時効消滅すると、そこから生じる支分権もすべて発生しなくなります。 |
発生した個々の請求権(支分権)が、それぞれ時効で消滅していきます。 |
【1】1個の債権を分割して支払う債権
「1個の債権を分割して支払う債権は定期金の債権ではない。本来1個の債権といえども時期を定めて数回に分割弁済すべき場合には、各弁済期の到来により、その期に弁済すべき部分に応じ、一部ずつ時効にかかるものとす(大審院判決明治40年6月13日民録13輯643頁)」
(『民法総則』490頁)も参照
【2】元本債権に伴う利息債権、賃貸借に伴う賃料債権
「利息債権、すなわち、定期に支払うべき個々の利息ではなく、この利息を生ずる基本たる利息債権は、本質上は定期金債権であるが、主たる債権と分離した存在を有せず、主たる債権の存在する限り存在するものだから、本条の適用はない(『民法総則』489頁)。」
「元本債権に伴う利息債権、賃貸借に伴う賃料債権などもその性質は定期金債権であるが、これらは、元本債権または賃貸借関係と分離した存在を有しないから(支分権である毎期の利息債権や賃料債権は、もちろん独立の債権であるが)、これと離れて消滅時効にかかることはないと解されている(『我妻・有泉コンメンタール民法』343頁)。
【3】「永小作料債権も、地代債権と同様、本質状は定期金債権であるが、永小作権は、地上権と異なり(265条・266条・270条・273参照)、必ず永小作料を伴うものであるから、これまた本条の適用を受けない(我妻榮/民法総則/岩波書店/1965/489頁)。」
【4】恩給については特別法がある。
「恩給ヲ受クルノ権利ハ之ヲ給スヘキ事由ノ生シタル日ヨリ七年間請求セサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス(恩給法5)」
定期金債権にあたる/あたらないで分類すると、下表のとおりです。
定期金債権にあたるもの | 定期金債権にあたらないもの |
終身年金 一定の有期年金 恩給 定期の扶助料 地上権の地代債権 |
分割払(年賦払、月賦払)【1】 利息債権【2】 賃貸借料債権【2】 永小作料債権【3】 |
「注意すべきことは、各定期に請求する一つ一つの債権ではなく、この各定期の債権を生み出す基本たる債権が定期金債権であることである。各定期の債権は第169条または第167条の適用を受ける。(我妻榮『民法総則』489頁)」
改正前民法 | 現行民法<令和2年4月1日施行> | |
第168条(定期金債権の消滅時効)
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第168条(定期金債権の消滅時効)
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第169条(定期給付債権の短期消滅時効) 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。 |
第169条 (削除されて、全く違う条文に差し替えられています)
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一瞬「5年では無くなってしまったのか?」と思いますよね。削除の趣旨を見てみましょう。
削除前169条の「[削除の趣旨]定期給付債権(支分権等)の消滅時効期間は、削除前169条により5年とされているが、原則的な債権の消滅時効期間を主観的起算点から5年とする改正がなされたので、多くの場合は、各支払期の到来時に、債権者は『権利を行使することができることを知』ることになり、定期給付債権の特則を定める意義はなくなる。そこで、削除前169条は削除された(『我妻・有泉コンメンタール民法[第8版]』344頁)」
重複することになったから削除されたということですので「定期給付債権の時効期間は5年」で変更ありません。