かつて、相続財産清算人が登記申請していた「相続財産法人への所有権登記名義人氏名変更登記」は、法改正により、登記申請できる方(身分)が増えました。
この記事では、従来の相続財産清算人からの登記申請に加えて、所有者不明土地管理人、所有者不明建物管理人からの登記申請についても解説しています。
もくじ | |
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ある方がお亡くなりになり、その方に相続人のあることが明らかでないときは、その方の財産は、「相続財産法人」となります(民951)。
(会社などの場合は、登記することによって、法人となりますが)相続財産の場合には、法人の登記をする必要もなく、法律上当然に、法人となります。
民法第951条(相続財産法人の成立) | |
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。 |
相続財産を法人とする理由は、2つあります(『新版注釈民法(27)』674頁以下を参照)。
まず、相続財産を所有者がない財産(民239)として扱わないようにするためです。
民法第239条(無主物の帰属) | |
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もう一つは、相続人を捜索し相続財産を管理・清算する相続財産管理人が、相続財産法人の代理人として、その職務を行うにあたっての権限について、法律上の前提を整えるためです。
相続財産に不動産がある場合、相続財産清算人は不動産を相続財産法人の名義に変更登記します。
相続財産清算人ご自身が登記できない場合には、司法書士にご依頼いただくことが可能です。
登 記 申 請 書 | |
登記の目的 | 所有権登記名義人氏名変更【1】 |
登記原因 | 年月日相続人不存在【2】 |
変更後の事項 | 登記名義人 亡■■■■相続財産 |
申請人 |
住所【3】 |
亡■■■■相続財産清算人 ●● ●● |
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添付書類 |
登記原因証明情報【4】 代理権限証明情報 |
年月日申請 |
○○地方法務局 ○○支局 |
代理人 |
神戸市灘区鹿ノ下通二丁目4番15号 |
司法書士 佐 藤 大 輔 |
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連絡先電話番号 078-805-1965 |
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登録免許税 |
金1,000円【5】 |
不動産の表示 |
(略) |
【1】所有者に変更するわけではありませんので、「所有権移転登記」ではなく「所有権登記名義人氏名変更登記」を行います。
【2】年月日は被相続人死亡の日です。
【3】選任審判書の住所、氏名を記載します。
【4】登記原因証明情報として、選任審判書を添付します。
【5】不動産1個につき1,000円です。
所有者不明土地管理命令または所有者不明建物管理命令(以下「所有者不明土地管理命令等」という。)が発令された場合において、対象の土地建物の所有者の死亡は判明したが、その相続人のあることが明らかでないときには、所有者不明土地管理命令等の登記(裁判所が勝手にやってくれる嘱託登記です。)をする前提として、当該死亡した所有権の登記名義人の氏名変更の登記(相続財産法人名義への変更登記)をする必要があります。
(令和5年3月28日(通達)11頁以下参照)
相続財産法人名義への変更登記は、 所有者不明土地管理人が登記申請する必要があります。
管理人ご自身が登記できない場合には、司法書士にご依頼いただくことが可能です。
登 記 申 請 書 | |
登記の目的 | 所有権登記名義人氏名変更【1】 |
登記原因 | 年月日相続人不存在【2】 |
変更後の事項 | 登記名義人 亡■■■■相続財産 |
申請人 |
住所 |
亡■■■■所有者不明土地管理人 ●● ●●【3】 |
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添付書類 |
登記原因証明情報【4】 代理権限証明情報 |
年月日申請 |
○○地方法務局 ○○支局 |
代理人 |
神戸市灘区鹿ノ下通二丁目4番15号 |
司法書士 佐 藤 大 輔 |
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連絡先電話番号 078-805-1965 |
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登録免許税 |
金1,000円【5】 |
不動産の表示 |
(略) |
【1】所有者に変更するわけではありませんので、「所有権移転登記」ではなく「所有権登記名義人氏名変更登記」を行います。
【2】年月日は被相続人死亡の日です。
【3】相続財産法人が申請人となり、所有者不明土地管理人がその代理人として行います。選任審判書の住所、氏名を記載します。
【4】登記原因証明情報として、(裁判所発行にかかる)管理人の印鑑証明書又は所有者不明土地管理命令の裁判書謄本を添付します。なお、管理命令自体には、登記簿上の所有者の住所氏名も入っていないことも多数あります。
所有者不明土地管理命令の決定書から①相続開始の事実及び②相続人不存在の事実が明らかとならないときは、所有者不明土地管理人作成の報告書(変更があったことを具体的に証する内容のもので、所有者不明土地管理人が記名押印したものに限る。また、管理人の印鑑証明書の添付を要する。)を添付します。
【5】不動産1個につき1,000円です。
裁判所からの嘱託登記でなされます。
➊相続財産法人への登記名義人氏名変更登記
➋所有者不明土地管理命令の登記
が実行された後の登記簿は、下のようになります。
権 利 部 ( 甲 区 ) (所 有 権 に 関 す る 事 項) | |||
順位番号 | 登 記 の 目 的 | 受付年月日・受付番号 | 権 利 者 そ の 他 の 事 項 |
1
付記1号
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所有権移転
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昭和年月日 第○号
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原因 年月日売買 所有者 神戸市・・・ ○○○○ |
1番登記名義人氏名変更 ➊ |
令和年月日 第○号 |
原因 令和年月日相続人不存在 登記名義人 亡○○○○相続財産 |
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2
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所有者不明土地管理命令 ➋ |
令和年月日 第○号 |
原因 令和年月日神戸地方裁判所決定
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ご依頼いただいてから、調べます。。。
手続き | 司法書士の報酬(税込) | 実費 | |
相続財産清算人から申請する場合 |
33,000円~ | 1万円程度(不動産3個まで) | |
所有者不明土地管理人から申請する場合 所有者不明建物管理人から申請する場合 |
決定書から①相続開始の事実及び②相続人不存在の事実が明らかであるとき |
33,000円~ | 1万円程度(不動産3個まで) |
戸籍謄本等から①相続開始の事実及び②相続人不存在の事実が明らかであるとき【1】 |
110,000円~ | 事案によります。 | |
戸籍謄本等でも①相続開始の事実及び②相続人不存在の事実が明らかでないとき【2】 |
140,000円~ | 事案によります。 | |
【1】所有者不明土地管理命令等の決定書から⑴相続開始の事実、⑵相続人不存在の事実が明らかでないときには、①不明所有者の方の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本すべての取得並びに精査を行う必要があるほか、②相続関係説明図作成が必要となるためです。
【2】不明所有者の方の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本からでも①相続開始の事実、②相続人不存在の事実が明らかにならないときには、『管理人の報告書』を作成する必要があるためです。