企業組合の設立、運営から解散まで


企業組合は、絶対数がとても少ない法人の一形態です。

数が少ないので、支援できる専門家も少ないと思われます。

この記事は、関西の企業組合様を支援した際に作成した備忘録を編集のうえ、公開したものです。

もくじ
  1. 企業組合とは
    1. 企業組合の数
    2. 企業組合に適用される法律
  2. 企業組合の設立手続
  3. 企業組合の定款変更
    1. 定款変更に行政庁の認可を要しない事項
    2. 企業組合の定款変更
  4. 企業組合の役員変更
    1. 企業組合の理事は、組合員である必要があります。
    2. 役員変更登記で個人の印鑑証明書を提出しなければならないのは誰か?!
    3. 企業組合の役員解任手続の特殊性
  5. 企業組合の解散・清算結了

〔凡例〕この記事では、次のような法律が出てきます。左列のように略記することがあります。

  • 中小団法:中小企業団体の組織に関する法律
  • 中小団令:中小企業団体の組織に関する法律施行令
  • 中小段規則:中小企業団体の組織に関する法律施行規則
  • 中小協法:中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)
  • 中小協令:中小企業等協同組合法施行令
  • 中小協規則:中小企業等協同組合法施行規則
  • 登記規則:各種法人等登記規則
  • 組合等登記令<企業組合には組合等登記令の適用はありません。>

企業組合とは


個人事業者や勤労者などが4人以上集まり、個々の資本と労働を組合に集中して、組合の事業に従事し、組合自体が一つの企業体となって事業活動を行う組合です。他の中小企業組合と異なり、事業者に限らず勤労者や主婦、学生なども組合員として加入することができ、その行う事業が限定されないことから、小規模な事業者が経営規模の適正化を図る場合や安定した自らの働く場を確保するのに適しています。

 

企業組合は、組合員が共に働くという特色をもっており、そのため組合員に対し、組合の事業に従事する義務が課せられています。(原則として組合員の2分の1以上が組合の事業に従事しなければなりません。さらに、組合の事業に従事する者の3分の1以上は組合員であることが必要です。)

また、組合員は、従来、個人に限られていましたが、組合事業をサポートする法人等も加入できることとなりました。そのため、企業組合は、法人等からの出資を通じて、自己資本の充実や経営能力の向上を図ることが可能となります。

なお、この組合は、事業を行う形態によって次の二つに分けられます。

【集中型】

企業組合の形態の一つは事業所集中型です。これは、事業者でない個人により設立された組合、または個人事業者であった組合員が従来営んでいた事業所を閉鎖して合同した形態をとる組合であり、組合自体が事業活動の主体となります。事業所はおおむね1カ所に集中しているものが多いですが、複数の事業所をもつものもあります。

【分散型】

もう一つの形態は事業所分散型です。これは、個人事業者であった組合員が従来営んでいた事業所を組合の事業所として存続させる方法をとる場合で、仕入や販売については各事業所に委ねて、組合本部は、主として各事業所の売上代金の収納管理や仕入代金の支払等の業務を行います。

 

(以上、奈良県中小企業団体中央会「組合等の種類と特徴⑸企業組合」https://www.chuokai-nara.or.jp/chuokai/cooperative/union.html/最終アクセス250606) 

 

企業組合の数

企業組合は、全国に1651社しかありません(令和4年3月末時点)。

株式会社は、全国に約200万社前後ありますので、如何に少ないかをお分かりいただけると思います。

数の少なさは、専門的な支援をできる専門家が少ないことをも意味しています。

全国中小企業団体中央会『2023-2024中小企業組合ガイドブック』1頁より引用
全国中小企業団体中央会『2023-2024中小企業組合ガイドブック』1頁より引用

企業組合に適用される法律

中小企業等協同組合法が、団体の性質や登記手続を規定しています。

「第二章中小企業等協同組合」ー「第一節 通則」ー「第3条 種類」で、第二章の適用を受ける法人の種類が特定されています。

すなわち、中小企業等協同組合法の適用を受ける法人の種類は次のとおりです。

中小企業等協同組合法第3条(種類)
 

中小企業等協同組合(以下「組合」という。)は、次に掲げるものとする。

一 事業協同組合

一の二 事業協同小組合

二 信用協同組合

三 協同組合連合会

四 企業組合
中小企業等協同組合法(もくじ)
  第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 中小企業等協同組合

  第一節 通則(第三条―第九条)

  第二節 事業(第九条の二―第九条の十一)

  第三節 組合員(第十条―第二十三条の三)

  第四節 設立(第二十四条―第三十二条)

  第五節 管理(第三十三条―第六十一条の二)

  第六節 解散及び清算並びに合併(第六十二条―第六十九条)

  第七節 指定紛争解決機関(第六十九条の二―第六十九条の五)

第三章 中小企業団体中央会

第四章 登記

  第一節 総則(第八十三条)

  第二節 組合及び中央会の登記(第八十四条―第九十五条)

  第三節 登記の嘱託(第九十六条)

  第四節 登記の手続等(第九十七条―第百三条)

第五章 雑則(第百四条―第百十一条の二)

第六章 罰則(第百十二条―第百十八条)

第七章 没収に関する手続等の特例(第百十九条―第百二十一条)

附則

企業組合の設立手続


発起人を集める

組合員になってくれる人を4人以上集め、発起人となってもらいます(中小協法24Ⅰ)。

組合員となれる方の資格は、法律で決められています【1.2】。

個人でない関連事業者も組合員になれますが、その人数は総組合員の1/4以下である必要があります。

定款、規約の作成

定款には必ず記載しないといけない事項「絶対的記載事項」、記載しないと効力を発生しない「相対的記載事項」、書くか書かないかは自由な「任意的記載事項」があります【3】ので、漏れなく定めます(中小企業等協同組合法82の4)。

絶対的記事項のうち「事業目的」は、かなり自由です【4】ので、基本的には、何でもできると考えていただいて結構です。

「規約」で定めることが認められる事項については、定款ではなく規約に定めるべきです(中小企業等協同組合法34)。定款変更には行政庁の認可が必要である(中小企業等協同組合法51Ⅱ)のに対して、規約変更は行政庁の認可が不要だからです。

公告

創立総会を開催する旨の公告で、創立総会開催日の2週間前までに公告する必要があります(中小協法27ⅠⅡ)。

創立総会の開催

創立総会では、次の事項の決定を行います(中小協法27Ⅲ)。

  1. 発起人が作成した定款の承認
  2. 事業計画の設定
  3. その他設立に必要な事項

その他にも創立総会のルールがあります(中小協法27Ⅲ~Ⅷ)

設立の認可申請

発起人から理事へ設立事務の引き継ぎ

出資の第1回の払込

設立の登記

設立登記をすることによって、企業組合が成立します(中小協法30)。

【1】中小企業等協同組合法第8条第7項
  企業組合の組合員たる資格を有する者は、次に掲げる者であつて定款で定めるものとする。
  1. 個人
  2. 次のいずれかに該当する者(前号に掲げる者を除く。)であつて政令で定めるもの
    イ 当該企業組合に対し、その事業活動に必要な物資の供給若しくは役務の提供又は施設、設備若しくは技術の提供を行う者
    ロ 当該企業組合からその事業に係る物資の供給若しくは役務の提供又は技術の提供を受ける者
    ハ イ又はロに掲げるもののほか、当該企業組合の事業の円滑化に寄与する者
  3. 投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第二条第二項に規定する投資事業有限責任組合であつて中小企業者(中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第一項各号に掲げるものをいう。)の自己資本の充実に寄与するものとして政令で定めるもの
中小企業等協同組合法第8条の2
 

前条第7項第2号又は第3号の組合員(以下「特定組合員」という。)は、企業組合の総組合員の4

分の1を超えてはならない。

【2】中小企業等協同組合法施行令第1条(企業組合の組合員たる資格を有する者)
 
  1.  中小企業等協同組合法(以下「法」という。)第八条第七項第二号の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
    1. 当該企業組合に対し、その事業活動に必要な物資の供給又は役務の提供を継続して行う者
    2. 当該企業組合に対し、その事業活動に必要な施設、設備又は技術の提供を行う者
    3. 当該企業組合からその事業に係る物資の供給又は役務の提供を継続して受ける者
    4. 当該企業組合からその事業に係る技術の提供を受ける者
    5. 当該企業組合に対し、その事業活動に必要な技術、知識又は経験を有する使用人を派遣する者
  2. 法第八条第七項第三号の政令で定める投資事業有限責任組合は、企業組合の組合員となる時点において、当該投資事業有限責任組合が保有する次に掲げる資産の合計額の当該投資事業有限責任組合の総組合員の出資の総額に占める割合が百分の五十を超える投資事業有限責任組合とする。
    1. 特定株式会社(中小企業者(法第八条第七項第三号に規定する中小企業者をいう。以下この項において同じ。)に該当する株式会社その他の株式会社であつて次のいずれかに該当するもののうち、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されておらず、かつ、同法第六十七条の十一第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式を発行するものをいう。以下この項において同じ。)の設立に際して取得する株式又は企業組合の設立に際して取得する持分
      イ 資本金の額が五億円以下のもの
      ロ 常時使用する従業員の数が千人以下のもの
      ハ 最終の貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計額が二百億円以下のもの
      ニ 前事業年度において次の(1)に掲げる額の(2)に掲げる額に対する割合が百分の三を超えるもの
      (1) 試験研究費及び開発費(法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)第十四条第一項第三号に規定する開発費及び新たな事業の開始のために特別に支出する費用をいう。)の合計額
      (2) 総収入金額から固定資産又は法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第二十一号に規定する有価証券の譲渡による収入金額を控除した金額
      ホ 設立の日以後一年を経過していないものであつて、常勤の研究者の数が二人以上であり、かつ、当該研究者の数の常勤の役員及び従業員の数の合計に対する割合が十分の一以上であるもの
    2. 特定株式会社の発行する株式若しくは新株予約権又は企業組合の持分
    3. 特定株式会社の発行する社債若しくは約束手形又は企業組合の発行する約束手形
    4. 中小企業者等(特定株式会社、企業組合、協業組合並びに中小企業者に該当する合名会社、合資会社、合同会社及び個人をいう。以下この項において同じ。)に対する金銭債権
    5. 中小企業者等を相手方とする匿名組合契約(商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条の匿名組合契約をいう。)の出資の持分又は信託の受益権(中小企業者等の営む事業から生ずる収益又は利益の分配を受ける権利に限る。)
    6. 工業所有権又は著作権(中小企業者等から取得したものに限る。)

【3】定款の絶対的記載事項、相対的記載事項は次のとおりです。

絶対的記載事項

  1. 企業組合が行う事業の種類:企業組合は、商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う(中小協法9の10)【4】とされています。株式会社同様の目的を定めれば問題ありません。
  2. 名称
  3. 事務所所在地
  4. 組合員資格
  5. 組合員の加入・脱退に関する規定
  6. 出資一口の金額、同払込方法
  7. 剰余金の処分・損失の処理
  8. 準備金の額・積立方法
  9. 役員定数・選挙又は選任方法
  10. 事業年度
  11. 公告方法
  12. 共済金額の削減、共済掛金の追徴(共済事業を行う組合の場合)

相対的記載事項

  1. 存続期間・解散事由 
  2. 現物出資
  3. 優先出資

【4】企業組合の事業目的

中小企業等協同組合法第9条の10(企業組合)
  企業組合は、商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行うものとする。

企業組合の定款変更


軽微な定款変更については、認可を要しないとする法人も多いです。

ところが、企業組合について見ると次のとおりです。

定款変更に行政庁の認可を要しない事項

原則 定款変更は、行政庁の認可を受けなければ効力を生じない(中小企業等協同組合法51Ⅱ)。

例外

信用協同組合、会員の預金又は定期積金の受入れを行う協同組合連合会の定款変更であれば、内閣府令で定める事項のみ、定款変更に認可を要しない。

中小企業協同組合法の適用を受ける団体のうち、信用協同組合と協同組合連合会のみが、定款変更の一部の事項について、行政庁の認可が不要と定められています。

企業組合は、軽微な定款変更であっても全て行政庁の認可が必要です。

中小企業等協同組合法第51条(総会の議決事項)
  2 定款の変更(信用協同組合及び第9条の9第1項第1号の事業【1】を行う協同組合連合会の定款の変更にあつては、内閣府令で定める事項の変更を除く。)は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

【1】第9条の9第1項第1号の事業とは「一 会員の預金又は定期積金の受入れ」です。

したがって、中小企業等協同組合法第51条第2項を意訳すると次のとおりです。

原則:定款変更は行政庁の認可を受けなければ効力を生じない

例外:信用協同組合、会員の預金又は定期積金の受入れを行う協同組合連合会の定款変更であれば、内閣府令で定める事項のみ、定款変更に認可を要しない。

 

企業組合の定款変更

次の流れで進めます。

  1. 変更定款を総会で承認する(中小企業等協同組合法51Ⅰ①)。
  2. 行政庁の認可を受ける(中小企業等協同組合法51Ⅱ)。
  3. 登記事項である場合には、登記申請をする(中小企業等協同組合法83~88)。

企業組合の役員変更


企業組合の組合員や役員に関するルールは特殊です。

下記に列挙します。

企業組合には理事3名以上、監事1名以上必要です。

理事とは、企業組合の業務を執行する役職。

監事とは、企業組合の業務執行している理事の業務執行を監督する役職です。

 

組合は、理事会の決議で、顧問、参事、会計主任を選任することもできます(中小企業等協同組合法43、44)。

参事を選任したときは登記事項になります(中小企業等協同組合法88)。

 

企業組合の理事は、組合員である必要があります。

中小企業協同組合法35Ⅴ

 

企業組合の組合員は、3名以上必要です(設立時は4名以上)。

中小企業協同組合法35Ⅴで「理事は組合員である必要がある」とされ、

同35Ⅱで「理事は3名以上」とされているためです。

 

中小企業等協同組合法第35条(役員)
 
  1. 組合に、役員として理事及び監事を置く。
  2. 理事の定数は、三人以上とし、監事の定数は、一人以上とする。
  3. 役員は、定款の定めるところにより、総会において選挙する。ただし、設立当時の役員は、創立総会において選挙する。
  4. 理事(企業組合の理事を除く。以下この項において同じ。)の定数の少なくとも三分の二は、組合員又は組合員たる法人の役員でなければならない。ただし、設立当時の理事の定数の少なくとも三分の二は、組合員になろうとする者又は組合員になろうとする法人の役員でなければならない。
  5. 企業組合の理事は、組合員(特定組合員を除く。以下この項において同じ。)でなければならない。ただし、設立当時の理事は、組合員になろうとする者でなければならない。
  6. 組合員(協同組合連合会にあつては、会員たる組合の組合員)の総数が政令で定める基準を超える組合(信用協同組合及び第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会を除く。)は、監事のうち一人以上は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者でなければならない。
    一 当該組合の組合員又は当該組合の組合員たる法人の役員若しくは使用人以外の者であること。
    二 その就任の前五年間当該組合の理事若しくは使用人又はその子会社(組合が総株主(総社員を含む。)の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。)の過半数を有する会社をいう。以下同じ。)の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、執行役若しくは使用人でなかつたこと。
    三 当該組合の理事又は参事その他の重要な使用人の配偶者又は二親等内の親族以外の者であること。
  7. 理事又は監事のうち、その定数の三分の一を超えるものが欠けたときは、三月以内に補充しなければならない。
  8. 役員の選挙は、無記名投票によつて行う。
  9. 投票は、一人につき一票とする。
  10. 第8項の規定にかかわらず、役員の選挙は、出席者中に異議がないときは、指名推選の方法によつて行うことができる。
  11. 指名推選の方法を用いる場合においては、被指名人をもつて当選人と定めるべきかどうかを総会(設立当時の役員は、創立総会)に諮り、出席者の全員の同意があつた者をもつて当選人とする。
  12. 一の選挙をもつて二人以上の理事又は監事を選挙する場合においては、被指名人を区分して前項の規定を適用してはならない。
  13. 第3項の規定にかかわらず、役員は、定款の定めるところにより、総会(設立当時の役員は、創立総会)において選任することができる。
中小企業等協同組合法第9条の11
 
  1. 企業組合の総組合員の2分の1以上の数の組合員(特定組合員を除く。次項から第四項までにおいて同じ。)は、企業組合の行う事業に従事しなければならない。
  2. 企業組合の行う事業に従事する者の3分の1以上は、組合員でなければならない。
  3. 企業組合の組合員は、総会の承認を得なければ、自己又は第三者のために企業組合の行う事業の部類に属する取引をしてはならない。
  4. 組合員が前項の規定に違反して自己のために取引をしたときは、企業組合は、総会の議決により、これをもつて企業組合のためにしたものとみなすことができる。
  5. 前項に定める権利は、他の組合員の一人がその取引を知つた時から2月間行使しないときは、消滅する。取引の時から一年を経過したときも同様である。
  6. 企業組合の特定組合員は、総会の承認を得なければ、企業組合の行う事業の部類に属する事業の全部又は一部を行つてはならない。

企業組合役員の欠格事由

次の者は、企業組合の役員になることができません(中小企業等協同組合法35)。

  1. 法人
  2. 心身の故障のため職務を適正に執行することができない者として主務省令で定める者
  3. この法律、会社法若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は民事再生法第255条、第256条、第258条から第260条まで若しくは第262条の罪若しくは破産法第265条、第266条、第268条から第272条まで若しくは第274条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から2年を経過しない者
  4. 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
  5. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(共済事業を行う組合の役員となることができない。)

 

企業組合の役員の任期

次のとおりです(中小企業等協同組合法36)。

  1. 理事の任期は、2年以内において定款で定める期間とする。
  2. 監事の任期は、4年以内において定款で定める期間とする。
  3. 設立当時の役員の任期は、前二項の規定にかかわらず、創立総会において定める期間とする。ただし、その期間は、1年を超えてはならない。
  4. 前三項の規定は、定款によつて、前三項の任期を任期中の最終の決算期に関する通常総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
  5. 前三項の規定にかかわらず、監事の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、監事の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

権利義務役員制度もあります(中小企業等協同組合法36の2)。

 

企業組合の役員解任手続の特殊性

株式会社の場合、その役員を解任しようとするときには、会社法は唯一、次の条文のみです。

つまり、株式会社の場合、解任手続きは、とてもシンプルです。監査役・会計参与の意見陳述権(会社法345)や、監査等委員である取締役の意見陳述権(会社法342の2)はありますが、それでもシンプルです。

会社法第339条(解任)
 
  1. 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
  2. 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

 

企業組合の場合には、もっと複雑で特殊です。

下記のとおり進める必要がありますので、ご注意ください。

中小企業等協同組合法第42条(役員の改選)
 
  1. 組合員は、総組合員の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上の連署をもつて、役員の改選を請求することができるものとし、その請求につき総会において出席者の過半数の同意があつたときは、その請求に係る役員は、その職を失う。
  2. 前項の規定による改選の請求は、理事の全員又は監事の全員について、同時にしなければならない。ただし、法令又は定款、規約、共済規程若しくは火災共済規程の違反を理由として改選を請求するときは、この限りでない。
  3. 第1項の規定による改選の請求は、改選の理由を記載した書面を組合に提出してしなければならない。
  4. 第1項の規定による改選の請求をする者は、前項の書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、組合の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。
  5. 第1項の規定による改選の請求があつた場合(第三項の書面の提出があつた場合に限る。)には、理事は、その請求を総会の議に付し、かつ、総会の会日から七日前までに、その請求に係る役員に第三項の規定による書面を送付し、かつ、総会において弁明する機会を与えなければならない。
  6. 第1項の規定による改選の請求があつた場合(第四項の規定による電磁的方法による提供があつた場合に限る。)には、理事は、その請求を総会の議に付し、かつ、総会の会日から七日前までに、その請求に係る役員に第4項の規定により提供された事項を記載した書面を送付し、かつ、総会において弁明する機会を与えなければならない。
  7. 前項に規定する場合には、組合は、同項の書面の送付に代えて、政令で定めるところにより、その請求に係る役員の承諾を得て、第4項の規定により提供された事項を電磁的方法により提供することができる。
  8. 第5項又は第6項の場合については、第47条第2項及び第48条の規定を準用する。この場合において、第47条第2項中「組合員が総組合員の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上の同意を得て、会議の目的である事項及び招集の理由を記載した書面を理事会に提出して総会の招集を請求したとき」とあり、及び第48条後段中「組合員が総組合員の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上の同意を得たとき」とあるのは、「第42条第1項の規定による役員の改選の請求があつたとき」と読み替えるものとする。

個人の印鑑証明書の提出義務

組合は理事会を置かなければならない(中小企業等協同組合法36の5Ⅰ)とされていますので、代表理事選任議事録に従前代表理事が届出印を押印していないときには、理事全員が実印を押印し、理事全員が個人の印鑑証明書を添付する必要があります(中小企業等協同組合法130→商業登記法158→商業登記規則61Ⅵ)。

また、代表理事の就任承諾書には、個人実印押印+印鑑証明書添付が必要です(中小企業等協同組合法130→商業登記法158→商業登記規則61ⅣⅤ)。

企業組合の解散・清算結了


企業組合は、次の理由で解散し、合併を除いて清算手続きに入ります(中小企業協同組合法62)。

一 総会の決議

二 組合の合併

三 組合についての破産手続開始の決定

四 定款で定める存続期間の満了又は解散事由の発生

五 第106条第2項の規定による解散の命令

 

組合が解散したときは、清算人を清算手続きを行うことになります(中小企業協同組合法69→会社法481)。

一 現務の結了

二 債権の取立て及び債務の弁済

三 残余財産の分配

 

総会の決議(中小企業等協同組合法62Ⅰ①)

企業組合が解散を決議するには、総会において、総組合員の半数以上が出席し、その議決権の3分の2以上の多数による議決が必要です(中小企業等協同組合法62Ⅰ①、同53②)。

総代会においては解散の議決をすることは許されません(登記制度研究会〔編集〕『法人登記総覧』新日本法規/2006/4922頁)。

 

清算人の就任と選任

理事が清算人となります(中小企業等協同組合法68Ⅰ。「就任」と登記します。)が、総会において他人を選任することもできます(中小企業協同組合法68Ⅰただし書。「選任」と登記します)。

総会で清算人1名を選任したときは、その者が代表清算人となりますが、単に資格は「清算人」として、その住所・氏名を登記します。

総会で清算人複数を選任したときは、清算人会を構成し、清算人会で代表清算人を選任することになります。

 

行政庁の認可又は届出

解散の日から二週間以内に、その旨を行政庁に届け出る必要があります(中小企業等協同組合法62Ⅱ)。

解散決議のために行政庁の認可は原則不要です。

例外:責任共済等の事業を行う組合又は火災等共済組合若しくは火災等共済組合連合会若しくは第9条の9第1項第3号の事業(筆者注:会員が火災共済事業を行うことによつて負う共済責任の再共済)を行う協同組合連合会の解散の決議は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。(中小企業等協同組合法62Ⅳ)

 

解散、清算人選任の登記

解散から2週間以内に登記が必要です(中小企業等協同組合法91)。

解散の登記の申請書には、解散の事由を証する書面を添付します(中小企業等協同組合法100)。

登録免許税は不要です(∵課税根拠法がありません。)。

 

解散公告

定款所定の公告方法による公告が必要です(中小企業等協同組合法69→会社法499)。

必ずしも官報公告を要しません(中小企業等協同組合法69第2文の読替え規定参照)。

「本組合の公告は、本組合の掲示場に掲示し、かつ、必要があるときは、官報に掲載してする。」と定めている場合には、組合の掲示場に掲示すれば足り、解散公告を官報に掲載する必要はないと思われます。「必要があるとき」を「法令上必要があるとき」と理解すれば、法令上、「官報公告」は義務ではないからです。

なお、公告をしたことを証する書面は、登記の添付書類ではありません。

 

清算結了の登記

清算が結了したときは、決算報告を承認した総会のの承認の日から2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、清算結了の登記をしなければならない(中小企業等協同組合法92①→同69→会社法507Ⅲ))。

清算結了の登記の申請書には、決算報告書の承認があつたことを証する書面を添付しなければならない(中小企業等協同組合法101)。

登録免許税は不要です(∵課税根拠法がありません。)。

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